ワタクシ流業界絵コンテ#23

『飛べ!イサミ』の時は、何しろ初監督でしたから躊躇する反面、知らないことを強みにいろいろやっていきました。第1話のアフレコ後に「竜っちゃん、テンポが早すぎるよ」と言っていた杉井総監督でしたが、2クール以降の展開が未だ決まらない状況を見るにつけ、「言い方は悪いけど、もう勢いでごまかすしかないね(笑)」と腹をくくってくれたようです。「イサミは竜っちゃんの作品なんだからコンテはどんどん直しちゃってイイよ」という言葉を残し、杉井さんは同時期に監督をしていた作品の方に専念することになり、基本的に僕一人で監督業を行うことになりました。とはいえ、文芸会議以降の実務は僕が受け持っていたので、作業的には殆ど変わらなかったのですが。
 今、第1話を見返してみるとそんなに早いテンポには感じられません。最近のアニメにはイサミ以上にめまぐるしい展開の作品が多いですし、デジタル化のおかげで、同時に5人も10人も台詞を叫ばせることや、音声や映像を自由に切り貼りが可能になったりとある意味やりたい放題です。ただ、ストーリーがどんどん展開していく、この先どうなるのだろう、というワクワク感は今の作品にも負けていないと思います。ロボットもモンスターも出てこない、悪の組織は登場しますが、その時点ではまだどんな悪いことをするのか決まっていなかったので本当に登場するだけ(笑)。基本的には家族のやり取り、友達同士のやり取りだけの20分です。
 制作的には当時、グループタックに社内班を置く余裕が無かったため、最初が肝心な第1話から外注出し、という問題がありましたが担当してくれた動画工房のスタッフと演出の福本潔さんが頑張ってくれたおかげで立派な第1話に仕上がりました。辛口で知られる先輩が「今期の作品の第1話のなかでは一番良かった」と言っていたという話を聞き、ホッとしたのを覚えています。
 ただし、視聴率は抜群に悪く、土曜の6時の放映で2.2パーセントでした。放送前の打ち入りの時にプロデューサー氏は「この出来ならば15は行きますよ」と上機嫌で言って下さったのですが、結果は惨敗。NHK教育で初のアニメ枠、無名のオリジナル作品というハンデもあったのですが、さすがにショックでした。
 とはいえ、基本的にはNHKアニメは打ち切りが無いのでまだまだ期するところはありました。
「これからだ、これから――」

NHK出版『放送文化』2002年4月号掲載


読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)