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知的好奇心の持ち方と行動特性

研修やワークショップをやるうえで、参加して頂いている方のスキルなどを意識します。
何度も実施するうちに、スキルと呼ぶかは微妙ですが、その人がどんなタイプかを図る尺度として知的好奇心の持ち方というのがあるな、と感じるようになりました。

今回は「知的好奇心尺度の作成」という論文を読んで考えたことをまとめていきたいと思います。

まず、「好奇心」は学業達成に対して、「知能」「勤勉さ」に続く3番目の影響力と言われています。
それは、仕事における「業務遂行」でも同じと解釈できます。

論文では、大学生500名ぐらいにアンケート調査を行ったところ、好奇心は2つのタイプに分けられるということでした。
拡散的好奇心:新しいことに興味を持つタイプ。
特殊的好奇心:一つの物事を深堀していくタイプ。

拡散的好奇心と特殊的好奇心

どちらかにハッキリと分かれるというよりは、割合だと思いますが「自分はこっちぽいな」というのはあると思います。
この好奇心の分類から、色々なことが分けることができます。

以下は私が論文からまとめ直した内容なので、興味のある方はぜひ原文を読んでみてください。

■Big Five尺度
共通言語記述子に基づくパーソナリティ特性の分類法です。
これは5つの尺度があるのですが、拡散的好奇心とBig Fiveの「開放性」がほぼ同じ項目のため、相関が強くなっています。
新しい技術習得や企画立案のような業務は、拡散的好奇心が強い方が向いているといるかなと思います。

■BIS/BAS尺度
BIS/BASは、行動抑制システム(Behavior Inhibition System)と行動活性化システム(Behavior Activation System)の略です。
課題に対しての行動抑制、問題解決の積極的傾向を示すものとなり、4つに分かれます。
拡散的好奇心の人は、BAS刺激欲求という「興奮や刺激を求める傾向」に強い相関が出ています。
このタイプの人には、ルールや規則よりも目新し企画や業務を提示された方がやる気が出るということになります。

特殊的好奇心の人は、BISという「罰や脅威に反応して自分の行動を抑制する傾向」に相関が出ています。
このタイプの人には、ルールや規則の中で効果的な業務を推進することを求めた方が仕事がしやすいと感じることが多いでしょう。

■認知完結欲求尺度
決断やルール順守、不確定要素に対する対応となります。
拡散的好奇心の人は、新しいことにも大胆に決断して、不確定なことにどちらかというと喜んで対応していく傾向があります。
特殊的好奇心の人は、ルールに従う方が多いため、前例があると安心して活動ができる傾向があります。

■曖昧さに対する態度(曖昧性耐性)
ここまで読むと拡散的好奇心の人の方が優位そうに感じますが、この曖昧性耐性で大きな違いが出ます。
拡散的好奇心の人は、曖昧性耐性が高いため、不確定要素が強い新しいことを喜んで受け入れる代わりに、それが故にそのまま放置することも多くなります。
そのため何も決まっていなくて周りが心配に感じても、本人はあっけらかんとしているという、少し困ったことになる可能性が高くなります。

逆に特殊的好奇心の人は、曖昧な状況を不安に感じるため、管理したり自分の範囲を明確にしたりという行動に出ます。
このタイプの人がいると、業務内容が明確になったり、しっかりとお客さんと合意をしたりと、実装段階では欠かせない存在となります。

個人的には、どちらの方が良いということはなく、フェーズや業務内容によって良い組み合わせがあるかなと思います。
拡散的好奇心の人ばかり集まると、発散して収集がつかなくなる可能性がありますし、特殊的好奇心の人ばかり集まると、業務の深堀や効率化は進みますが、新しいアイデアなどがあまり出てこないということになると思います。
なので、自分の好奇心の持ち方を把握しつつ、チームで作業をするときには相手の特性を考慮して役割分担などを検討していくのが良いかなと思います。


運用改善の教科書の中では、カッツモデルをベースにシステムエンジニアに必要なスキルについても解説しています。
ご興味のある方は是非お手に取ってみてください。


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