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創業8年目、新体制へ。/NPO法人青春基地・代表交代のお知らせ


ーご挨拶・石黒和己より

この度、創業から8年目となるNPO法人青春基地の代表を引き継ぐこととなりました。昨年から一年ほどの移行期を経て、この春からは新代表とともに、さらなる自律分散型の組織を目指した新しい青春基地がはじまります。

まずは学生起業をしてからの7年半、出会ってきた多くの皆さま、これまで本当に、本当に、お世話になりました。感謝をしてもしきれぬほど、人生丸ごとお世話になりました。本来であれば直接ご挨拶をすべきところ、このような形での挨拶になりましたことをお詫び申し上げます。

この決意がよぎった当時は、この先20年くらいは自分が舵をきっていくのだろうなあと、当たり前のように捉えていたので、かなり動揺し、その頃の日記には「なにかを始めることよりもずっと未知」「続けていくことの方がずっと自然」と書いてあります。それでもどうして組織を引き継いだのか。そしてどうやって引き継いできたのか。せっかくの機会なので、まとめたいと思います。

2015年、青春基地が生まれた日。
2016年、福島ツアー。
中高生だったみんなは、今や社会人に!

組織を継ぐ理由について

まず引き継ぐ理由は、さらなる個をいかした学びづくりを進めるためです。
一人ひとりに、”想定外の未来をつくる”。そう掲げて、これまで公教育のあり方を再考し、実践してきました。そして正解やあるべき姿、ルールといった社会起点の価値観が強い学校のなかで、”わたし”の声や感覚を起点とした学びを展開すると、驚くべきほどの変化が生まれることを実感してきました。半年以上教室で一言も話すことのなかった生徒が発表するに至ったり、一度も宿題を提出しなかった生徒が、3時間かけて音楽をつくってきたり。授業が終わっても、没頭しすぎて誰ひとり立ち上がらなかったり(最近は見慣れた風景にさえなっています、笑)。やらされ感、「どうせ無理」といったあきらめ、疲れ、そういった教室の空気が変わっていく様子を、様々なシーンで見せてもらいました。

5年間学校づくりを共にした都立高校。
青春基地にとっても大きなターニングポイントです。

そうやって、一人ひとりの”わたし”を大切にすることで、創造性やパワーが自ずと生み出されていく場と営みを「生成」と呼んでいるのですが、そんな学びの作り手である自分たちこそが、それを体現したいと、組織づくりとしても試行錯誤してきました。それは私自身がチームから創造性を引き出せず、気づいたら仲間がどんどん辞めていく、そんな苦戦もしたからこその関心でもあります。(生成については、ぜひこちらを読んでみてください!)

自分自身のスタンスを振り返ったり、面談やKPI、ロジックモデルを廃止するなど会社のルールを見直すことで、ようやくチームカルチャーは成熟してきなと手応えを感じられるようになると、次に「余白」と「手放す」というキーワードが現れてきました。作り手であるわたしと、わたしたちが〈しない〉ことで、相手が自由に〈する〉ことができるのではないか。生成がおこるのは〈しない〉という余白こそが必要で、そのためにはわたしが〈する〉ことを手放す必要があるのではないかー。組織の引き継ぎは、この気づきの延長線上にあります。

そして、個をいかすこと、すなわち”わたし”のまま生きることは、新しい世代の方が感覚的に体得していると感じています。母校の大学が、学生たちを”未来からの留学生”と呼んでいるのですが、まさに。自分もギリギリ20代で、世代交代というと早すぎると思うかもしれませんが、高校生や学生と話していると、全く違う感覚をもってるなと感じることが、年々増えています。新人類たち(と勝手に呼んでいます、笑)がつくりだす世界にこそ、分断をのりこえ、個をいかした社会の実現はあるんじゃないかとまじめに考えています。
またソーシャルセクターは創業者=代表であることが多く、若手が少ないこと(20代の代表は0.2%)も理由にあります。役割と役割のあいだにある曖昧なグレーゾーンに目をむけ、名前のない仕事を生み出すのが、ソーシャルセクターの醍醐味だと考えていて、だとしたら新陳代謝し、新人類たちが活躍することで、オルタナティブは生み出されるのではないかと考えました。

そして私自身も、”ただのわたし”に戻ってみたいと思いました。これまでもかなり自由にやらせてもらっていましたが、走り続けてきた代表という役割を手放すと決めたとき、もっと言うと高校生の頃から社会を動かす取組みを仕掛けてきたなかで、あまりにも多くの当たり前を背負っていたことに気づき、動揺や言葉にしきえれない感情が出てきて、体調が崩れる時期もありました。他の選択肢もあったはずなのに、「するべき」「するしかない」と選んでいた自分がいたことに驚きました。まさに”わたし”をいかすのではなく、社会起点で選択していたのだと思います。このトランジションを経て、立っている場と風景が変わることで、次はどんなことを感じ、考えるのか、非常に楽しみです。

組織の継ぎ方について

そして組織の引き継ぎのプロセスは、一年間かけて行いました。継承の進め方はなかなか周囲にも情報がなかったので、一つの事例として、赤裸々にまとめてみました。

・2022年2月
1月に代表交代を決意。2月にスタッフ一人ひとりに伝え、これからの青春基地を考える「セイシュンさんMTG」を毎週開催。組織の解散・譲渡・継承の全ての選択肢があるなかで、「この先もこの場所を大切にしたい」という声があがり、継承の方向を探ることに。
・2022年3月
スタッフ、学生インターンやプロボノ、全社で合宿。決意とこれまでの変遷を共有。「一般的には経営者が後任を決めるが、ここはみんなの場所だからまだ何も決めていない。一年間の移行期間をつくるので、セイシュンさんのことをみんなで考えてくれないか」と相談。
・2022年4月
月1で全員が集まる「Seishun-camp」が始まる。まずは代表という役割が、何をしてきたのか、業務から感覚までを棚卸し、どんな組織体制が青春基地らしいかと議論を重ねる。自分の日記には上期で方向性の明確化、下期で引き継ぎ業務と書いてあったが、具体的な組織体制はなかなか定まらなかった。
・2022年10月
スタッフの真知子さんが代表を引き継ぐことを決意。
・2022年12月
自律分散型の組織づくりをすすめるために、新たにボードミーティング(仮)というマネジメントチームの構想が始まり、ようやく形が見えてくる。
・2023年3月
全社合宿にて、新代表・佐野が決意表明し、これからの組織と事業のビジョンを共有する。またボードメンバーには9名の就任が決定。
・2023年4月
理事会承認。ボードミーティング(仮)がキックオフ。

このプロセスは計画的でも、順調でもなく、なにかを始めることよりもずっと未知の期間でした。でも、だからこそ急ぎたくなる気持ちを抑えて、代表者が一人で意思決定するのではなく、時間をかけてでも会社全体で問いを共有し、納得する解が出るまで待ってきたことが、なにより良かったかなと今は思っています。もちろん結果はこれからしか分かりませんが、この引き継ぎのなかで、むしろ組織の一人ひとりとの関係性が深まったからです。この間、ずっと日記をつけていたので、一つだけ共有させてください。

“大きな変化をつくる。それは面倒でネガティブな感情も生まれやすいはずなのに、こんなにあたたかいのは何故だろう。話をするたびに、私が包まれて、肯定されていく。そして、私やあなたがここにいるのは当たり前ではないこと。だからこそ、ずっとつづくものにしていきたいということ。今、熱をおびた呼吸を感じる。吸って、はいて、動きが生まれていく。緊張感もある。とくに真知子さんの”今ここ”を掴む、感じようとする開いた感覚と、研ぎすました態度を隣で感じる。(議論を)重ねていくほど、大丈夫だと思う。”

石黒の日記(2022年3月ごろ)

改めて、本当に貴重で最高なチームに囲まれてきたこと、こうして卒業をさせてくれることに感謝をしています。そしてこの期間のなかで、誰よりも考え抜き、最後は自分で代表になることを決意してくれた新代表の真知子さんに感謝というより、心からリスペクトをしています。これからも引き続き、理事の一名として、一部のプロジェクトの研究員として、最大限この場をサポートしていきますが、皆さんも一緒に見守って、育てていただけたら嬉しいです。

最後になりますが、「公教育をみんなで変えていく」、これを8年間かけて取り組んできて、難易度の高さとともに、その重要性を強く強く感じています。教育は、結果が定かではない曖昧な営みですが、小さくて些細な出来事の積み重ねが、未来を大きく変えていく営みであることも見てきました。
困難さが増しているこの世界のなかで、見えない未来にむかって学びの場を生み出していく「新しい」青春基地を、どうぞよろしくお願いいたします!

2023年5月1日 石黒和己


ーはじめまして、佐野真知子です。

はじめまして、佐野真知子と申します。この度、2023年4月25日をもって、NPO法人青春基地の代表理事に就任いたしました。

代表を引き継ぐにあたり、まずは自己紹介をさせてください。
北海道函館市で生まれ育った私は、釧路にある教育大学に進学。ダンスサークルやバイトを楽しみながら、卒業後はなんとなく先生になるんだろうなと思っていました。そして小中高特支の教員免許を取得したものの、現状を知れば知るほど、このまま先生になることに疑問を感じるようになりました。

そこで、大学院に進学するために思い切って上京。コロナ真っ只中の2020年でした。その時にたまたま青春基地と出会い、インターンにジョイン。学校現場での実践を通してどんどん活動にのめり込み、2年前からはスタッフになって、NPOと学校、それぞれの視点から学校を見つめたいと、高校教員と二足のわらじで働いてきました。

そんな私が代表を勤めることになるとは、自分自身が一番びっくりしていますし、決断に至るまでの道のりも単純なものではありませんでした。でも、前代表から退任の意向を聞いたとき、ここに残ることだけは即座に決めていました。

それは「青春基地が好きだから」です。
シンプルだけれど、純粋なこの気持ちが私を突き動かしました。もっといえば、ここから生み出される学校現場での景色が、私にとって何よりの宝物だからです。そしてそれは単なるプログラムの魅力ではなく、背景に「生成」という教育哲学が流れているからこその景色だと考えています。

最初は警戒心が強く、無気力だった生徒たちが、青春基地での活動をとおして自由なチャレンジや表現をしていく。自分の「好き」から多様なアクションが生まれる。そこには、私の想像をはるかに超える、エネルギッシュな景色が広がっていて「想定外の未来をつくる」のは不可能じゃない!と感激した記憶があります。
だからこそ、「学校のなかで起こる想定外を、子どもたちや先生方とまだまだ見続けたいし、そんな仕掛けをつくっていきたい。」これが私の一番の願いでした。

2020年、アーティストとのワークショップ。生徒たちの目の輝きや、ゲストとの掛け合い、当時の景色を今でも思い出します。

私なりのリーダー像

とはいえ最初は、「代表」という肩書きとは無縁の生活を送ってきたので、自分にはなにができるのか、この場所に残って何をしたいのか、いくら考えても答えが出せませんでした。(本当に難しく苦しい日々でした…)

むしろ、メンバーに向けて問いを次々出せるほど頭の回転が早いわけでも、数字や事業拡大を追い求めるタイプでもない…。漠然と「私は代表には向いていないし、ムリだな。」と考えていました。
しかし社内で何度も対話を重ねるなかで、私にはリーダーという役割への苦手意識やバイアスがあり、「強い」「引っ張っていける」「カリスマ性がある」それらを兼ね備えた人がリーダーになるべきだと考えていたことに気づきました。
自分の凝り固まった価値観に気づいた時、私のよさや強みを生かした形でこの青春基地を守り、一緒に変化していく新しい方法もあるのではないかとハッとさせられました。
そうしてこの1年間、ずっと暗中模索してきたなかで、私がこれから先も大切にしたいと考えていることは、「聴く」という行為です。

私は「聴く」ことの力を信じています。
隠れた思いや考えが自然に出てくる場をつくることで、数々の素晴らしい景色が生まれてきたことに、自信と誇りを持っているからです。言葉や想いに耳を傾けるだけでなく、一人ひとりに寄り添い、側にいることを通してひとびとが自分のやりたいことができる。自分自身の可能性を感じることができる。
そんな「個」がいかされていく感覚を大事にしたいと考えています。
傾聴しすぎて組織の方向性が見えづらくなる時もありますが、それでも対話を続けることで、「こうあらねば」「こうせねば」とがんじがらめになりがちな身体をほぐし、自分自身が変化を続けることを忘れずにいたいです。 

“みんな“で経営する青春基地へ

具体的なこれからの青春基地としては、一人で意思決定するのではなく、複数人で考え、つくる共同経営のような形を考えています。
自分の経験値や知識がまだまだ未熟だからこそ、この1年間チームみんなで方向性を模索してきました。その過程で、メンバーそれぞれの興味関心がチーム内でいかされることで、多様なもの・ことが生まれていくこと自体に、青春基地のおもしろさや価値があると感じたことも、この体制を望む理由です。

そこでボードメンバーという新しいマネジメントチームを立ち上げることで、組織全体の課題や発展に対して、1人で立ち向かってしまわないような構造をつくりました。(ボードメンバーの仕組みについては、また後日紹介したいと思います。)
ここまで悩みに悩んできたからこそ、これから仲間と一緒に走っていけることに、とてもワクワクしています!

2023年3月、合宿にて。

最後に

青春基地に残ると決めてから早1年。代表になると決意して半年。
本当に、本当に、濃い〜時間を過ごしてきました。
こんなに人生で頭を使ったことはないくらい、考え尽くしてきたと思っています。笑(人間はきっと、こうやって考えることをあきらめないように勉強をするのだと本気で思った!)

青春基地に残るとはいえ、組織や経営のことを何も知らなかったわけで、そんな状態でこの決断をしたことを後悔する時期もありました。それでも、青春基地だから見てみたい未来があるのであって、そのためにはチームをどうしていきたいのか、学校や地域を巻き込んで描きたいビジョンはどのようなものなのか、そんなことを考え続けてきて、「今」の私があります。

なにより、知らないことがたくさんあることを強みだと、ずっとずっとそばで支えて待ち続けて、面白がってくれたわこさん、悩みや壁打ちにひたすら付き合ってくれたプロボノのみなさん、学校現場で素晴らしい景色を生み出し続けたインターンメンバー、そして、まだお会いしたことのない方も含めて日頃から青春基地を応援いただいているみなさまがいたからこそ、この決意を胸に、前進できていると本気で思います。これからもよろしくお願いします!

変化には、苦さも伴うけれど、それ以上にこれから作り出す景色がどんなものになるのか、いまは期待や好奇心に満ち溢れています。
これから先の新しい青春基地とその挑戦を、今後も応援していただければ幸いです。

新・代表理事 佐野真知子

2023年3月、合宿にて。


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