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男の言い分

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テーマ:熟年離婚 月刊『政経東北』|多様化時代の福島を読み解く|地元メディアが報じない出来事を追跡|旬の人、政治家、業界人をインタビュー|株式会社東邦出版(福島県福島市)が発行… もっと読む
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記事一覧

【熟年離婚】〈男の言い分67〉

あの大震災から避難して、知らない街で暮らしたが、ふるさとの潮風の匂いが恋しい。ただ、それだけだよ。  K氏、73歳。元・農業。4歳下の妻と昨年末、離婚。  あの津波と原発事故から、ずいぶんと時がたったんだなぁ。はぁ、ひと昔前の話になっちまった。浜の者、みんな大変な目に遭って、命からがら避難して来たのが、悪い夢みてぇだ。  俺の家は代々、農家でな、高台で米作っていたんだ。あの津波が来た時、ここは大丈夫だべ、とみんなで海を見ていて―初めの波は高台まで上がって来なかったが、次の

【熟年離婚】〈男の言い分66〉

三十過ぎの娘、息子がすねかじり、妻は無関心。どこで子育てを間違えたのか、どこで夫婦の平行線がずれたのかーだね。  K氏、61歳。元・会社員。昨年8月、2歳下の妻と離婚。  私の家族は、街で美容院をやっている妻と、34歳の娘、32歳の息子は無職で親のすねかじりでした。  私が結婚したのは26歳の時。2歳下の妻は美容師でした。私は当時、印刷会社の制作部でデザインを担当していたんですが、今の「働き方改革」なんて無かった時代ですから、毎日毎日、夜遅くまで働いていましたよ。そんな時

【熟年離婚】〈男の言い分65〉

6匹の犬を飼う女房に、犬とオレと、どっち取るんだ!と言ったら、「犬!」と即答された。 M氏。会社役員。62歳。3歳下の妻と昨年10月離婚。  今、私は、長いこと空き家にしていて取り壊す寸前だった実家で、一人暮らしをしています。9年前に父親が亡くなった後、今90歳の母は施設に入ったまま―という家。―家財道具や両親の衣類や台所のあれこれがみんなそのままで、取り壊す前の片付けを考えると面倒でね、ぐずぐず先延ばしにしてたんです。―それが今、自分の“終の棲家”になるとはね。いや、落

【熟年離婚】〈男の言い分64〉

「歯に衣着せぬ物言い」とは「人の心を踏みにじる暴言」でもある、と教えてくれたのは、妻です。  K氏、58歳。会社員。今年5月、同年の妻と離婚。  私は、この春に離婚したばかりで、まだ身辺が落ち着きませんが、心は落ち着きましたよ。妻とは、不貞とか借金とか、家庭内暴力など深刻な原因で別れたわけではありませんが、「熟年離婚」した人達がよく言うように、残りの人生を、心穏やかに、大事に生きていきたい、ただそれだけの理由です。  妻は、離婚に不服でもめましたが―ほら、運動会で二人で片

【熟年離婚】〈男の言い分63〉

妻の嫁いびりで、息子夫婦は別居中。夫の私は離婚。ほんとにもう、カンベンしてくれ。  F氏、62歳。自営業。3歳下の妻と、今年4月離婚。  まぁ、私は離婚、息子夫婦も離婚の危機―と父子揃って“おだやかな家庭”とは縁遠い人生ですよねぇ。―今となれば、こうなったのも、そもそも私の結婚が間違っていたんでしょう。友達に言わせると、「妻の教育」が初めからなってなかった、と言うんですが、彼だって「妻の教育」なんて、そんなオソロシイこと、やれてるはずがない。立派に奥さんの、特大の尻に敷かれ

【熟年離婚】〈男の言い分62〉

ラップで離婚。「そもそもサ♪ あんたはサ♬」「てめぇこそ♬」なんて、粋なラップじゃなくて、あの「ラップ」ですよ。  M氏、65歳。4歳下の妻と昨年末離婚。  私はね、自分のこれまでをふり返ってみると、何一つ“もの”にならない人生だった、と思います。  今さらだけど―グチ言っちゃうと、それは中学時代からですね。小学校では成績もずっと上位で、親は鼻高々でしたが、中学校では“普通”。少年野球では活躍していたので、勇んで野球部に入ったものの、自分より優れたやつがゴロゴロいて、試合

【熟年離婚】〈男の言い分61〉

認知症の親の介護で衝突、離婚―でも、誰だって「二度童子」になるかもしれない。  M氏、62歳。元会社員。今年2月、4歳下の妻と離婚。  私の生家は小さな町の八百屋でした。両親が頑張っていて、なかなかの繁盛店でした。しかし、私が中学2年、妹が小学4年の時に父親が急逝、それからは母が一人で店をやりました。まだ暗い内にリヤカーを引っ張って市場に仕入れに行き、青果の他に、手作りのおにぎりも売るようになりました。これがウケて―おにぎりは、海苔、焼き味噌の他に青しそ、筍飯、舞茸飯など季

【熟年離婚】〈男の言い分60〉

長年、誇りを持って頑張って来た私の職業を、妻は―リスペクトしていなかった。  N氏、58歳。医療従事者。3歳下の妻と昨年12月離婚。  私は、首都圏のある病院のレントゲン技師をして38年になります。  26歳の時、同じ職場の事務員と結婚しました。恋愛結婚ですよ。結局、別れることになりましたがね。  私が27歳の時に長男、30歳の時に長女が生まれ、一家4人、職場近くの小さな賃貸マンションで暮らしていました。妻も病院の事務のパートをしながら、まぁ、平穏に暮らしていました。

【熟年離婚】〈男の言い分59〉

13年前、意地と脅し半分で書いた「離婚誓約書」を妻に突き付けられてアウト!  A氏、60歳。会社員。今年3月、2歳下の妻と離婚。  還暦を迎えて、さてこれから第二の人生! と気合を入れた矢先に、31年連れ添った妻と別れることになりました。「突然離婚」を言われるなんて、ほんと寝耳に水、どころか寝耳に熱湯、でしたよ。  昔ね、いつもの夫婦喧嘩をはるかに超える大喧嘩をしたんです―その時、私が書いた、妻あての「離婚誓約書」を13年の時が経って突き付けられたんです。そんなもの、すっ

【熟年離婚】〈男の言い分58〉

妻が詐欺に引っかかる、私は商売廃業、それだけで痛い目に遭うのはたくさんなのにー  S氏、66歳。元・自営業。1歳下の妻と、この4月に離婚。  もうね、何から話していいか―メチャクチャ、いろいろあった。  私は、元は、大手食品製造会社に勤めていて、商品開発を長く担当していたんです。仕事は面白かったが、新しく転任して来た、直属の上司とソリが合わなくて―悩んだ末、50歳で退職しました。妻は大反対でしたが、二人の息子も独立したし、自分の人生を新しくやり直すには、ギリギリだが、まだ

【熟年離婚】〈男の言い分57〉

籍が入っていれば最後まで安泰、と思っちゃ困るよ。夫婦喧嘩にも〝ルール〟ってもんがあるの。   W氏、71歳。自営業。昨年、6歳下の妻と離婚。  実は、俺は再婚です。初めの女房は、42歳の時、12歳の娘を残して突然、亡くなった。  俺ね、高校卒業して、地元の板金会社に勤めたんです。だけど、いつか独立したくて―27歳の時、中古の軽トラック1台買って、屑鉄集めをやった。それを売った金を一生懸命貯めていた。  初めの女房は、勤め先で知り合って結婚したんだが、いつか独立したいって

【熟年離婚】〈男の言い分56〉

京都を終の棲家にするつもりが、〝民宿〟状態。もう、勘弁してくれ。  M氏、65歳。元公務員。昨年3月、2歳下の妻と離婚。  私も妻も、そろって公務員の共働き。一人娘も結婚して、定年退職したら、後は二人でゆっくり、それぞれ好きなことをしながら暮らそう、と―。ここまでは老夫婦のよくあるパターンでしょ。私ら夫婦の場合は、そうはいかなかった。残りの人生をゆっくり楽しむ、終の棲家はそれぞれに―ですよ。  私の仕事は3、4年ごとに転勤があったので、定年になって落ち着くまでは家を建て

【熟年離婚】〈男の言い分55〉

夫婦のいざこざで別れるんじゃない。離婚は、妻を護ってやるために役立つこともあるんですよ。  T氏。59歳。会社員。6歳下の妻と「死後離婚」を考え中。  普通、離婚ていうのは、夫婦のいざこざの末にやるもんだよね。  うちの場合は違うんです。夫婦、仲良くやって来たから、私が死んだら、妻ひとりに大きな荷物を背負わせたくない。―その荷物って私の親父の世話と、いずれ来る介護です。いや、私、まだ死なないですけど、成人病を抱えていますからね。妻は私より6歳若くて健康です。私の父親は今

【熟年離婚】〈男の言い分54〉

娘を花形ピアニストにするためだけの家庭?生活―もう、いいよ、後はお互い好きにしようよ。  Y氏、69歳。会社員。3歳下の妻と1年半前に離婚。  私らは、28歳と25歳で見合い結婚しました。妻は、看護師で、共働きでしたが、彼女は仕事も家事もテキパキ、楽しそうにやる明るい人間で、私も幸せでした。ただ一つの“悩み”は、子供ができないこと。二人とも子供好きなのに、コウノトリに見放された―と諦めかけていた時、6年目に、娘を授かりました。―うれしかったですねぇ。妻の喜びようは、私の1