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FC東京のエンブレム変更・ミクシィの真の狙い・サポーターの想い

2023年2月22日、FC東京からSOCIOを対象にしたLINEとメールが届いた。

LINEでは「◯◯様」と文章内に自分自身の名前が入り、今までにない重たい文面でのお知らせだったことから少し驚いた。

そのお知らせの内容は

  • 新しい経営目標『FC東京VISION2030』の策定によるプレゼン動画の公開とその視聴依頼

  • 『エンブレム変更の検討』の発表と、それに対するアンケートの回答依頼

以上の2点であった。

いざプレゼン動画を見てみると、これまでのビジョンからそこまでかけ離れているものではなかった。
少し肩透かしではあるが、社長・川岸滋也氏とクラブコミュニケーター・石川直宏氏がぎこちないながらも掛け合いをしつつ、真面目に真摯な説明をしていた印象だ。
ほぼ100%サポーターに向けた動画なのだろう。スポンサーなどに向けた発言もなく、サポータにすごく気を使っている様子にも見えた。

SOCIOに限定で先行公開されている動画なので、プレゼン動画の内容やアンケートの項目には深く触れないことにする。
一般公開は2月24日を予定しているそうだ。

個人的には「長年の思い入れがあるのは分かります。それでもなんとかエンブレムを変えさせてください」と言われたように受け取った。

FC東京が解決できなかった課題

プレゼン動画の内容をかなり抽象化すると、説明の流れとしては「地域を大切にしながら東京全域、アジアから世界に向けてクラブを大きくしていき、強豪化を目指す」といった具合だろうか。
何より「娯楽に溢れる東京を本拠地とするクラブとして、より一層のブランド力向上を図りたい」ということが強調されていた。

2030年に向けた目標としても、現在のクラブの立ち位置の分析としても目新しい内容ではなかった。
FC東京が長年の課題としていたのは「娯楽に溢れる東京で新規のサポーターを獲得する」ことだし、「人口に比べて観客動員数がイマイチ伸びていない」ことは常態化している。

「娯楽に溢れる東京で人を集められるほどに魅力的なサッカーを展開する」≒「Moving Football 〜ボールも・身体も・観ている人の心も〜」というスローガンは、1998年のFC東京立ち上げから参画して2008年から監督に就任した城福氏が初年度に掲げていたものだ。
長い間FC東京という組織に所属していた城福氏だからこそ、そういった課題を意識してのチームスローガンだったのだろう。

つまり、東京ガスフットボールクラブからプロ化して以降のFC東京がずっと抱えてきた20年来の課題を改めて説明したということだ。

ミクシィの真の狙い

その解決されない長年の課題について、2022年2月1日から経営権を持つ株式会社ミクシィが本腰を入れたということだろう。
その改革の第1弾として、エンブレムの変更に着手する。
いわばクラブ及びミクシィからの決意表明である。

エンブレムを変更しても、チームのブランド力が向上しないことはクラブ側も理解しているだろう。
G大阪の事例からも、長年チームを支えてきたサポーターが反発することは想定済みであるはずだ。

クラブコミュニケーターの肩書通り、石川直宏氏はサポーターとクラブを繋ぐ存在である。
その石川氏がサポーターに対して、エンブレム変更になんとか理解をして欲しいと促す姿を打ち出したクラブ側の真意は、そういったところの不満感を軽減したいというものだったのではないか。

また、事前のアンケート実施は「あくまでもエンブレムの変更は既定路線である」といった印象を和らげる目的ではないか。
国や自治体が行うパブリックコメントに近い立ち位置ではなかろうかと考えてしまう。

クラブ及びミクシィの本当の狙いは「FC東京から東京ガスのイメージを一掃する」ことだろう。
エンブレムのデザインから見受けられる「ガスの炎」のイメージは、どうしても東京ガスを想起させてしまう。

https://www.fctokyo.co.jp/club/profile/

理由や目的は二の次だ。
IT分野で成り上がった株式会社ミクシィの子会社たるFC東京において、インフラ業の老舗である東京ガスの印象は何としてでも塗り替えたいはずだ。

ミクシィのイメージ戦略からしても、チームの象徴であるエンブレムから常に他企業の印象がチラつく現状はさぞかし難しい状況だと想像する。
どんなにカッコいい映像を作ってコンテンツとしても、そこには常にエンブレムが映り込む。
いくらニューバランスと共に都会的なイメージのリブランディング戦略を仕掛ても、エンブレムだけは旧体制のままだ。

一人のサポーターとしての願い

20年来のサポーターとして、慣れ親しんだエンブレムが変更されるのが嫌だ、というのが正直な気持ちだ。
小学生の時はFC東京の下敷きや筆箱を使い、ノートの余白にエンブレムの絵を描いていたりした。
大人として独立した今でも部屋にはビッグフラッグを掲げている。

しかし、愛着だけで変革を拒むのは良くないことも分かっている。
クラブとして大事なことは、今後の5年、10年、20年にどれだけサポーターを増やせるかということであり、現在のエンブレムがその妨げになるのであれば、変更しなければならない。
そこにどういった本音や理由があるとしても。

きちんと説明の動画を出してくれていること、SOCIOに先行して発表してくれたこと、形だけかもしれないがアンケートを実施してくれること。
クラブ側は筋を通そうとしている。

先にも紹介したが、動画の中で石川直宏氏が繰り返し「僕も愛着がある」といった主旨の発言をしている。
そういった台本上のリクエストかもしれないし、本心でもあるだろう。

本心から言えば「ナオを上手く使いやがって」と考えてしまう自分がいることは確かだ。
また片方の本心では「ナオが言うなら…」と無理やり納得しようとする自分もいる。

突然舞い込んだエンブレム変更の報に、まだ気持ちの整理がついていない。
それでも確かなことがある。
「今シーズンは、今のエンブレムで戦える」ということだ。
「今のエンブレムで優勝できる」ということだ。

これまで25年間の想いを胸のエンブレムに込めて声援を送る時間は、まだ十分に残されている。



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