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北海道2区補選は野党共闘の試金石―【横田一】中央から見たフクシマ86

 福島原発事故がまるでなかったかのように原発再稼働に邁進した安倍政権継承を訴えて誕生した菅政権(首相)がコロナ対応遅れなどで内閣支持率が急落、原発ゼロを掲げる立憲民主党など野党に政権交代を実現するチャンスが到来しつつある。「脱炭素」を掲げながら原発推進も公言する支離滅裂な菅政権を打ち倒し、多くの福島県民が望む「原発ゼロ社会」を実現する可能性は日を追うごとに高まっているのだ。

 1月18日召集の通常国会でも野党は、安倍前首相の「桜を見る会」前夜祭の補填問題と共に吉川貴盛・元農水大臣(北海道2区)の収賄事件を徹底追及し、「政治とカネ」の問題で菅政権をさらに追い込む構えを見せている。

 菅首相と当選同期の吉川氏は農業分野における菅首相の懐刀とされ、「別動隊」「斬り込み隊長」のような役割もしてきた。9月の党総裁選では菅首相本人に出馬を要請、推薦人名簿にも名を連ねた。2019年4月の北海道知事選でも菅官房長官(当時)の意向を受けて、自民党道連代表として〝菅チルドレン知事〟とも呼ばれる鈴木直道・前夕張市長が自民推薦候補になるように動いた。

 そんな〝菅別動隊〟のような吉川氏を、菅首相が政権をあげて擁護しても全く不思議ではなく、実際に12月7日に初会合が開かれた「養鶏業者裏献金疑惑 合同ヒアリング」では〝忖度農水官僚〟が野党議員の質問をはぐらかし、文書提出にも応じない対応をした。大臣室などで鶏卵業界大手「アキタフーズ」元代表から計500万円を受け取っていたと報道されていたのに、農水大臣と元代表の面談記録さえ「捜査中」を理由に開示しなかったのだ。

 鶏卵業界幹部から吉川氏への現金提供は「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の国際基準を甘く修正するためと報じられていたが、これについても農水官僚は関連情報を隠蔽。野党議員が「吉川大臣と相談しながらやっていたのか」と聞いても、農水官僚は「コメントは控える」と回答を拒み、政策決定過程の文書開示についても拒否したのだ。

 官房長官を務めた第二次安倍政権時代の森友・加計・桜を見る会での対応と同様、首相ポストを射止めて新政権が誕生した後も、疑惑隠しの姿勢は同じだった。原発推進政策だけでなく、スキャンダルを闇に葬り去る隠蔽体質も、安倍政権から継承したといえるのだ。

 「臭いものに蓋をする」という菅政権の隠蔽体質は、吉川氏の辞職に伴う「北海道2区補選」(4月25日投開票)でも可視化された。自民党の山口泰明選対委員長は1月15日、菅首相との面談で候補擁立断念を決めたことを発表したのだ。「政治とカネ」が争点となる補選を不戦敗にすることで、吉川氏の収賄事件が一日でも早く忘れ去られ、政権への打撃を抑えようとする狙いが透けて見えるではないか。

 北海道2区では過去2回、野党候補の合計得票数が、吉川氏を上回っていた。その教訓から野党統一候補擁立の気運が高まり、1月16日の共同街宣などを経て決定しようとする動きが本格化。これに冷や水を浴びせようとして、候補擁立断念を決めたのは間違いない。

 しかし逢坂誠二・立民道連代表は16日の街宣後、「『一強』と呼ばれる与党が戦わずして敵前逃亡をした印象」「選挙は何が起こるか分からないので、万全の構えで臨んでいきたい」と語り、統一候補擁立の調整を今まで通り進めることを明言した。変化球を投げ込まれた野党が万全の態勢を築くことができるのか。次期総選挙の野党共闘の試金石となる北海道2区補選から目が離せない。



フリージャーナリスト 横田一
1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた「漂流者たちの楽園」で1990年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。



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