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訪問医療マッサージ集客の極意ー2つの営業アプローチ?

2つの営業アプローチ

さて、営業にはいくつか種類があるのはご存じでしょうか。これから皆さんが実施する営業、もしくはすでに実施されている種類をしっかり理解してもらえれば、頭の中が整理され、売り上げ拡大までの最短ルートを発見することができます。「営業」と一言でいっても、何を取り扱うか、顧客は誰か、顧客の年齢、職種によって営業の方法を変えなくてはなりません。「営業」と聞いて皆さんが思いつくのは、ケアマネジャーに訪問する飛び込み営業くらいでしょうか。この介護業界の営業において、確かにベースとなっているのは居宅介護支援事業者や地域包括支援センター、あるいは医療機関への飛び込みでの訪問です。しかし、営業の方法というのは一つだけではありません。さまざまな方法を組み合わせて顧客(患者)を獲得する必要があります。ここでは、その営業方法について説明していきますので、頭の中で想像しながら読み進めていってみてください。
 まず、営業には「新規開拓アプローチ」と「既存顧客アプローチ」の二種類があります。売り上げ拡大のためには、“顧客数を増やす”または“一人あたりの単価を上げる”必要があります。事業としてやるべきことは、単価を上げながら新規顧客を増やすという両軸で考えることになります。また後述しますが、「この両軸で動こうね!」というのが営業戦略になります。

さて「新規開拓アプローチ」とは、新しい顧客(患者)を発見することです。“開拓”という言葉には、エリアや地域を含んでいます。またそこには新規開拓するエリアや地域を選択するための戦略があります。つまり、しっかりと売り上げを拡大するための作戦を練って新たな地域やエリアを決めて営業するということです。

今まで社内の誰も営業をしたことがなく、顧客(患者)獲得ができていない未開拓地を掘り起こしていく「新規開拓」です。すでに地域の居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、医療機関と連携されている訪問医療マッサージは、試しに市区町村で区分けしてみてください。例えば現在どの程度、新規開拓できているか確認するときは、○○市内の居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、医療機関をすべて列挙してすでに患者紹介をいただいたところを蛍光ペンで塗りつぶしてみると、わかりやすいでしょう。そうすることで、「意外にも開拓できていないな……」「あれこんなに連携できているんだ……」など、今まで感覚で判断していたものがより鮮明になります。
 すべての事業所と連携するのは難しいですが、例えばリストに100件あるなら、「20件から毎月お問い合わせがあるようにする」ことをめざすのがいいでしょう。皆さんが列挙したリストの中で、蛍光ペンで塗られていない事業所や医療機関は新規開拓の余地があるのです。

次に、「既存顧客アプローチ」について説明します。既存顧客というのは文字通り、すでに商品やサービスを購入または利用したことのあるお客様ということになります。身近な商品であるスマートフォンの販売や利用で考えると、わかりやすいかもしれません。
 例えば、A社という携帯電話会社を利用している場合は、A社の既存顧客となります。しかB社という携帯電話会社にとっては新規顧客です。先ほど売り上げ拡大のためには“新規顧客を増やす”または“一人あたりの単価を上げる”とお伝えしました。
 新規開拓アプローチというのは、ここでいう新規顧客を増やすということになります。既存顧客アプローチとは、すでにA社の既存顧客である私に対して、追加商品やサービスを販売し購入してもらうための働きかけを行うということです。例えば私は以前の仕事で日本全国へ出張することが多く、たくさんマイレージサービスを利用していたので、既存顧客アプローチを受けたことがあります。名目は「飛行機事故にあった際の無料保険加入サービス」の案内です。しかしそれで終わりではなく、「基本無料サービスだけど、300円払ってもらえたら保証額が増えますよ。ほかにも保証プランもありますよ」という内容が追加されていました。この既存顧客アプローチを、“アップセル”といいます。アップセルとは、すでに商品を購入している既存顧客に対して今の商品よりもさらにアップした商品を購入してもらうためのアプローチのことです。既存顧客に追加のサービスを提案することで、売り上げ拡大に必要な客単価を上げるという行動です。客単価を上げることは、新規顧客を開拓するよりも実は簡単なのです。すでに購入してくれている顧客というのは、あなたの商品やサービスに対しての心理的ハードルが低い状態です。購入した商品やサービスにある程度、満足してもらえていれば、既存顧客アプローチは売り上げアップに効果的な手段なのです。

ここからは、訪問医療マッサージの場合で考えてみましょう。既存顧客アプローチの対象としては、①現状の患者さん ②紹介元の介護事業所や医療機関 の二つがベースとしてありますが、加えて忘れてはいけいないのは、③過去の患者さん です。この三つの患者さんが既存顧客アプローチの対象となります。

①現状の患者さんに対する既存顧客アプローチ

現状の患者さんに対してできるアプローチは三つです。まずは「施術数を増やす」ということです。訪問医療マッサージの顧客単価は、一般に往療料を含めると3,000円から4,000円くらいです。既存顧客アプローチでは、週一回の施術回数を週二回や週三回に増やすことを目標とします。単純計算すれば二倍、三倍に増えるということになので、施術回数を増やすための努力は、企業努力として惜しんではいけません。
 例えば、私の過去の経験から、新規の問合せが毎月20件あるとすると、その半分の10件は離脱してしまいます。10件のうち5件は入院やご逝去といった理由なので、私たちではコントロールできない離脱理由でした。もちろん入院後に再度希望をいただくこともありますが、20件のうちの4分の1である5件は離脱する患者さんがいるということを認識しておかなければなりません。

そう考えると、毎月10件のお問い合わせがある事業所であれば、2件から3件は入院やご逝去があるということが考えられます。また離脱10件のうち、残りの5件はクレーム、他社への浮気、施術内容が気に入らないので単純に辞めたいなどの患者さんが出てきます。この5件に関してが、私たちである程度コントロールができる範囲です。入院やご逝去はどうすることもできない、私たちでは”影響を与えられない”範囲になります。クレームや施術内容の不満など患者さんとのコミュニケーションにかかわる部分は、私たちの自助努力で何とかできるのです。一言でいうならば、「接遇スキル・技術スキルを上げれば、離脱が防げますよ」ということです。接遇スキル・技術スキルを上げることにより、クレームの前兆に気づき対策を練ることができます。

患者さんの性格や生活背景、本当のニーズを探る(ヒアリング)ことにより、患者さんに合った施術計画を検討するなどは、実はお試し施術をする以前の準備段階の話になります。よく考えてみるとわかるのですが、施術前の準備は本当に大切な工程です。例えば病院の手術を思い浮かべてください。執刀する医師を始め手術にかかわる他職種が、手術成功のためのシミュレーションや打ち合わせに、多くの時間を割いていることが医療系のドラマを観てもわかると思います。

私も「木下の介護」で入居相談員だったとき、家族や入居対象者に対して施設の話や料金説明、生活の様子などを説明する商談の際、キーパーソン(意思決定者)は誰か、その場に同席するのは誰か、他の親族がいるか、予算は問題ないか、どんなことを心配しているのかなど、あらゆることを想定して臨みます。手術も商談もそうですが、実際やってみると想定とは違うものです。けれども、あらゆることを想定しておくことで、動揺することなく、臨機応変に新しい道筋を見つけて対処することも可能になっていきます。

ここまで読んで「訪問医療マッサージは、単価が低いしそこまでする必要がない」と思った方は今すぐ事業を辞めたほうがいいでしょう。単価が低いかどうかということは患者さんにとっては関係ありません。また単価が低いというのはこちら側の価値観であって、マッサージ350円、変形徒手矯正術450円を高いと思う方もいます。単価にかかわらず顧客満足度を高めるために準備することはプロフェッショナルとしては当然です。安いから適当でよいなどではかかわった患者さんが不幸になるだけです。

さて、現状の患者さんに対する既存顧客アプローチには施術回数を増やす(「増回」という)提案が、新規開拓するよりも早く売り上げ拡大につながることがおわかりいただけたと思います。注意する点は、増回提案をする理由が、理屈として成り立っているか? ということです。中には以前から増やしたいなと考えている患者さんもいるとは思いますが、単純に「週1回を2回に増やしましょう」では患者さんは納得しません。

訪問医療マッサージは医療保険を使っている「治療」という分野になるので、医学的根拠が必要なのです。 
 例えば、末期がんで体中に痛みや違和感がある患者さんや、そのご家族に対して苦痛緩和のために回数を増やしませんか? というのは理にかなった提案であるのは間違いありません。(医学的根拠があるかどうかは別として)
 提案することを恐れ、断られることを恐れ、ただ何も考えずにルーチンワークをこなすだけの施術には意味がありません。かといって、やみくもな増回提案では患者さんやご家族に寄り添うことはできません。増回は売り上げ拡大につながりますが、それには患者さんやご家族の想いや意見とのマッチングが必要なのです。増回提案は、状況を見ながら必要な患者さんには積極的に提案していきましょう。「嫌がられないかな」など恐れず、「必要かどうか」を考え、まずは提案した上で、その提案を受け入れるか判断するのは本人と家族が決めることなのです。

②紹介元の介護事業所に対する既存顧客アプローチ

前述では、現状の患者さんの客単価を上げるための増回提案策をお伝えしました。ここからは、すでに連携実績のある紹介元の居宅介護支援事業所と地域包括支援センター、医療機関に対しての既存顧客アプローチになります。

連携実績とは、「これまでに患者さんを紹介してくれたことがあるかどうか」ということです。つまり連携先への既存顧客アプローチとは“おかわり”アプローチになります。ただし、おかわりアプローチには注意点があります。例えば、新規の保険を契約したと想像してみてください。今、新規の保険を申し込んだばかりだというのに、新たに次の保険商品を勧められ、さらに他に知り合いがいたら紹介してくれないか? といわれたら皆さんはどう感じるでしょうか。「今、契約したばかりなのに……」と不信感を抱きますよね。

これは訪問医療マッサージに限らず、すべての営業活動において“あるある事例”なのです。今、契約したばかりなのにすぐに“おかわり”を要求することは、患者さんのみならず介護事業所や医療機関からの信頼を失います。苦労して築いたケアマネジャーからの信用と信頼を一瞬で失う行為になるので注意する必要があります。既存顧客アプローチには、タイミングが重要となります。本当によい商品やサービスであれば誰かに紹介したくなるのは人間のさがですから、何もしないのが一番なのです。これは営業の中でも高等技術となります。これまでに実績のある事業所や医療機関には、“おかわり”アプローチをするのではなく“フォロー”をすることをお勧めします。つまり“おかわりください”とは直接いわず、また紹介したくなるように相手の心に働きかけるということです。人は直接的に営業されるのをとても嫌がります。売ろうとすると逃げるし嫌悪感を抱く人がほとんどです。したがって、間接的に紹介したくなるような働きかけ(アプローチ)が必要なのです。

そもそも私たちが居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに訪問した時点で、営業で来たんだなというのは見透かされているわけです。そこで、一工夫必要し「あれ? 営業じゃないんだ」と思わせてみるのです。いい意味で相手の期待を裏切ることが、重要なプロセスとなります。では、何を話題にすればいいのかというと、紹介いただいた患者さんの話をするのがベストです。お互いの共通事項であり、一般的にいわれる営業トークとは別次元の話題だからです。
 ケアマネジャーは、患者さん(利用者さん)が自宅で安心して過ごせるように生活プラン(ケアプラン)を作成する仕事をしています。要支援と要介護により若干ことなりますが、月に1回から2回の訪問が義務付けられています。逆にいうとケアマネジャーは月に1回から2回しか患者さんの自宅へ訪問しないのです。つまりケアマネジャーは、日々変化する患者さんの状態を鮮度の高い情報で把握しているわけではないということです。ですから、ケアマネジャーは訪問介護や訪問看護、そして訪問医療マッサージと連携することで患者さんの新鮮な情報を把握し、日々の業務に活かしているのです。

私たちの役目は、支援に入ったときの細かい変化や情報、気づいたことをケアマネジャーへ連絡・報告・相談し、対処してもらうことです。これこそが“地域連携の意識”なのです。ですから“おかわり”をもらいに訪問するのではなく、患者さんの日々の状態変化に対して情報提供しに行くことが、先ほどお話したベストトークとなります。

③過去の患者さんに対する既存顧客アプローチ

これから開業する方にはあまりピンとこないかもしれませんが、現在すでに開業されている経営者の方には、よくわかるお話をしたいと思います。これまで経営している中で新規で契約した患者さんのすべてが継続しているということはないですよね。ご逝去や入院あるいはクレーム、その他の事由により“離脱”してしまった患者さんがいるはずです。既存顧客アプローチは、こういった過去に契約したことがあるけど、何らかの事由で離脱してしまった患者さんへのアプローチになります。

当社の定義では、過去に一度でも利用した患者さんを既存顧客と定義していますが、過去の患者さんに対しての営業アプローチも既存顧客アプローチと捉えています。なお、一般企業の営業部などではこのような顧客は過去客リストに部類し、過去客アプローチとしての対応になることが多いです。

過去の患者さんデータの保存方法や活用の仕方についても簡単に説明します。データの活用といっても、特別に何かシステムを用意する必要はなく、Excelを使って項目別に患者リスト&管理表を作成すればOKです。これをすることにより将来的に営業範囲を広げていく戦略立案を可能にし、現状の売り上げが上がらない理由を細かく分析できるので開業当初から準備しておくことを強くお勧めします。
 もし今の時点で患者リストを作成していない場合は、日々の忙しい業務の中ですが、患者リストを作成して離脱患者のスクリーニング(選定)をしてみてください。そのリストの中からご逝去以外の事由で離脱された患者さんを対象にお手紙を出すようトライしてください。もしかしたら、数カ月前は他社のほうがよくて切り替えたけども、今は切り替えた先の施術内容に不満を感じている患者さんを捕まえることができるかもしれません。
 また、以前の離脱時はリハビリをやりたくて訪問医療マッサージから訪問リハビリに切り替えたけれども、その後入院したことで寝たきりになりリハビリよりもマッサージがいいなと思っているかもしれません。

また、時代は変化しています。時間が経過すれば状況も変わります。私たちの提供しているサービス内容も変化があるかもしれません。2年前よりも技術レベルが上がっているかもしれません。以前はできなかったことも、今は多くの患者さんの要望に応えられる体制が整っているかもしれません。時間の経過はあらゆる可能性を広げます。どんなによいサービスや商品でも、知らなければ利用することはできません。
 営業とは、知らない人に知ってもらうことから始まるのです。過去の患者さんの掘り起こしは、利用経験から、すでにある程度わかってもらっているため、新規患者さんを増やすよりも少しだけ容易なのです。可能性があるのに、それを実施しないことは経営者の業務怠慢です。訪問医療マッサージを通して患者さんの人生をより良くしたいというのは、どの会社でも同じ共通理念ではないでしょうか。ぜひ過去の患者さんへの働きかけも忘れずに実行していただきたいです。

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