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映画『かば』。感想

今回、ご紹介するのは映画『かば』。

今後、10年間は二次製作(DVD化、配信等)はしない。映画館での上映のみと、監督が仰ってましたので、ネタバレは避けて、実直な感想を述べます。

川本貴弘監督によるインディーズ映画。

内容は、
1985年、日本がバブル景気を迎える頃の大阪・西成区を舞台に、西成区の独特の街、人間、歴史を背景に一人の教師・蒲と臨時教員として赴任してきた女性教師・加藤らが、西成区に生きる生徒たちと向き合い、共に成長していく物語。


まず、一言。インディーズ映画とは思えない非常に大衆向けのエンターテイメント性ある作品でした。

個人的に、インディーズ映画で学園ものを見るのは初めてでした。
中々、インディーズ映画で学園ものに挑戦するのは覚悟がいるもので、
やはり、学園ものはキャストも多くなるので、その分のギャランティや自主映画だと交通費もあるだろうし、役者さんがプロだとしても役者として生計を立てている人はいないだろうからスケジュールも難しい。しかも、舞台が西成となれば、尚更、難しかったかも知れない。無名の俳優となると一人一人の個性も引き立てないと観客側は飽きられちゃうだろうし。

だいぶ前になるが、同作がクラウドファンディングにて製作資金等を募っていたことを知っていたが、当時の私は、投資する余裕がなかったので参加してませんが、西成区を舞台に学園ものを自主映画でするのかと、驚いた記憶を覚えています。

パイロット版を経て、所謂ディレクターズカット版というのでしょうか、完成された作品が今年の夏ごろより、上映が始まった。

監督からは、自主映画という話だが、ちゃんと商業映画として成立しているし、なんならシネコンで上映してもおかしくない出来だった。
キャストさえ、有名人なら立派な商業映画として成り立っている脚本構成・演出だった。
勿論、無名の役者だからこその面白さもあるし、生々しさをあった。


ネタバレを含めず、感想を述べるのは難しいが、
優等生(普通の子)と所謂、不良に「優劣つけるな」みたいなことを言う蒲先生の言葉で、教師同士の対立が描かれる。何気ないシーンなんだが、このシーンこそ、この映画で描きたかったテーマの伏線であり、西成、子どもたちの事を知らなかった新人教師・加藤という観客目線に立つ人物を置く事で観客を置き去りにせず、教師、生徒の成長過程が観られて良かった。
正直、途中まで金八先生が大好きな監督なのかな?と思うほど、商店街、河原、たこ焼き屋……と出てくるし、転校生の良太がある意味、腐ったミカンの加藤優を彷彿とする。
しかし、西成区を舞台としているとあって、貧困問題、差別問題や家庭問題、当時の校内暴力などが真っすぐに描かれ、また、地域と学校との連携、繋がりも描かれていた。
どのシーンで誰にとは言わないが、ある教師が「すんません」と言って、何度も頭を下げる場面にはウルっと来た。
希望を感じる終わり方ではあったが、ラストカットがあれで良かったのかはちょっと微妙でした。

そして、何より、音楽が良かったです。
時折、流れるラジオが、物語の年代を象徴しているのだが、当時の音楽を彷彿とする楽曲と胸に刺さる歌詞、騒音寺(SO☆ON☆G)Nabeさんが手掛けられた『Long line』の主題歌、挿入歌だそうです。
映画館でCDを買ったのは、正直、初めてです。
パンフレットには、約7年間にも及ぶ製作過程が掲載されていたり、欠番シーンの台本も掲載されていたりと、見ごたえのあるものになっております。

誰しもが持っているであろう固定概念、偏見、決めつけ、が主な大きなテーマとして描かれているメッセージ性の高い作品であることは間違いない。

だが、大衆向けのエンターテイメント性を感じる一方で、何処かで見たことがある演出や脚本構成のテレビドラマ感は否めないし、インディーズならではの監督の個性的な部分も見たかった。
ただ、インディーズならではが観たいという事すら決めつけなのかも知れない。

上記にも記しましたが、二次製作(DVD、配信等)はないという事なので、是非、映画館で見て欲しい作品です。
監督自ら日本中を回っていくと仰ってましたので、今後、日本各地で上映される事を期待しております。
学校(少なくとも高校)での上映もあるのでしょうか?尺的にも描写的にも難しい点は多々ありますが、とても見やすくメッセージ性の高い作品なので、若い世代(10代、20代半ば)には、どう見えるのかも知りたいですね。

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