見出し画像

著書「自宅出産を経て」を全ページ公開しました【第三章:産前産後の過ごし方】

第三章 産前産後の過ごし方


 ここからは産前産後の過ごし方や、多く寄せられるご質問にお答えしていきます。

 

一、妊娠中の過ごし方


 ●妊娠を忘れる

 妊娠中はリラックスして過ごすことがとても重要なことは方々で言われています。

妊娠中にもっともリラックスになるのは、安心する情報を得ることよりも、
「妊娠を忘れること」にあります。
しかし、妊娠してるのに、それ自体を忘れるのはなかなか難しいことですよね。
 妻は基本的に出産にかかる時間は短い方なのですが、三人目「穂」の出産時、陣痛から出産までわずか一時間四〇分ほどで、産後の回復もとても早く良好でした。
 その理由はなんだろうと考えていくと、今回の妊娠中、今までよりも妻が、
 「妊娠していることを忘れていた時間が長かった」ことにあると感じてます。

 もちろん、健診などで、妊娠期間中完全に赤ちゃんの存在を忘れることはありませんが、それでもお腹が大きいことを忘れて、狭いところを通ったり、上の子達と公園の遊具に登ったり、楽しく遊びながら、
「あ!そういえば私妊娠してたな」と思い出すようなイメージです。
(実際、かなりこういうことが多かったです)

 一人目の時は初めての妊娠ということへの不安、二人目の時は初めての自宅出産だったこともあり、色々と考えなきゃいけないことも多く、妊娠中にやったほうがいいことや、避けた方がいいこと、多くの情報に右往左往させられていました。


なので今回の妊娠から出産は、いい意味で「妊娠を忘れていた」時間が長く、結果として、これが安産や産後の回復に大きく影響したと思います。

 現代では、妊娠すると「胎児の健全な発育のため」の情報をスマホで調べたり、出産後のケアや育児方法などを仕入れたり、各種専門家に相談することも多い環境です。

専門家に適時相談することは大切なことでもありますが、
それが故に、妊娠を維持するため、出産して子育てをするための知識や手法を追い求め、結果としてその情報に自分自身が苦しめられることにもつながります。

また、僕ら専門家側の問題として、悩みを相談されたときに会話の中で新たな悩みを無自覚のうちに作ってしまうこともあります。例えば、「○○しておけば安心ですよ」というアドバイスには、「○○し忘れたら身体に良くないかもしれない」という不安も同時に伝えていることになります。

 そもそも私たちは、何かを意識的にしても、しなくても、自然と妊娠して出産できる身体を持って生まれています。現代にあるような知識がない時代から、僕たちの命はご先祖様が紡いできてくれたわけで、妊娠中や産後の知識的情報が皆無の時代でも人は生まれ、元気に育ってきました。至極当然なことですが、私たちはこの当たり前のことを当たり前に忘れています。

 何か特別な栄養素をとらなきゃ妊娠できない、特別なことをしなければ産後の身体は回復しない、子どもが健全に発育発達するためには色々なことをやらなければいけない、と考えてしまうことが多いのではないでしょうか?

 いうまでもなくですが、これは妊娠から出産に限った話ではありません。
栄養が満足に摂れない貧困地域でも子どもが大勢いるのはなぜでしょうか。何の知識も持たない動物たちが命を繋いでいけるのはなぜでしょうか。環境が変化しても、その環境に自ずと適応できるのはなぜでしょうか。

 まず、自分の身体が本来自然と妊娠し、出産できる身体であることを忘れてはいけなくて、なにかをするにしてもその前提の上でやるのが良いと思います。
 

 

●妊婦さんに安静は必要?


 妊婦さんの過ごし方といえば、「無理せず、安静に」と言われがちです。
妊婦健診でも、「基本安静に」とアドバイスされることが多いと思いますが、このアドバイスには妊婦さんを気遣う意味もありますが、実際には医療者側の「何かトラブルがあった時の責任逃れ」的な意味合いが少なからず含まれています。
 なにかにつけてとにかく「安静にね」という産婦人科の先生を僕はあまり信用していません。僕が信頼できる産婦人科の先生は、妊娠しているというだけで運動を制限することはほぼなく(皆さんの想像よりも制限しない)、その先生が「安静にしなさい」と言うときは本気で安静が必要なときなので、患者さん側もわかりやすいと思います。個人的にこういう先生の言葉は信頼できます。
いろいろな製品に書かれている「妊娠中の方は使用しないで下さい」という注意書きも、半分は本当に危ないこともありますが、もう半分は訴訟対策です。
 以前患者様で、妊娠経過そのものは良好だったにも関わらず、医師の指示通りできるだけ外出を避けたり、身体を使ったりせず「自宅で安静」を心がけていましたが、二十四週を過ぎたところから切迫早産となり結局三ヶ月ほど入院したケースがありました。
 一方、別の患者様で、妊娠中にまでロードバイクや、ランニングを積極的に行っていて、全くと言っていいほど安静にはしていなかった方ですが、何事もなく出産したケースもあります。
 「安静にする」ことで妊娠経過が良好になるということは現場の僕の感覚としてもなくて、科学的な根拠も定かではありません。一昔前までは、妊娠中でも今の時代とは比べ物にならないほど日常の活動量は多かったはずで、特別異常のない限り、妊娠中の運動を制限する必要はほとんどありません。
 前述したことですが、そもそも妊娠とは病気ではありませんよね。
考え様によっては「妊娠」は夫婦ともに健康な身体である証明ともいえます。
健康な身体を持っている人に、なぜ運動制限や安静が必要なのでしょう。
 もちろん、妊娠中に切迫流産や早産など一時的に安静が必要なケースもあります。
こういう場合は、主治医から安静を指示されるか、半強制的に入院を勧められるケースもあります。こういう場合を除き、経過良好な妊婦さんが安静にする必要性はほぼなくて、むしろ筋力やバランス低下などデメリットの方が多いかもしれません。


 

●妊娠中に身体が痛くなる理由


 妊娠中には、腰痛や、お尻の痛み、股関節や恥骨周囲の痛みが起こることがあります。
胎児はとても元気だけど、恥骨周囲の痛みがあまりにもひどくて、三十七週過ぎに帝王切開にて出産となったケースもありました。(この方は退院時、車椅子&松葉杖でした)
ここまで強い痛みは稀ですが、妊娠中に普段痛くならないような場所に痛みが出ることは頻繁にあって、悩まれている方はたくさんいらっしゃいます。
 こういった痛みの原因は、「お腹が大きくなったから…」という物理的な問題よりも、お腹が大きくなったなりに身体を扱えるか?という身体的感覚なことにあります。

妊娠期間は約十ヶ月でそのうちの五ヶ月から後半にかけて急激にお腹は大きくなります。大きくなったお腹を自分の身体の一部として扱えると、身体が痛くなることが少なくなります。例えば、お腹が大きくなっていることを忘れて、狭いところでも入ろうとする妊婦さんは自分の身体とお腹が感覚の中で一体化しています。こういう方はたとえお腹が大きくなっても、大きくなったなりにバランス良く動くので、身体を痛めにくく、お腹の重みもそれほど感じないと思います。

 一方で、お腹に赤ちゃんという「大切な荷物」を抱えている感じで動くと(荷物という表現はよくないですが、イメージしやすいので「大切な荷物」と表現します)、荷物なので重く感じたり、動きにくさを感じたりします。この感覚は、産婦人科の親子教室でパパが妊婦体験するときに使うお腹に重りのついたベストのようなイメージです。
 その結果、身体の一部に負担がかかるので、ひどくなると痛みが出やすくなります。

僕は登山が好きで、山に水や食料を持って上がるときは重いですが、お昼に食事をして食料が少なくなると荷物が軽くなった気がします。
実際にはお腹の中に食料が収まっただけで、荷物+体重はほぼ変わらないはずですが、なぜかお腹に食料が収まった方が荷物が軽く感じます。この原理と似ていて、誰もお腹に入った荷物を、荷物としては認識しないですよね。

 妊娠中に大きくなったお腹と自分自身の身体が分離しないよう、一体化して動くためにも重要な意味を持っていたのが「腹帯」で、今では戌の日に巻くくらいしか機会はありませんが、腹帯は軽くお腹に這わせて巻くだけで、お腹と身体が一体化した感覚で動け、妊娠中でも結構楽に動けるので、ぜひお試しください。

 「腹帯は毎日巻くのは面倒…」という方はバランストレーナー小関勲先生考案の、
「ひもトレ」がおすすめです。これも軽くお腹や骨盤に這わせてあげるだけでかなり楽に動けます。痛みを感じている方にもおすすめですし、腹帯に比べると日常使いがとても扱いやすいし、紐のデザインも可愛いので、ぜひお試しいただければと思います。

★ひもトレの詳細は「MARUMITSU」公式サイトからご覧ください。
 https://www.m-bbb.com/


 二、産後の過ごし方


 「産後の体力的な回復や骨盤を戻すにはどうすればいいか?」といった質問も多く受けます。「産後の骨盤矯正」という言葉がいつできたのかはわかりません。産後は整体に通って骨盤を矯正しておいたほうが良いという認識は一般的に言われていますが、結論、僕は産後の骨盤矯正は必ずしも必要ではないと考えています。
 それ以上に大切にしたいのは「出産後の過ごし方」です。産後の骨盤矯正や体操はあくまで戻りきらない時のための対処法であって、できればその対処法を用いずに経過させる方が大切です。
 
 産後の骨盤を早く回復させるために重要な過ごし方は次の三点です。

 ① 目を休ませる
 ② 産後一~二週間ほど可能な限り安静を保つ(その環境を出来るだけ作る)
 ③ 産後の骨盤ベルトは基本用いない

 この三点を実践するだけで、七~八割は骨盤が戻り身体も回復します。
整体や体操は、戻り切らなかった骨盤を整えたり、より引き締まったボディラインを作るときに必要になりますが、ベースはこの三点が大切です。
一つずつ解説しますね。


 ① 目を休ませる

 「産後は本を読ませるな」「針仕事はさせるな」と言う言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
これはとても重要で、現代ではスマホやLED照明など昔に比べると目を酷使しやすい環境です。産後でなくとも目を使いすぎると、身体が疲れやすくなった経験があると思いますが、産後の体力の回復、骨盤の戻り方には特に大きく影響します。
せめて産後一~二週間は極力、パソコンやスマホのディスプレイを見ることを控えめにしつつ、部屋のあかりは薄暗い感じにして過ごすのがおすすめです。
 特に照明の目への刺激は「炎の灯り→白熱灯→蛍光灯→LEDライト」の順で強くなるので、LEDの灯りは極力控えめの方が良くて、おそらく産後は明るい部屋にいることが辛いという方も多いと思います。
とはいえ、現代で使っている灯りのほとんどはLEDの光なので、限界もあるので、少し薄暗い灯りに調整したり、間接照明として用いるなど、目への負担を減らすように心がけるのはおすすめです。(恐らくその方が楽に感じると思います)



 ② 産後一~二週間ほど可能な限り安静に保つ(その環境を出来るだけ作る)

 
 これには妊娠中に産後ゆったり過ごすための準備をしておくことが重要です。
 産後の骨盤は妊娠中から出産によってひろがってはいますが、外からベルトなどで力を加えないと骨盤が締まらないということはありません。産後の骨盤は自然と戻ろうとする力が働いていて、それを邪魔しないことで骨盤は自然と回復します。その「自然に戻ろうとする力」が強く働くのが出産後数週間で、この間は極力骨盤に荷重しないことがおすすめです。
 具体的には、授乳やトイレ、シャワー以外ではできる限り寝てゆっくり過ごすといった感じです。これを実現するには、家族や親族、あるいは産後有料サービスなどを上手く活用する必要もありますが、産後二週間ほどは可能な限り無理をせず過ごすのがおすすめです。
 妊娠中から出産前は普段通りに過ごし、産後は静養に努める方がおすすめですが、現代では「妊娠中は安静にして、産後すぐから無理して動く」というケースが多いです。産後は無理せず静養するのが良くて、そのことをあまり知らない人が多いので、「無事出産したし頑張って動けばいいか」となりがちで良くない傾向にあります。(旦那さんもこの辺りは知っておくべきことです)

 産後の動き始めのタイミングにはやや個人差がありますが、産後すぐは「動きたくない」という感覚が強く、この感覚が強い時はまだ骨盤が戻ってはいないので、ゆっくり過ごした方がいい時期です。骨盤が戻り始めると、「起きて、動きたくなる」感覚があります。寝ていることがしんどくなるというか、そういう感覚があると骨盤は回復傾向なので大切にしてみてください。
 とはいえ、なかなか頼る人がいない方であれば、産後に無理してしまって骨盤が戻りきらなくても、施術や体操で骨盤矯正することは可能なので、どうしても無理をせざるを得ない方は、信頼できる先生に身体をみてもらいましょう。



 ③ 産後の骨盤ベルトは基本用いない

 一般的に「産後の骨盤ベルト」は必須アイテムの一つです。ですが、骨盤を回復させるにあたって骨盤ベルトは意味がないか、場合によっては邪魔をしてしまうケースがあるので、僕は基本的におすすめしていません。
②でもお話しましたが、産後の骨盤には「自然に戻ろうとする力」が働いています。
骨盤は自分の筋力で自然に戻ろうとしますが、身体の外側からベルトなどで無理にしめると自然に戻ろうとする働きが邪魔されることがあります。
それだけではなく、産後に骨盤ベルトを巻くと「楽に動ける」ようになってしまいます。「動けるようになって何が悪いの?」と思われるかもしれませんが、本来動ける状況ではないにも関わらず、骨盤ベルトをして「動けるようになってしまう」と身体にとっては大きなストレスで、やがては「骨盤ベルトがないと不安になる」といったベルトに依存した弱い身体が出来上がります。

 こういった理由から、僕は骨盤ベルトはおすすめしていません。何か特別なことをしないと過ごせない身体ほど弱い身体はないので、ここは大切にしたいですね。

 

 ●子どもの発育発達について


 子どもの発育発達についての質問をよく受けます。僕は発育発達の専門家ではありませんが、親としても大切にしていることについて述べたいと思います。

 子どもの発育発達については様々な情報、メソッドがあります。
 僕にまだ子どもがいなかった頃、子どもの発育発達に興味が湧き、いろいろな情報を調べては、講座を受けたり日本で有数の発育発達の専門家に直接会いに行ってお話を伺ったりもしていました。こうしたら子どもは健全に発育発達するということが学問として学べるので、おもしろく、患者様にもそれをシェアしていました。

 数年後、自分にも子どもが生まれ、実際に子どもの発育発達過程を観察していると、過去に知識的に学んだ学問を実践の中で垣間見ることができました。そして今現在も子どもと接する中で日々悩み、疑問に感じることも多く、子育てで悩む親御さんと僕らも全く同じフィールドで悪戦苦闘しています。
 しかし、子どもの発育発達の過程を毎日見ていて、当時「学問として学んだこと」に違和感を持っています。それは、今まで述べてきた点と本質は同じで、何か特別なことをしないと子どもは発育発達しないという不安を抱かせている側面があることです。
僕自身が子育てで悩み始めた今、世の中にあふれる発育発達の情報を改めて追ってみると、「○○することが子どもの発育発達に大切」という内容が多いです。
 結局いつも僕が反省するのは、子育てのやり方ではなく、子どもたちが発育発達していく過程を親の僕が邪魔してしまう点にあります。

 発育発達過程で大切な身体の部位が「口と手」ですが、その部位はとても感覚が鋭敏です。背中に髪の毛一本ついてもわからないですが、口に髪の毛一本入るとかなり違和感がありますよね。それくらい敏感な部分なので、子どもがなんでも触りたがって、口に入れたがるのは、その刺激によって脳の発育発達が進んでいくからです。

 このことが発育発達で重要な要素であることはわかっていても、日常生活でどうしても止めたくなる時がありますよね。もちろん一発アウトの危険性があるもの(薬品や感電の危険性があるものなど)は注意した上でですが、できる限り僕は口にいれさせています。岳は、落ちてる石とか、キャンプで砂のついたお肉とかをおいしそうに食べていて、ひどい時には砂を調味料のようにつけて食べていたときもあります。親の僕らとしてはなかなか我慢が強いられますが、一発アウトになること以外は基本、しっかり見守り、手は出しません。

ちなみに、それで子どもたちがお腹を壊したことは一度もないですが、もし壊しても下痢や嘔吐として体外に排出できるので大きな心配はしてません。うんちにしっかりと砂が混じっていた経験はありますが。
 なぜ、できる限り自由にしているかというと、
 「発育発達はさせようとしてするものではなく、自然とその環境に適応しながらなされるもの」だと思うからです。

親の僕ができるのは、その環境を作り、子どもの発育発達を邪魔しないことにあって、子ども自身がその環境に順応していくのが発育発達であり、特別なメソッドや子育て方法は必要ないと思います。

時々、公園で高い遊具を怖がる子どもを無理に登らせたり、登りたいのに転けると危ないからという理由で登らせないようにしているシーンをみかけますが、子どものことを信頼してないんだな~と思ってしまいます。何か特別なことをするよりも、人が健全に発育発達していく過程を邪魔しないことの方が大切です。
 子育てとは、親の邪魔したくなる気持ちとのせめぎ合いを言うのかもしれません。


 三、Q&A~妊娠中・産後の過ごし方~ 

  妊娠中や産後によくある質問をまとめました。

 ●妊娠中

Q、つわり(悪阻)はなぜ起きるのですか?


A、つわりは、血液をキレイにして母子ともに健全な状態で赤ちゃんの発育がスムーズにいく体内環境へ整えるためにあると考えています。普段食べないものを食べて体内環境を変えたり、吐いて何も食べられない状態にして体内の不要なものを排出して整えたり、身体に悪いものをあえて食べたくなることで体内環境を整えたりと、色々なつわりのパターンはありますが、体内環境を母子ともに健全な状態を保つというのがつわりの目的です。
とはいえ、僕たち男性にはわからない辛さなので本当に大変なことだと思います。
 以前、つわりで体重が二ヶ月で二十キロ近く落ち、ガリガリに痩せ細った方がおられました。立ち上がることもできずに、点滴をして、そのまま入院となり、お母さんにとっては本当に辛そうな状況でしたが、そんな状況でも、赤ちゃんはスクスクと大きく育ち、最後は母子とも問題もなく出産となりました。
 不思議ですよね。こんなに何も食べれず、飲めず、痩せ細って立てなくても、赤ちゃんはしっかり大きくなっている。僕たちの身体も、赤ちゃんも、思っているより頑丈なのかもしれません。つわりは自分の身体にも、赤ちゃんにも悪くはないものとはいえ、とても辛いです。
その辛さを少し軽減する方法として有効だと実感してるものを三つご紹介いたします。

 ① 足湯
 ② 目を温める
 ③ 焼き海苔を食べる


①足湯は、普段入浴している適温から二度ほど高めのお湯をバケツに張り一~二分ほど足をつけます。
②水に濡らして硬く絞ったタオルをレンジなどで適温に温めて、目の上に乗せ、タオルが冷たく感じたら終わるという方法です。

 どちらもご家庭で簡単にできる方法ですので試してみてください。

③焼き海苔は、海苔単体で食べてもいいですし、おにぎりなどで食べてもОKです。
海苔には血液を綺麗にして体内環境を整える作用があるのでおすすめです。つわりで何も食べれない方でも、なぜか海苔は食べれるという方が非常に多いことからも、海苔を食べる意味はあると想定できます。つわりで悩まれている方、あるいはご家族やご友人の方がつわりで悩んでいる方は一度実践してみてください。


Q、人によってつわりの種類が変わるのはどうして?


A、先ほども述べましたが、つわりの目的は「血液をキレイにして体内環境を整える」ことにあります。その人の身体的な状態に応じて、吐いて血液をキレイにする必要のある人、ひたすら食べてキレイにする人、普段食べないようなものを食べてキレイにする人、食べて吐いてを繰り返しながらキレイにする人と様々ですが、すべての目的は血液をキレイにし、母子ともに健全な状態に保ち、赤ちゃんが発育しやすい環境を作ることにあります。
その人の体質や、その時の心身の状況によってつわりは色々な種類で出てきますが目的は「血液をキレイにして、母子ともに健全に保つこと」と捉えて良いです。


Q、つわりが辛かったのでずっと寝ていたが違う過ごし方で何か変わったのでしょうか?


A、それで問題なかったと思いますね。その時のつわりの状態で、寝て過ごしたいのか、動いておきたいのか、食べたいのか、食べたくないのか、ご自身の心境に従ってあげることが大切です。このご質問は「つわりは身体に悪いことが起こっている」という前提だと思います。
 つわりは、赤ちゃんに健全な体内環境を作るための現象なので、その時の体調によっては寝て過ごしたほうが良かったり、動いたほうが良かったりと様々です。知識的、統計的に、「こうした方がいい」というのは一概に通用しません。
その時、そうしたかったというのがベストなので、しんどい時に無理やり動いていたなど別の過ごし方をしていれば、むしろ悪化していたかもしれないですね。


Q、匂いに敏感になるのはどうして?


A、鼻はとても敏感な部分のひとつなので、背骨の調整や女性生殖器と関わりの深い部位です。かつ、鼻は野生的な感覚が強く残る部分で、鼻=直感、勘とも言われていて、勘がいいことを『鼻が利く』と言いますよね。
 出産は、本能的な営みですから、本能的な感覚(直感)が自然と敏感になることが関係しています。匂いに敏感になることで、直感力を高めているとも言えるかもしれません。本来妊娠や出産は、頭で考えたり、情報や知識を勉強して行うことではなく、動物的本能で行うことです。匂いが敏感になるということからも、過度に知識を詰め込むことをしなくてもうまくいくようになっていることがわかると思います。


Q、妊娠中は赤ちゃんに栄養を送るためにもバランスの整った食事は必須ですか?


  体重も気になるところですが…。
A、先程「つわり」への回答でも書きましたが、どんなに栄養が枯渇状態になっても、
きちんと赤ちゃんに必要な栄養は送られています。妊娠したからといって特別な栄養素が必要になることもないので、つわりがあるなしに関わらず、食べられるタイミングで食べたいものを食べるようにすればまずは大丈夫です。

 妊娠中の体重に関しても、体重が増えることで産道が脂肪で狭くなると言われますが、産婦人科医によって意見も分かれるところです。
体重がそれほど増えていないけど骨盤が開ききらず、難産だったり、体重が増えても赤ちゃんの頭蓋骨がうまく折り畳まれ、スルッと生まれてきてくれたりするケースもあります。
 体重が増える=難産ではないので体重を重要視しなくてもいいと思います。とはいえ、主治医の先生や担当助産師さんとの信頼関係が大切ですので、納得がいかないことはしっかりお話を伺ってみてください。



Q、妊娠中は運動しても大丈夫ですか?


A、僕の患者様として来られる妊婦さんには、体調に大きな問題がない限り運動もいつも通りでОKとお話しています。妊娠中に運動を控えめにした方がいい場合は、切迫流産や切迫早産、その他お母さんや赤ちゃんに危険のある状態の時などです。それ以外に関しては、基本的に運動は控える必要はないです。逆に妊娠したから積極的に運動をする必要もありません。現代では妊娠することで、周囲から運動を止められたりしがちなので、積極的に歩いたり身体を動かしたりというくらいがちょうどいいかもしれません。
 ちなみに僕たち夫婦はスキーが趣味ですが、妻は岳の妊娠中、八ヶ月過ぎまでスキーをしていました。僕たちがスキーを教わっていた女性の先生が当時、妻のお腹のことをとても気にして心配してくれていたのをよく覚えています。しかしその一年後、スキーの先生も妊娠され、妊娠八ヶ月を過ぎてもスキーをされていました。僕たち夫婦をみて「妊娠後期までスキーできるんだ!」となり妊娠八ヶ月でもスキーしてたんだそうです。

 冒頭にもお話しした通り、妊娠自体は病気ではありません。もちろん赤ちゃんやお母さんが危険な状況になることもありますが、妊娠したということはまず、健康体であり、病的な状況でもありません。その状態で、特に制限する必要はないと思いますが、いくつか注意点があります。
 まず、当たり前ですが妊婦健診には必ず行くこと。それがなければ、赤ちゃんに問題があるかどうかもわからないですし、何より、突発的なトラブルがあった時に、妊婦健診の履歴がなければ、対応してくれる病院に大きな迷惑がかかるのと、そもそもみてくれないケースが多いです。
旅行などにいく際にも母子手帳を携帯しておくことも大切で、もし突発的なトラブルが発生した場合、母子手帳があることで産婦人科での対応がスムーズになりますので、常に持ち歩くようにしましょう。
 また、妊娠したからといって、あえて特殊な運動を始める必要もありません。運動をすること自体問題ありませんが、もともと運動をしていなかった方がいきなり激しめの運動をすると、妊娠しているしていないに関わらずケガをすることはあります。運動自体に健康になる作用はないので、無理に運動をする必要はないと思います。もともと運動をされていた方で、運動することがリラックスになるという方であれば、体調がよければいつも通りされて問題ありません。
 どこまでの運動強度は大丈夫なのかと不安になる方は、運動中にお腹が張るかどうかを目安にお考えください。お腹が張るほどの運動はやや強度が高いと判断し、それより軽い運動をおすすめします。
「お腹の張り」とは、具体的には「鼻先ほどの硬さになる」状態で、この程度の張りであれば大きな心配はありません。
万が一「おでこ」ほどの硬さまでお腹が張る時は、すぐにかかりつけの産婦人科、助産院に電話しましょう。(おでこの硬さまでお腹が張ると顔が青ざめて、誰がみても異常だとわかります)通常のお腹の張りは、鼻先を押したくらいの硬さですが、これくらいの張りは問題ないです。


Q、妊娠中のヒール(踵の高い靴)はやめたほうが良いですか?


A、妊娠すると、踵が高い靴からスニーカーなどのフラットな靴に変えるケースが多いと思いますが、その理由として「転倒しやすいから」ということがあげられます。
 しかし、踵の高めの靴を履き慣れている方であれば履いていただいて問題ありません。
踵の高い靴を履き慣れていない方なら転倒しやすいですが、履きなれた踵の高い靴を、スニーカーに変えたとしても転倒する確率が下がるとも思えません。
今までたくさんの妊婦さんを施術させていただきましたが、踵の高い靴に慣れている方は、フラットな靴を履いている時よりも骨盤がいいポジションに落ち着き身体が楽という方も多いので、妊婦さんによっては「少し踵の高めの靴を履いてみると楽ですよ」とアドバイスさせてもらうこともあります。
 踵の高い靴に慣れている方が、妊娠を理由に、履き心地や歩き心地が悪いと分かっていながら踵の低い靴を履き続けた結果、腰痛や骨盤痛に悩んでいる妊婦さんもおられます。
踵が高めの靴の方が歩きやすいという場合は、その方が骨盤が真っ直ぐ立ち腰が伸びやすく楽なので、まずは無理せず履きやすい靴を選んでみてください。


Q、妊娠中に頭痛があります。原因はなんですか?


A、一概にこれが原因と言えませんが、多い場合として「目の使いすぎ」が挙げられます。
現代では、スマホやパソコンなどディスプレイの見過ぎ、いろいろな不安や考えないといけないことが多く存在し、様々な情報によって考えることが多く、頭がオーバーヒートしている状況にあるかもしれません。ディスプレイそのものがいけないということはありませんが、スマホを触るにもリラックスして楽しめるものに使うことが目の疲れを溜めすぎないポイントになります。
 妊娠中から産後にかけては「目を使いすぎない」ということがお産をスムーズにしたり、産後の骨盤の回復をスムーズにしたりと大切なポイントです。私たち現代人はボーっと過ごすことが苦手なので、これは妊娠に限らず大きな課題ですね。
 思考することよりも、「感じること・感性・直感・勘」。こういった現代ではあまり信頼されることが少ない感覚を今一度大切にしてみる。このことが結果的にリラックスにつながるので大切にしてみてください。



Q、どうして陣痛があるのですか?


A、仙骨(骨盤の真ん中)と寛骨(左右の骨盤)を止めている靭帯が緩んでいくためという説がありますが、「痛み=圧・圧力」なので、この圧力によって出産し、骨盤が戻るということにつながっている側面があると僕は考えています。
 無痛分娩の項でも触れましたが、無痛分娩で出産すると、通常の分娩に比べると骨盤の回復はやや遅い傾向があると思います。(現段階での観察)無痛分娩を経験された方は、出産時に「はい、いきんでいいよ~」と言われても「いきめない」という方が多いことからも、痛みが少ないことによって圧力が下がり気味になっていることが考えられます。
 無痛分娩が決して悪いというわけではありませんが、赤ちゃんを無事に出産し、産後の回復を促す意味が陣痛にはあると考えています。


Q、妊娠中はどうしてむくみやすいのですか?


A、妊娠すると、妊娠していない時と比べて血液が薄まり、お母さんの血液総量は一、五倍ほどになります。これは赤ちゃんへの血液供給を十分行うためと、出産時の出血に備えているためと言われます。
 ですが、それ自体は全ての妊婦さんに共通して起こることであり、その中でむくみが出やすい方と出ない方がいます。
 むくみが出る妊婦さんに共通する特徴として「行動が億劫になりやすい」ということがあります。何かをやろうとは思うけど行動に移すまで時間がかかるなど、足よりも頭で思考する時間が長い傾向があります。例えば、妊娠中は特に周囲から「重いものを持たないように」「無理しなや」といろんな行動を止められやすいですよね。そうすると、余計に動くことに躊躇しがちです。その行動力の停滞が、体液の停滞(血液含む)となり「むくみ」へとつながっているのではないかと考えています。知識よりも体感・体験を大切にされるのがいいと思います。
  

 ●産後


Q、産後に手首(腱鞘炎)が痛いです。良い方法はありますか?


A、抱っこのしすぎよりも、抱き方に力みがあるかもしれません。産後の腱鞘炎のほとんどは一人目さんで、二人目さん以降は腱鞘炎にならないか、なっても一人目さんの時よりは軽いことが多いです。これまで多くの産後腱鞘炎の方を施術してきたので、傾向としては間違いないと思います。
 ここから立てられる仮説として、腱鞘炎には「目」が関わっていることが考えられます。一人目さんの時はどうしても一人のお子さんに目が集中しがちです。二人目さん以降となると、一人だけに目を集中するわけにもいかないですよね。視線が適度に分散することで、視線の集中しすぎを防ぎ、手に緊張が起きにくいと考えます。とはいえ抱っこすることもできないくらい痛みがある場合は、まず信頼できる治療院に相談されるのがおすすめです。
 日常心がけたいこととしては、抱っこする際に『痛み』をヒントにしつつ負担のない抱き方を探すことが大切で、そのポイントなどを僕は日常的にアドバイスしています。痛みをヒントに痛くない抱き方を身につけていくというのは手首だけではなく、その他色々な部位の痛みにも応用できる考え方なので、ぜひ応用してみてください。

Q、産後、食べ物の好みが変わりました。なぜでしょう?


A、変化しますね。辛いものが嫌いだった人が好きになる(僕の妻もそうです)など、色々なケースはありますが味覚以外にも、気になっていたことが気にならなくなったり、その逆もあったり、感覚的な部分や心理的な部分、価値観なども変化することが多いです。
ご自身で自覚されているかどうかはさておき、多少はどなたでも変化していると思いますね。

Q、産後、尿もれが酷かったので対処法を教えてください。


A、産後の尿もれ対策で重要なことは、まず産後の骨盤ベルトを巻かないこと。そして、産後起き上がれるようになってからはよく歩くことです。骨盤を整えるには「骨盤底筋」が重要です。近年骨盤底筋のトレーニングがありますが、この筋肉は鍛えるというよりは、骨盤がきちんと戻り、足腰にしっかりと体重を乗せて歩くことで、使えるようになります。要は意識的に動かして動く筋肉ではなく無意識的に動くことが大切な筋肉です。まずは日常を活動的に過ごすことを大切にしてください。



Q、産後、冷えがひどくなりました。


A、冷えの対処法としては、胸椎の八番(左右の肩甲骨の下を結んだ高さの背骨)に掌を当てて軽く擦るように温めたり、蒸しタオルを当ててあげると身体の冷えが緩み温かくなってきます。またこの方法は、母乳をスムーズに出す作用や、乳腺の詰まりを緩和する作用もあるので、そういった悩みの方にも有効です。ぜひ試してみてください。産後の冷えは、育児や家事で追われている方にも多くみられます。時にはお子さんを預けて、お母さん自身の心身のケアやリラックスに少しでも時間を割いてあげることも大切かもしれません。

Q、子どもを抱いていると落としたことなんてないのに落とすビジョンが頭をよぎります。


A、子どもを抱っこしている時によぎる「落としたらどうしよう」と不安に感じることそのものを悪い出来事として捉える必要はないと思います。子どもを落とすということを想定できていた方がより安全に抱っこできるのではないでしょうか。
 以前、育児に慣れている方が子どもを抱っこした時に、慣れているせいなのか何度も子どもの頭を壁や柱にぶつけてしまう方もいました。車の運転なども、「あそこの角から自転車が飛び出てくるのではないか…」と不安を感じながら車に乗る人と、そんなこと絶対ないとして車に乗る人がいたらどちらの方がより安全に車を運転できると思いますか?安全なのは当然前者の方ですよね。
 悪いことを想定すること自体はとても大切なことです。悪いことを想定してしまうことを悪いことだと捉えていることが課題として考えるべきポイントですね。

(第4章へ続く)


■  書籍「自宅出産を経て」購入ページはこちら↓↓

https://daikuu.base.shop/


著書に対するご質問、身体のご相談、その他お問合わせがありましたら、下記の公式LINEよりお問合せください↓↓


その他記事はこちら
著書「自宅出産を経て」を全ページ公開しました【第一章:身体の働き】

著書「自宅出産を経て」を全ページ公開しました【第二章:自宅出産】

著書「自宅出産を経て」を全ページ公開しました【第三章:産前産後の過ごし方】

著書「自宅出産を経て」を全ページ公開しました【第四章:大空とは?】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?