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"教育系" note まとめ

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"教育系" noteのまとめです。
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#大学受験

【ニッポンの世界史】#31 学習参考書と世界史:なぜ世界史は「暗記地獄」化したのか?

 これまで私たちは、「ニッポンの世界史」は、アカデミズムや学習指導要領のような“公式”世界史と、それらと対抗関係にある“非公式” 世界史の綱引きによって形成されてきた経緯をみてきました。  “公式”の語りを、“非公式”の語りが突き崩すといっても、両者の間に厚い壁があったわけではありません。  ときに、ひとりの書き手が、両者を行ったり来たりすることもみられました。  歴史学者の土井正興(1924〜1993)がそれにあたります。 土井正興: スパルタクスの研究者から教科書執

【ニッポンの世界史】第17回:受験戦争が変えた「教養」—1960年代の進学校と予備校

分離ありきで進められた世界史A・Bへの改訂  1960年度告示学習指導要領でA科目とB科目に分けられた世界史。いずれにしても以前に比べて標準単位数が減らされることとなりました。  この背景には前回みたように、企業の求める質の高い就職者を確保するため、実業課程向きのざっくりとした世界史が求められた事情があります  学習指導要領づくりに携わった教材等調査委員会の明石委員は次のように発言しています。  明石と同様のことは、木村茂夫も発言しています。実際にそのような成り行きで改

2024年度大学入学共通テスト解説【英語・リーディング】

▼本年最初の投稿になります。遅ればせながら,あけましておめでとうございます。半年も更新が滞っていて申し訳ありません。本年もよろしくお願いいたします。 ▼さて,昨日(1/13)に2024年度大学入学共通テストの英語の試験が実施されました。そこで,例年と同様に,リーディング問題の簡単な解説と所感を述べたいと思います。 【1】素材文のリーダビリティ▼まず,2024年度リーディング問題のリーダビリティ(読みやすさの指標)についてですが,大問別にみると以下のようになっています。

東大理Ⅲを蹴って京大へ? 天才たちは、なぜ「西」を目指すのか|『京大合格高校盛衰史』

京都伝統校の凋落①(1991~1993年)【1991年】 1990年代前半は大学受験もバブル期を迎えた。大学、短大志望者は119万9000人、入学者は77万1000人、どの大学にも合格できなかった受験生は42万8000人となる(旺文社調べ)。団塊ジュニアが大学を受験。バブル経済絶頂期で、1人で何校も受験という状況が生まれている。優秀な受験生は競争の激化を見越してさまざまな大学を受ける。それによって難易度が低かった大学も高くなって、入りにくくなる現象がおこった。週刊誌はこう伝

世界史記述の勉強法【「共通テスト」から「一橋大世界史奇問」まで】

今、日本の歴史教育は変革を迫られている。 「歴史総合」の誕生は、「もっとグローバルに日本史と世界史の垣根を越えて世界へ羽ばたく日本人を増やす」という政府の意図を感じるし、江戸時代に鎖国していた日本とは違い、現代は情報革命によって世界中が「近く」なった。もはや、世界はすぐそこであり、イスラームや中国共産党、アフリカはかつてないほどに身近になった。スマホの画面の向こうには小さな地球が広がっていて、意思があればすぐに地球の反対にまで手を伸ばせる。 ゆえに「日本人」という自意識を

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【創作】東大政経2023

もし東京大学の学部入試二次試験に「政治・経済」があったら…という創作です

【国語力を高める100冊】 #1「考える」/『ライティングの哲学』千葉雅也,山内朋樹,読書猿,瀬下翔太 

国語力を伸ばすには、考える力が必要です。国語教育において、「読む力」や「書く力」をいかに鍛えるかという本は多くありますが、「考える力」については、それほど注目されていません。しかし、考える力は、国語力にとって根源的な力です。考える力がなければ、「読むこと」も「書くこと」も空疎なものになり果ててしまいます。では、考える力は、一体、どうやって鍛えればいいのでしょうか。 ここで大事なのは、「考える」というのは、非定型な能力だということです。つまり、「考える」は、定義ができません。

撰銭令について(2023年度共通テスト本試験・日本史B)

 2023年度の共通テスト・本試験:日本史Bの大問3の問3(小問番号14),撰銭令について,いまだに正解が2つあるのではないかと言う人がいる。きわめて正答率が低い問題だったことは事実だが,高校日本史の標準的な知識だけをベースに史料を読んで解いたとしても解釈がわかれるタイプの問題ではない。  撰銭令については,高校教科書では次のような説明がなされている。  次に,掲載されている史料を見てみよう。  前提として,自分勝手に撰銭を行うな,と宣言したうえで,使用禁止の銭貨として

続・夫婦で小さな塾「Dear Hope」を開いた話  ~いま、ここで、考える力~

 こんにちは。教育家夫婦が開いた小さな塾「Dear Hope」です。  いつも記事をお読みいただき、ありがとうございます。  この記事は、副塾長(夫)が書いています。  今回は、夫婦で小さな塾「Dear Hope」を開いた話の続編として、指導方針、つまり塾生たちに指導を行う上で私たちが大切にしていることをご紹介したいと思います。 「本わかり」を大切にした指導を行っている 私たちは、塾生に対する教科指導(授業や家庭学習の管理・アドバイス)において、「本わかり」を大切にした

2022年度大学入学共通テストを総括!

2022年度の大学入学共通テストが1月15日(土)・16日(日)に実施されました。大学入試センター試験から移行して2回目となった今年度、難易度や平均点はどのように変化したのでしょうか。YーSAPIX教育情報センター次長の堅田一郎に聞きました。 今年度は大幅に難化 数学の出題形式に動揺も――今年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)について、率直な感想をお聞かせください。 堅田 昨年より問題の難度が大幅に上がりました。2年目は難化が予測されていたものの、科目によっては想

地方の進学校の気をつけるべきとある風潮

僕は6年前まで、とある地方の公立進学校(自称)に通っていました。 そこで勉強を頑張り、最終的に京都大学に入学できました。 これは学校の先生たちのサポートがあって実現できたことなので、先生たちと学校にはすごく感謝しています。 しかし今当時を振り返ってみると、母校のある風潮がすごくよくなかったよなと思うんです。 それは、『都会の私立大ではなく地方の国公立大へ行け』というものです。 大学の友達と話していて気づいたことなのですが、地方の公立高校では、全国的にこの風潮があるそ

はじめに~自己紹介と運営方針~

◆執筆者◆ 佐京由悠(さきょう よしはる) 日本史科予備校講師。 専門は日本近現代史、特に近代における〈日本人〉論や昭和期の言論弾圧について。 趣味は歌、熱帯魚と亀とよろしくやること、旅行、散歩、徘徊、飲酒。 ◆note運営方針◆ 私が日本史やこの社会一般に関して考えたこと、授業の内容を深堀りしたもの、映画・読書案内など多様な記事を掲載していく予定です。 ~現在予定しているお品書き~ ・日本史講義延長戦(授業では話しきれない深堀りした内容) ・さきょの本棚(読書案内/

2022年共通テスト「世界史B」 の全問解説

この全問解説の文章は、 1 共通テストの問題を素材に重要事項を整理したい受験生 2 世界史が苦手で、勉強方法に悩んでいる高校生 3 世界史を学びたいと思っている社会人 に読んでほしいと思いながら書きました。 今年の共通テスト「世界史B」の問題点については、すでにnoteに書いて多くの人に読んで頂きました。また、共通テストの形式にも問題があることは、世間に認識されつつあります。 世界史に関して言えば、たしかに設問の多くが良問ぞろいであることは否定しようのない事実です。そして

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意味分節理論は大学入学共通テスト「情報」の範囲に入るか??

大学入学共通テストが行われているということで、意味分節理論と絡めて書いてみる。意味分節理論は近い将来新たな試験科目になる「情報」に、深いところで関連すると思われる。 ◇ ◇ さて、意味分節理論というのは何かといえば、意味ということの発生の仕方を考える理論である。 といったところで、さっそく迷路の入り口に落とし穴が開いている感じになる。 第一に、意味分節理論でいう”意味”とは、「もの」ではなく「こと」である。第二に、意味分節理論で言う”意味”は、止まったり固まったりして