ワタクシ流業界絵コンテ#25

 最近はドラマ同様にアニメも13本のワンクールものや26本のツークールものが増えています。原因は色々あるでしょうが、一番の理由は〝しんどい〟、これに尽きるかと思います。
 スポンサーや代理店を含めて船頭さんは多いし、スケジュールがないから脚本も大勢の人に発注したりして文芸の仕切りもてんてこ舞い。ましてや現場でもより沢山の人が関わっていますから、これを仕切っていくのは製作的にも制作的にも大変です。『飛べ!イサミ』はNHK作品のため打ち切りこそはありませんでしたが、スケジュールやスタッフワークス等のトラブルは当然あったわけで、新オープニングの制作辺りを境に、総作画監督の降板などギスギスした雰囲気もありました。
 しかし、その一方では口コミで作品そのものの評判も上がってきたし、キャラクターデザインの毛利和昭さんが、前の仕事を終えて本格的に作画に加わってくれるようになったりと、イケイケなムードでもあったのは確かです。変身路線もそういう意味ではすんなりとみんな色々アイディアを出し合ったり暴走したりと、3クール目はなかなかバラエティに富んだ話が続きました。従来のファンからは「媚びている」「あざとい」という不満の声もあったようですが、小学生には好評だったようで、「ヒーローものでもないし変なアニメ」「イサミちゃんの変身姿がかわいい」などという感想ハガキも沢山いただきました。この場合、変なアニメ、というのは褒め言葉と受け取っています(笑)。
 しかし、何とかスタッフをやりくりしていた現場も4クール目に突入する辺りから息切れを見せ始めます。文芸も話の収拾をどうつけるかで二転三転して時間だけがいたずらに過ぎていきます。作画以降のセクションの方々にはなかなかコンテが下りてこないのでかなりヤキモキさせてしまいました。アフレコもその頃は動画工房さんの担当話数を除くと大体が線撮り(原画をコピーして編集タイミング用に撮影する)だったのでアフレコやダビングもかなり面倒だったと思います。音響監督の藤山さんは温厚な方でしたが、「佐藤さん、役者のみんなはイサミのことが好きだから頑張ってるんだよ。だからもう少し(絵を)何とかしてくれると……」としみじみ言われるたびに申し訳なさで一杯になりました。そして更にとんでもない事態が――。
「佐藤さん、ノンコが産休に入っちゃうよ」
「えっ?!」

NHK出版『放送文化』2002年7月号掲載


読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)