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詩1

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2016年6月以前にネットで発表した詩
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2017年7月の記事一覧

恋の鬼

みんなが仲よく輪になって

目をつむっているあいだに

あたしぬけがけするわ

膝かかえ座るあなたの背中に

ハンカチを落とすの

そんな大胆なこと

いつもはできないけれど

今ならばだれも見ていないし

あたしは不敵な鬼だもの

手には木綿を結んで作った

恋の爆弾をにぎっている

いつも見ているその背中

見まちがえようないわ

時限装置付きの恋をそっと置いて

あたしは逃亡する

ドウカ 

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線香花火

しめった夜だと知っていて

風が強いと知っていて

ジッポーのともしびを囲う駐車場

しけった線香花火に願いを託す

長持ちしないと知っていて

すぐに玉も落ちると知っていて

七夕の夜

揺れる二本の芯の先を

蒼い焔に浸して

誕生の時を待ち焦がれる

はかない命だと知っていても

それは言いっこなしさ

きっとこの強い風が雲をはらって

星は短冊の言葉を読んでくれる

願いは今宵天の川を渡り

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