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『5人目のCMF 寺山翼』2023/chapter04/h/vs横浜FC

タイトルの『chapter04』とは、J1リーグ第4節という意味である。
本当はリーグのアウェイゲームやルヴァンカップ・天皇杯など全てを網羅的に記していきたいのだが、時間の制約もあるので『私が現地で見た試合』を取り上げていくことにしている。

前回の記事はこちらだ。
開幕戦のホーム浦和戦だった。何件か『スキ』を頂きありがたく思っている。感謝申し上げます。

この日までとなる『マスク着用必須』開催

さて、2023年3月12日に開催された横浜FCとのホームゲーム。
実に春らしい気候で、15時キックオフのデーゲームだったこともありパーカーにユニホームという出で立ちで快適に過ごすことができた。

政府によるマスクの推奨が本日までということで、スタジアムにおいても『声援を出す際はマスク着用必須』とアナウンスされることは最後となる試合だった。
様々な段階を経て本来のスタジアムの景色に戻ることについて感慨に浸りながら、声援を送っていた。

1年前に書いたこのような記事を振り返っても、ようやくという気持ちが強い。

ちなみに、私自身は花粉症デビューしたばかりなのでマスクが手放せない。

離脱者に苦しんだ開幕からの3試合

さて、サッカーの内容に話を戻す。
開幕戦で浦和に勝利したチームは、アウェイで3連戦を戦った。

・02/26 J1第2節 vs柏 1-1 △
・03/04 J1第3節 vs京都 0-2 ●
・03/08 ル第1節 vsC大阪 0-1 ●

3試合連続で勝ち星がなく、どの試合も先制点を奪われる展開となった。
J1リーグではここまで『1勝1分1敗』となっており、リーグ制覇に向けたスタートダッシュを果たすことはできなかった。

チームが勝てない要因は様々にあるものの、ハッキリと分かりやすい部分は試合で使いたい選手の『人手不足』であろう。
つまり、『離脱者』の続出による戦力の低下だ。

ここには、『負傷による離脱』や『代表活動による離脱』が含まれる。

先ほどの試合結果一覧に主な離脱者の情報を追加しよう。

・02/26 J1第2節 vs柏 1-1 △ 安部、仲川、青木、松木、熊田
・03/04 J1第3節 vs京都 0-2 ● 安部、渡邊、青木、松木、熊田
・03/08 ル第1節 vsC大阪 0-1 ● 安部、渡邊、青木、松木、熊田

ここで浦和戦に出場した選手は安部、渡邊、松木、仲川であり、2022シーズンの活躍やオフシーズンでのトレーニングを通してアルベルの信頼を得た選手たちだ。

特に浦和戦の後半から投入された安部、渡邊は勝利の立役者となっており、昨シーズンの起用法から考えても引き続きチームの中核を担う選手だった。

また、昨シーズン31試合に出場し浦和戦でもフル出場した松木は言うまでもなく主力中の主力である。
その運動量とフィジカルを全面に押し出したプレースタイルは、アルベルトーキョーの中でも突出している。試合全体を通してカバーし続けるエリアの広さには目を見張る物がある。

こういったチーム戦術の前提となるような選手たちが離脱してしまった。
特に安部、松木が担う『アルベルトーキョーのCMF』という役割を果たせる選手は限られている。
この2人以外では、塚川と、今シーズンから加入した小泉しか本職が居ない。
昨シーズンは渡邊がここを担うこともあったが、先述の通り離脱している。

そのため、出場できる塚川・小泉の2人にこのポジションを任すほかなかった。
スターティングメンバーとしては十分に思えるが、現在の『5人交代制』というレギュレーションで、かつ相当の運動量が求められるこのポジションにおいては、ベンチにも同水準の選手を置けなければ厳しい。

また、青木の怪我も東京の台所事情を厳しくした。
オフィシャルリリースや報道がないため怪我の程度が定かではないが、開幕戦から第4節まではメンバー入りをしていない。
東慶悟がアンカーのレギュラーポジションを獲得しているが、負担の大きさから試合展開に応じて交代するオプションが欲しいというのが理想だろう。

アルベルトーキョー本来の『4-1-2-3』ではなく『4-2-1-3』を新たに試みている様子は浦和戦でも見られたが、それは続く柏戦でも同様だった。
東慶悟と安部を交代。小泉・松木をツーボランチにして、前に安部を出す。
または、小泉・東慶悟がツーボランチ、前に塚川を出す。
こういった試合中のシステム変更の前提は小泉であり、前所属ではアンカーを担うこともあった彼のバランス能力を存分に活かす策だと言えよう。

しかしこういったシステム変更も、CMFやアンカーの枚数が足りていないと十分に機能させることが出来ない。
CMFを努められる選手が小泉・塚川の2枚で、かつ青木が器用できない状況では東慶悟以外にアンカーを任せられないし、ツーボランチにしようにもバランサーとして働くことのできる選手が小泉しか居ないので、『4-2-1-3』の『1』を塚川に任せるしかなく、どうしても後半の運動量が足りなくなる。

そういった台所事情もあってか、敗北を喫したルヴァンカップのC大阪戦では高校1年生の佐藤龍之介をCMFで起用。
更に、後半にはツーボランチで小泉の相棒に木本を使った。
前所属の名古屋でもボランチをこなしていた器用な選手ではあるが、あくまでも『可能である』というだけで、本職はCBである。
失点の直接的な原因ではないものの、やはり少し難しさを感じさせる起用だった。
現在のアルベルの苦しみを象徴するような交代策であるように思えた。

しかし、この苦しかったカップ戦ではこの横浜FC戦に向けて一つの収穫があった。
順天堂大学から加入したルーキーの寺山翼である。

ついに現れた“5人目”のCMF

現在のFC東京の基本システムは『4-1-2-3』である。
その『2』にあたるCMFにおいて起用の目処が立っている選手は、小泉・塚川・安部・松木の4人
先述の佐藤龍之介がキャンプから話題に上がっていたが、それは『良い若手が居るな』といった序列に過ぎず、あくまでも主力はこの4人だった。

しかし、U-20日本代表で松木が離脱。更に安部が負傷で2ヶ月以上の離脱となり、盤石に思えたCMFの枚数はシステムを維持するために最小限の『2人』となってしまった。

そこに現れたのが、寺山翼である。
順天堂大学時代にはアンカーを努めていたことから、開幕前には東慶悟・青木に続くアンカーの3番手だと想定していたのだが、苦しい選手事情の中で柏戦でメンバー入りし、続く京都戦で途中出場を果たす。
そしてルヴァンカップのC大阪戦でCMFとして先発出場をするに至った。

その試合の前半ではプレーエリアの判断に悩む姿が目についたものの、後半には積極的なプレスを敢行するなど順応した様子だった。
浦和戦での松木の役割というと分かりやすいかもしれないが、球際へ寄せるスピードも早く、力強さを感じさせた。

C大阪戦では敗れたものの、そのプレーっぷりがアルベルの眼鏡にかなったのかもしれない。
今節ではスターティングメンバーに名を連ねた。ポジションはCMFである。

俵積田にも言えることだが、ルーキーにとって公式戦で実践を経験することは何よりも成長に繋がるのだなと思い知った。
デビューとなった京都戦での寺山のプレーを見て「まだ早いんじゃないか」と感じたのが正直な印象だったが、それがC大阪戦の後半で覆された。
プレースピードへの『慣れ』といった部分が大きのかもしれない。考えを改めた。

試合結果は3-1で公式戦3試合ぶりの勝利となった。
寺山は2-1となった前半終了までプレーし後半の頭から塚川と交代。
その評価については、アルベル監督が下記のように語っている。

クオリティの高いミッドフィルダーが3名ほど不在という状況がありますが、それを言い訳にはできません。今日の前半のプレーというのは、改善しなければいけない部分です。ボールを持つことだけがめざしているプレーかというと、そうではありません。私のスタイルの中での重要な要素が、ハイプレスからの素早い攻守の切り替えです。今日は、その部分については良いプレーができていたと思います。すべてにおいて好守の素早い切り替えをめざしているかというと、そうではありません。時には落ち着いて、低い位置からビルドアップして良い形で前進していくことも求めています。ただ、後者については、今日はできませんでした。

https://fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/375?_ga=2.190021352.2115406797.1679033831-1167386049.1626225667

あくまでもチーム全体に言及しており、寺山個人に限った話ではない。
それでも、個人への評価としても見ることができるだろう。
素早い攻守の切り替え』には良い評価を与えたが、『ビルドアップ』は納得の行く水準でなかったということか。

特に26分での2点目は、ハイプレスを仕掛ける前線に合わせるように前進し、相手ボランチと相手ディフェンスラインの間に位置取りをしてパスコースを消していた。
相手のミスを誘った形だが、きちんと仕事を果たせていた結果だと言えよう。

ユース出身で大学を経由してトップチームまでたどり着いた育成出身の寺山は、そのチームへの想いも隠すことなく表現してくれている。
試合後のSNSには、こんな画像がUPされていた。

松木がU-20日本代表に選出され、数試合を離脱することが分かった時、彼のエネルギッシュな力を補う選手は長友くらいかと記事に書いたが、寺山が埋めてくれるような気がしている。
それは、プレーでもそうであって欲しいし、この試合での出来を見たら可能であるように思えた。

寺山本人がインタビューに答えている通り、年上として松木には負けられないという意欲が強いだろう。

Q、 アルベル監督は、寺山翼選手のメンタルを評価していると言っていましたがどう感じていますか。
A、松木玖生選手は僕よりも下の学年です。昨シーズンから東京で活躍している姿を見てきました。そういった意味で凄く良い刺激になる選手が近くにいます。もっとやらないといけないですし、松木選手の存在が自分にとって良い影響を与えてくれています。

https://fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/375?_ga=2.190021352.2115406797.1679033831-1167386049.1626225667

日本時間の3月15日深夜に行われたイラク戦に負け、ベスト4で大会を終えた松木と熊田は次節18日の名古屋戦には間に合わないだろう。
寺山には、塚川・松木の定位置を奪う覚悟ができているはずだ。安部の復帰にも数ヶ月かかる状況で、起用できるCMFが増えることは心強い。
安部や松木がいないことを嘆くだけではなく、こうして若い選手が伸びていく喜びを感じられることはサポーターとして幸せだ。

寺山がU-18だった時には、FC東京U-23の一員としてJ3を戦う姿を見てきたので、個人的に彼の帰還と今節の出場には嬉しいものがあった。

スタートかベンチかは分からないが、名古屋戦でも出番があるだろう。
アルベルに「クオリティの高いミッドフィルダーが3名ほど不在という状況がありますが」などと言わせない程に活躍する姿を期待している。


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