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スタートラインに立った時、その声は聞こえてくる

◆1から続く

積水化学女子陸上競技部から選ばれた、
二人の日本代表、新谷仁美選手と卜部蘭選手。

彼女たちをすぐそばで見て感じたこと、
大会に向けてどんな想いを持っているか、
TWOLAPSの横田真人コーチ、
山田はつみマネージャーに聞きました。


本人たちがなりたい姿で大会を迎えらえるように


―彼女たちのために、マネージャーとして何ができると考えていますか?

山田:私はただのマネージャーで、できることは正直ないんですよ。競技力に影響することも、私の一言がきっかけでタイムが10秒早くなることもない。ただ、個人的に考えているのは、その時々にあわせて何ができるか。

例えば思ったことを伝えるのか、伝えないのか。あるいは違う方法で伝えるのか。言葉じゃなくても態度で伝えるのか。安心して本人たちが、なりたい姿でスタートラインに立てるように、遠隔でできることならやりたいし、やらないのがベストの場合もある。その状況を見ながら、自分にできる限りのことをしていきたいと思います。

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―横田さんは試合に向けて、二人をどう送り出そうとしていますか?

横田:はっきり言うとあまり本大会という実感がないんですよね(笑)。きっとスタートラインに立ったりしたら、そういう気持ちになると思いますけど。あまり特別なことはないです。

裏では経験を伝えながら戦略を練って、僕はメニューや言葉で伝えるだけ。卜部に関しては、気負わずに大会を戦って、アスリートとして世界を経験して何が足りないのか体感して欲しいですし、新谷に関してはスタートラインに無事に立つという(笑)。少しでもマイナスをプラスに変えられるよう頑張る。それが、今までもこれからも、変わらず僕の仕事だと思っているので。


スタートラインに立った時、その声は聞こえてくる

―今回の大会が彼女たちにとって、どんなものになればいいと思いますか?

山田:2人にとって、今大会は通過点に過ぎないと思っているんです。もちろん、注目してもらえるし、家族や会社の人たち・応援してくれる人たちに向けて、最も表現できる場所、目標を達成する場所でもある。

ただ、二人はまだその先を見ていると思うんですよね。彼女たちの想いやメッセージを、ご両親や見せたい人たちに向けて、走りで発信できる場になったらいいなと思います。

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―横田コーチは彼女たちにどう大会と向き合って欲しいと思っていますか?

横田:卜部は初めての世界大会で、日の丸を背負います。彼女は今回、『応援してくれる人たちのために』という気持ちが強く、大会に出なければいけないと、迷子になった時もあった。出場が決まるまですごく苦しみましたが、そこを乗り越えて代表になったことにすごく価値がある。苦しい経験も彼女の今後の糧になる。それが今の彼女の強さかなと思って見ています。

僕もロンドンに出て経験したことが、その先の競技人生や今にすごく活きている。卜部は今回の経験を、アスリートとしてのパフォーマンスだけじゃなく、"競技者として社会にどう影響を与えられるか”考えられる選手。だから、今回のコロナ過という特別な大会に出場して、彼女なりに色々考えることがたくさんあるはずで、それをもって成長して欲しいと思っています。

―新谷選手に関してはどうですか

横田:新谷は、代表が決まってから時間もあって、色々考えたり発言を求められたり、そういった中ですごく苦しい状況に立たされていると思う。僕もこういう地元でやる世界大会、パンデミックという特別な状況下での大会は経験したことがない。そんな中で、メダルを期待されてスタートラインに立つのが、どれほど苦しいか、どれくらいプレッシャーのかかることなのか、僕の想像より遥か上の苦しさを抱えて日々トレーニングしているんだろうなと、近くで見ていてすごく思います。

でもシンプルに、スタートラインに立ったら、近くで応援してくれる人の存在を大事に感じると思う。色々な声が聞こえると思うんです。批判する声もそうだし、応援してくれる声もそう。新谷は良くも悪くもマイナスの感情を上手に使う人なので、今回はいい機会だからプラスの方に使って、新しい新谷を出してくれると僕はすごく嬉しいです。“ニュー新谷”になる機会にしてほしいなと、僕は思います。


それぞれの希望や苦悩を抱えて、
日本代表となった新谷選手と卜部選手。
彼女たちにとって、大事なひとつの通過点が、
やってきます。
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8月2日(月)9:35 1500m予選
8月7日(土)19:45 10000m決勝
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文:守本和宏/ナノ・アソシエーション
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