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『ぬくぬく布団探偵の初仕事』

ゆめを伝う涙を追って
どこまでもゆく
どこだろうとゆく
ゆめの涙の蛇口を求めてゆく
あてがなくともゆくが
ゆめの涙にはあてがある
ぬくぬく布団探偵の私の初仕事だ

私はゆめの森をあるく
ゆめの涙の川の坂を上がる
喉が渇いた
私はゆめみず川をすくって飲んだ
ぷつりと切れた昔の恋情の残り香がした
やはりな
その先にはゆめの涙の蛇口の源
ゆめみず湖があった
ぬくぬく布団探偵の私の初仕事は簡単だった
十年前のゆめの私の気配がした
まだ、其処で彷徨うか
其処にまだいるか
栓ないことだ
涙の元栓を閉めよ
ねむれや十年前の私よ
私は恥ずかしい十年前のラブレターを諳んじた
読経のような祝詞のようなラブレターを
なんどもなんどもなんども
ぬくぬく布団探偵の私も恥ずかしい
「愛、恋、肌、舌、肉、情、別、離、涙」
私は九字を切った

十年前の私の気配が消えた
ぬくぬく布団探偵の私の初仕事が終わった


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