見出し画像

『電子的熊猫遊戯症状2』

パキシル25㎎の離脱症状は止まらない。
再服用から12時間が経った。ここで新しい実験を試みた。
私の頭の中で離脱症状に雇用された映写技師を雇い止めして見よう。そんな実験だ。私の頭の中だけでつくりだされた離脱症状映画は私の頭の中から一歩外にとびだしている可能性に着目しなければならない。
私の頭の外の出来事に反応しているかも知れない。布団で寝返りをうつと、私の頭の中で『電子的熊猫遊戯症状』が現れる。ちょっとした動きや物音が変換器によって『電子的熊猫遊戯症状』を現すという仮説だ。

私は試しに耳に指を突っ込んで出来うるかぎりの無音状態をつくる事にした。すると、『電子的熊猫遊戯症状』がほぼ消失した。どういうことなのだ。これでは私の頭の中だけの話ではなくなる。
次にイヤホンで音楽を聴いてみた。また、『電子的熊猫遊戯症状』は消失した。これで、私が私の中の映写技師を雇い止めにした実験は成功した事になる。私の頭の中と私の頭の外はつながっていた。

『電子的熊猫遊戯症状』とは変換装置の異常なのではないか。私の頭の中と私の頭の外をつなぐ『両耳トゥース』と『両目トゥース』の故障なのではないのか。無線変換器に一時的な故障が発生している。パキシル錠の突然の服用停止による慣らし運転不足によって引き起こされたものと考えていい。
パキシルを服用した事により、私の頭の中のどこかの部分が新品になったのかも知れない。また、私の『外部情報取り込み識別システム』のバージョンアップに古いタイプの『耳目トゥース』が合わないのだろう。

両耳、両目の古くさいトゥース交換は不可能だ。パキシルを止めるとなると、『外部情報取り込み識別システム』の慣らし作業が必要になる。それは、数ヶ月をかけて徐々にパキシルを減量していく方法だ。
新品のスピーカーをエイジングするように、新車のバイクに1000㎞の慣らし運転が必要なように。故障していた私の古い頭にパキシルという新品部品が組み込まれた。私の頭はその新品部品を使用して駆動するようになっているのだ。取り除くのは大変だろう。プロの腕の見せ所だ。素人の私が遊び半分でイジってはいけない精密な作業が必要なのだろう。よい教訓だった。

私は再びパキシルを服用した。また、新品部品を組み込んだのだ。また、私の頭を慣らさないといけない。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?