見出し画像

(兵庫県)公立進学校の野球部は本当に強くなっているのか?を検証してみた

初めて投稿します。
野球太郎さんなんかでも最近記事として取り上げられていたように、近年高校野球界隈で囁かれている「進学校が近年強くなっている?」という仮説に対して、公立進学校かつ1つの都道府県に絞って検証(と呼べるほどでは無いかもしれませんが・・)を独自に実施してみました。あくまで素人が実施した一つのコンテンツとして、興味のある方はご覧いただけると嬉しいです。突っ込みどころは多々ありまくりかと思いますが、ご容赦のほどいただけますと幸いです。

まずは私が今住んでいて、最も頻繁に観戦に行く兵庫県から。

検証設計に関して簡単にご紹介します。
ー 対象高校の定義
偏差値61以上の公立(市立 or 県立)高校で硬式野球部がある高校。
専門学科と普通科が混在している場合は、普通科の偏差値を優先。
偏差値のソースはみんなの高校情報(みんなの高校情報|全国の高校の偏差値・口コミ・入試情報が満載! (minkou.jp))

ー 対象高校
結果として絞られてきた高校が以下20校。
神戸・姫路西・加古川東・兵庫・宝塚北・長田・市西宮・明石北・小野・西宮東・御影・姫路東・星陵・葺合・北須磨・北摂三田・姫路・加古川西・豊岡・姫路飾西

ー 検証方法
上記20校に対し、2012年~2022年の11年間の夏の兵庫県大会の成績をデータ化し、各種分析に利用。
データ化した内容…
「対戦相手」「勝敗」「得点数」「失点数」(各対戦)
「最終成績」(各年)
データ化のイメージ(下画像)

データソース…バーチャル高校野球 学校検索のみ!(【無料ライブ中継】2022年 夏の甲子園 | バーチャル高校野球 | スポーツブル(スポブル) (sportsbull.jp)

ー 検証内容
1-1  勝利数(総勝利数)
1-2  勝利数(地域別)
2-1  上位(8強)進出校数
2-2  上位(16強)進出校数 *兵庫県は参加校が多いため、16強も十分に上位進出だろうと定義しました。
3-1  総得点数(各年の対象校全部の総得点の和)
3-2  総得点数(偏差値帯別)
4-1  総得失点差(各年の対象校全部の総得失点差の和)
4-2  総得失点差(偏差値帯別)

各検証項目に対して、数値がそれぞれ増えていたり、プラスに転じている傾向が経時的に続いているようであれば、「強くなっているといえる」
上記に当てはまらない場合は「強くなっているとはいえない」と結論付けることとします。

(注釈)進学校だけに絞ることで、学歴差別・偏差値差別の助長を促す意図はありません。あくまで、文武両道を目指して、短い練習時間、多くの勉学の課題等、各制約を受けながら頑張っている公立進学校の野球部の成果が長期的に見て出てきているのか?という個人的な興味に着想し、実施したものです。

それでは、結果をお示ししていきます。

1-1 勝利数(総勝利数)

対象20校 総勝利数(2012~2022)

まず、強い公立進学校はどこなのか?という問いに対する答えです。
夏の総勝利数を集計した結果、1位小野、2位長田、3位加古川西、4位市西宮、5位西宮東 という結果となりました。
確かにここ数年上位進出、ジャイアントキリングなどで兵庫県内を沸かせている高校というイメージです。

1-2 勝利数(地域別)

地域別の勝利数については、推移が分かるように2012~2022までの勝利数を学校別にお示しします。縦軸が勝利数です。

神戸地区 勝利数推移(上位4校)

神戸地区ですが、やはり長田が強いですね。近年更に力を付けてきている印象です。北須磨は11年間で複数勝利が3度。星陵や御影は1度だけでした。

阪神地区 勝利数推移(上位4校)

続いて阪神地区です。2010年代前半は市西宮が強かったですが、近年勝ち星を減らしています。代わりに、西宮東が台頭してきています。西宮東は2012~2017まで僅か1勝でしたが、それ以降毎年3勝を安定して挙げています。
市西宮は山本拓実投手のいた2017年以降は、5大会で僅か2勝と少し勢いが落ちてきている印象です。とはいえ、2019年秋季でベスト8に進出していますし、その年は兵庫県の21世紀枠の推薦校となっていたと記憶しています。夏は報徳や関西学院と大会序盤で当たるなど、組み合わせが厳しいブロックに入ることも多い印象なので、心配は要らないでしょう!

播淡地区 勝利数推移(上位4校)

続いて播淡地区です。ここは群雄割拠というイメージですが、トータルで見ると小野が安定して強く、近年加古川西が力を付けているという印象です。小野は2018年の準決勝進出が強烈な印象です。明石商業に終盤までリードした戦いぶりは見事でした。加古川西は今年の6勝は対象期間の中ですと夏の勝利数トップでした。今年は関西学院滝川二などの強豪校撃破。神戸国際大付と延長でがっぷりおつの激闘を繰り広げて、兵庫の夏を盛り上げてくれました。それだけでなく3年前も、報徳市尼崎を下しており、強豪校との対戦機会でも、「加古川西なら何かやってくれそう・・」という印象が最近強くなってきているように感じます。

西播地区 勝利数推移(上位4校)

続いて西播地区です。ここが強いという公立進学校がない印象です。対象期間内でも最高勝利数が姫路飾西の3勝(2020年)ということで、公立進学校があまり存在感を示せていない地域ということが当データをみた印象です。とはいえ、高校野球は指導者の存在一つで大きく変わり得るため、今後に期待したい地域です。

2-1 上位進出校数(ベスト8)
8強の進出高校数を年次推移とその年を含む直近3年間の移動平均の推移でみてみました。
*2020年の独自大会は5回戦までの実施のため、データから除いています。

各年 8強進出高校数(棒線が高校数・点線が3年移動平均)

8強進出の公立進学校がここ数年では増えてきているのが、移動平均を見ると分かります。2018年は東西別大会なので参考記録かもしれませんが、それでも次の年の2019年は2校(加古川西、小野)、2022年も2校(加古川西、長田)と徐々に8強進出校の中に公立進学校が目立ってきている印象です。

2-2 上位進出校数(ベスト16)
16強の進出高校数を年次推移とその年からみた3年間の移動平均の推移でみてみました。

各年 16強進出高校数(棒線が高校数・点線が3年移動平均)

こちらも8強と同様、というよりより強く、16強進出校数が増えてきていることが分かります。やはり2018年以降の5年間が好調な印象です。2018年の東西大会に分かれ、甲子園出場の可能性が増えたことで、モチベーションが上がった結果、それが次世代へ受け継がれている。という新たな仮説がでてきました(データ化と分析はめちゃくちゃ難しそうですが・・)

3-1 総得点数(全体)
各年の公立進学校の総得点数の推移です。
実線は総得点数。点線はその年を含む過去三年間の移動平均です。

各年 公立進学校の総得点数(実線が得点数・点線は3年移動平均)

総得点数ですが、明らかに増加傾向にあります。公立進学校でも、攻撃力の向上傾向が確認できました。

3-2 総得点数(偏差値帯別)
各進学校をさらに細分化して、偏差値帯別で当指標の推移を見てみました。

偏差値61~64の公立進学校 各年得点数推移
葺合、加古川西、御影、小野、西宮東、姫路、姫路飾西、宝塚北、豊岡、北須磨、
北摂三田、明石北
偏差値65~69の公立進学校 各年得点数推移
加古川東、市西宮、姫路東、姫路西、星陵
偏差値70~の公立進学校 各年得点数推移
神戸、長田、兵庫

偏差値61~64の高校、偏差値70以上の高校で得点数の増加傾向がみられました。一方、偏差値65~69の高校では当傾向はみられず、むしろ緩やかな減少傾向が確認されています。

4-1  総得失点差(各年の対象校全部の総得失点差の和)
得点数だけでなく、得失点差の和も同様に各年での推移をみています。
実線は総得失点数。点線はその年を含む過去三年間の移動平均です。

総得失点差の推移(実線は得失点差、点線は3年移動平均)

2016年以降プラスに転じ、以降2019、2021を除く4大会ではプラスになっています。やや年による上下変動はありますが、移動平均でみると2010年代前半より明らかに増加傾向にあります。

4-2  総得失点差(偏差値帯別)
総得失点差についても、偏差値帯別に各校を分け、推移をみています。

偏差値61~64の公立進学校 各年得失点差推移 葺合、加古川西、御影、小野、西宮東、姫路、姫路飾西、宝塚北、豊岡、北須磨、北摂三田、明石北
偏差値65~69の公立進学校 各年得失点差推移 加古川東、市西宮、姫路東、姫路西、星陵
偏差値70~の公立進学校 各年得失点差推移 神戸、長田、兵庫

得失点差についても、同様、偏差値61~64の高校、偏差値70~の高校でここ数年の明らかな改善傾向がみられています。一方、偏差値65~69の高校では当傾向はみられず、むしろ得失点差がここ3年連続でマイナスとなっています。
公立進学校全体としては、得点数の増加や得失点差の改善の傾向がみられています。それらは偏差値61~64の高校、偏差値70以上の高校によるものであることが考えられます。

まとめを以下で記載していきます。
検証結果をまとめると、以下のようになるかと思います。
1-1  勝利数(総勝利数)…強い高校を示しただけなので割愛。
1-2  勝利数(地域別)…強い高校を示しただけなので割愛。
2-1  上位(8強)進出校数…ここ数年間でやや増加傾向にある。
2-2  上位(16強)進出校数…2018年以降で増加傾向にある。ここ1,2年は頭打ち?
3-1  総得点数(各年の対象校全部の総得点の和)…増加傾向にある。
3-2  総得点数(偏差値帯別)…偏差値61~64の高校、偏差値70以上の高校で増加傾向にある。
4-1  総得失点差(各年の対象校全部の総得失点差の和)…やや年による変動は大きいが、ここ数年プラスに転じている大会が多い傾向にある。
4-2  総得失点差(偏差値帯別)…偏差値61~64の高校、偏差値70以上の高校で改善されている傾向がみられる。

以上のことを鑑みると、
「兵庫県の公立進学校は、学校による差異はあれど、着実に近年強くなっている。そしてその一因として得点力の向上が関与している可能性がある」ということができるのではないでしょうか。

他の都道府県でも今後同様の検証をしていきたいと考えていますが、現時点ではいろいろと突っ込みどころ満載かと思います。
都道府県が変われば進学校の定義も変わってくるでしょうし、上位進出の定義なども変わってきます。また、単に初戦敗退、2回戦敗退といっても、その相手がどれくらい勝ち上がったのか?いわゆる強豪校だったのか?そうでなかったのか?強豪校相手ならどれくらい善戦したのか?等も観点に加えればより精緻な検証になると考えています。私一人ではそこまでの解析はできませんでしたが・・

近年はインターネット、デジタル技術の発達により、強豪校でも普通の公立校でも、野球に関して得られる情報量の差が徐々に少なくなってきています。それを生かし、彼らの得意分野である「考える」ことで、強豪校との差を詰めていっているのことが今回の結果にも結び付いたのかもしれません。


個人的には、上記対象とした公立進学校が、いわゆる強豪校と呼ばれる高校に善戦したり、勝利したりすると本当に興奮しますし、嬉しいですし、元気をもらいます。
私自身も、公立高校で、様々な制約を抱えながら部活動をやってきた身ですので、どうしても彼らには肩入れして観てしまいます。

普段はたくさんの勉学課題に追われ、練習時間も平日は2~3時間程度と限られたケースが多い中、一生懸命部活動に取り組み、そして結果も残す。という学校がこれからも増えてくることを楽しみの一つとして、今後も高校野球・他の高校生スポーツを観ていきたいなと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?