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純粋に『もっと強く、速くなりたい』

8月2日。念願だった国際舞台。
自己ベストを約3秒縮めながら、
2組9位の予選敗退に終わった卜部蘭選手。

しかし、その2日後。8月4日の準決勝の日。

選手たちがアップを行うサブトラックには、
いつものレース前と同じように
試合に向けて準備する、卜部選手の姿がありました。

ポイント練習をして、自分の体の状態がどうか確かめる彼女。
「準決勝に進めなくても、もう出たつもりでいようと思って、本当に次のことを考えて準備していました。トラックでのアップなど見に行くと、本当に最後の最後まで自分のベストパフォーマンスをするために皆がウォーミングアップしている。そういうところに“ここが世界なんだ”と感じました」

悔しさを経験してなお、すぐ現実的なイメージを持ち、
次への一歩を踏み出せる。
その姿勢こそが、人として成長するのに重要なんじゃないか。
そう、卜部選手の行動から感じました。

最後までたくさんの方のおかげで出場できた

大会前、6月末の日本選手権で、
実は脚を痛めていた卜部選手。
本来は出場する予定だった
ホクレン・ディスタンス1500mを回避。
本番直前まで、トレーナーの
ところに毎日通う日々が続きました。

2~3週間前ぐらいからは
徐々にポイント練習ができるように。
自分の感覚を大切にしながら、足の状態を見て
できることをこなし、痛みなく走れるようになったのは
レース1~2週間前だったと言います。

「本当に毎日トレーナーさんに見ていただいて、レースのスタートラインに立てたこと、最後の最後までたくさんの方の力のおかげで出場できたのを、身をもって感じました。本当に感謝しかありません」

直前まで他の場所で調整を進め、
選手村に入ったのは試合前日。
そして運命のレースの日がやってきます。

日常の延長線上にある「楽しんで」

迎えた、8月2日当日。
9時35分と早い時間帯のレースに向け、
4時に起きた卜部選手は集中を高めていきます。

「レースが午後だと午前中は緊張感があるのですが、今回は集中できた感じでした。緊張はありましたが、スタートラインに立てるありがたみの方が勝っていた感じです」。

試合前、両親と横田コーチから
もらった言葉は「楽しんで」。
特に気負うわけでもなく、
普段通りのままでいてくれる
横田コーチの姿が、安堵感を誘います。

「横田さんも、あまりこの大会だからとかではなく、特別な言葉じゃなくて、余計な緊張もせず、程よい緊張感でいてくださりました。日常の延長線上で、いつも通りだったのが良かったです」。

スタート直前、少しだけ緊張しているような、
それでもうまく集中できているような
顔を見せた卜部選手。

「それまでの過程では、色々なことを考えて緊張などありましたが、スタートラインに立った時、この場に集中しようと思いました。変なプレッシャーとか緊張感なく、“今に集中しよう”と思えた」

そう、彼女は語ります。

“行けないことはなかった”ところが悔しい

スタートから序盤、卜部選手は位置取りも良く、
7番手前後でレースを進めます。

「接触などもなく最初は入れたので、自分の中で余裕をもって走れていたのは覚えています。自分のリズム感を大切にしながら走れました」

そのまま良い位置取りで迎えた、ラスト1周。
直前を走っている選手が少し接触に反応したあと、
レースは一気に動きます。

「ラスト一周で動き出したときに、接触などもあってゴタゴタしてしまいました。(自分より)前がその瞬間に動いたので、そこで、もうちょっと前にいて勝負したかったなというのがあります。日本選手権の時のラストスパート、先頭の方にいてラスト300mが45~46秒とかで走れたら最後まで粘れていた。やっぱり、周回を重ねるごとに前の位置にいるのが大切だなというのは、私自身のレースも含めて、他のレースを見て感じたことです」

最後の400mで前後2つに分かれた先頭集団。
流れに乗れていれば、ラスト勝負にも
絡めたという実感が、ありました。
それを人はきっと、手応えと呼ぶのでしょう。

「最後で“行けないことはなかった”ところが悔しさにつながったというか。予選と準決勝は少し流れが変わったり、通過タイムも上がる。でも、田中希実選手の走りもあって、勝負できないことはないと思いました」「自分で上限を決めて走りたくない。そう感じましたね」

もっと強く、もっと速くなりたい

大舞台での自己ベスト更新。
それでも準決勝に進めなかった悔しさ。
ゴール後、頭をよぎったのは純粋な悔しさと、
感謝の気持ちでした。

「率直に、準決勝に進めなかった悔しさが大きかったです。自己ベストを更新できて、最後までサポートしていただいた皆様のおかげだとすごく感じました。でも、ラウンドを重ねて勝負したかったのが純粋にある。悔しさの方が強かったです」

「横田さんは『ここでベストってすごいよ』と声をかけてくださいました。自分の中では、準決勝に行けなかった悔しさの方が上。でも、まだ行けると思えたのも一つ大会から得られたものかなと感じました。田中選手の走りや色々な面から、”自己ベストのまだ上にも行ける”と思えたのは、この大会のおかげだったと思います」

長年、目標にしてきた大会を終えて。
改めて感じたこと。
それは純粋に「強くなりたい」
「速く走りたい」という想いでした。

「陸上を始めたときから憧れていた大会だったので、その場に、スタートラインに立った時、無観客ではありましたが、今まで出たどのレースよりも高揚しました。アナウンスや、ウォーミングアップの雰囲気。本当にここが国際舞台なんだと、レースや会場の雰囲気を通して感じました。そこで走って一番感じたのは、もっと力を付けたいという気持ち。純粋に、『もっと速くなりたい』『もっと強くなりたい』というのを感じさせてもらった大会でした」

➡VOL.2に続く


文:守本和宏/ナノ・アソシエーション
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