ワタクシ流業界絵コンテ#24

 TVの仕事をしていると1年はあっという間に過ぎていきます。立ち上げから1話目の放送までは時間の流れは比較的ゆるやかに感じられるのですが、いざ毎週納品と放送が繰り返されると文芸会議や各設定の発注、各話の演出家との打ち合わせはもとより、カッティングからアフレコ、ダビングをこなしていかなければならないのですから呑気にやってはいられません(やるけど)。おまけに日々アクシデントも多いものです。最近は事件や事故の影響で番組が飛んだり、お蔵入りすることも度々なので余裕を持ったスケジュールで作らなければ、なんてことをよくプロデューサー諸氏と話したりもするのですが、時折切羽詰まった時の方が色々な無茶やひらめきが飛び出して面白くなったりするから皮肉なものです。
 低視聴率で始まった『飛べ!イサミ』には早くもテコ入れの危機がやってきました。オープニング、エンディングの変更要請とイサミたちの〝変身〟です。前にも書きましたが、『イサミ』は当初、変身美少女ものとして企画されました。しかし中途より参加した杉井総監督が「そんなのやめようよ」早々にご近所探偵ものに路線を変更させていたこともあって、一番最後に参加した僕にしてみたら『イサミ』はそういう流行りのことをやらない作品だと思っていました。そこへ突如の路線変更です。やんごとなき上層部の方たちからも「夜のシーンが多くて画面が暗い」「しんせん組なんだから(忍たま乱太郎みたいな)時代劇にした方がいい」「地味なものはイカン」という意見が寄せられたそうで、つまりは大意として「民放でやっている派手なアニメのようにして欲しい」ということのようでした。そのための変身であり、オープニングの変更であると。更にはエンディングもレコード会社との契約上、もう1曲使用しなければならないことになっていたそうで、必然的にエンディングも変えなければならない――。
 深刻そうに書いてしまいましたが、実はストーリー展開や設定諸々で行き詰まっていた僕らにしてみれば、ある意味渡りに船なことでした。オープニングを作り替えるのはココロザシを下ろすみたいでイヤでしたが、それ以外は逆に「派手ならば滅茶苦茶やってもオッケーですね! そうなんですね!」ということなのだろうと開き直れば問題なし、そう思い込むことにしました(笑)。
 かくして急ピッチで新オープニングの制作が開始されました。

NHK出版『放送文化』2002年5月号掲載


読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)