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【SELSHA通信8月号】右脳・左脳・瑪瑙

8月に入って日中の日差しに当たると皮膚がヒリヒリする季節になりました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

私は先日展示会のために広島へ行ってきました。そして平和祈念式にも参加して参りました。今リアルタイムに起きている戦争について改めて考える時間を頂きました。祈念式の中で数名のスピーカーがいましたが、私の心にささったのはやっぱり子供のスピーチです。大人と違ってすべてスピーチ内容を暗記し、まっすぐ前を見つめる眼差しともに、気持ちを乗せて話している姿に本当に心が打たれました。

さて、
今回はいつもと違って、まず先に本を紹介をしたいと思います(^-^)

子供が生まれてから私が食事を担当することが多くなり、いつも買い出しついでにスーパーの上の書店で立ち読みするという習慣が定着しました。先日もいつものように本棚を巡回していたところ見つけたのがこの「完売画家」という本です。なかなか自信満々なタイトルだなと思って手を伸ばしてみた結果・・・立ち読みどころか気が付いたら持ち帰って最後まで読んでいました (笑)

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こうして偶然出会った「完売画家」という本ですが、完売〇〇って、いろんな単語に置き換えられますよね。天然石やジュエリーも。もしかして製作活動されている方にとって何かヒントがあるかもしれませんので、どうぞ最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

本書は4つのパートに分かれています。
1,「職業の画家」
2,「芸術の世界で生きる」
3,「画家の価値を高める」
4,「才能を持続させること、さらなる高見を目指すことについて」


著者(中島氏)は自身も通った美術大教育の問題点を何度も指摘しています。なぜなら、実際に絵描きとして活躍できる生徒は外に出てしまうため、大学にはそうではない生徒が助教授として就職し、その後教授に昇進して学生達を教えるという流れになっている。「絵を売る」ことの実情を知らない人たちばかりが教鞭をとっているせいで、誰も「プロの画家になる方法」つまり「絵でお金を稼ぐ方法」を教えられないのだそうです。


そして典型的な刷り込み。大学では教授に「絵描きは食えない」と言われ、それを聞いている学生は「絵描きは食えない」と思いこむ。
その結果、若手画家は
     「絵で食えないのは自分のせいじゃない」と考え
       ↓
     大学で教えている教授は
     「プロの画家が育たないのは自分のせいじゃない」と考え
       ↓
     画家の絵を販売するギャラリストは
     「絵が売れないのは自分たちの営業力のせいじゃない」と考え

その結果美術業界は「悪循環に陥っている」と問題を提議しています。
本来はどんな仕事でもプロとしてやっていくのはそれなりに大変なのに、刷り込みがそのまま言い訳になっている。販売を目的とした「ハンドメイド」という言葉もある意味そこに置き換えられる気がしました。この本ではそういった固定観念を打破する著者自身の考えや成功事例を紹介しています。

ところで、画家は一日十数時間も黙って絵を描き続けています。私には到底できないことなので、まるで魔法使いが別世界でさらさらと筆を動かしているような感覚です。その魔法が散りばめられたキャンバスは銀座の画廊やデパートで高値で売られている。私にとっては怪しい世界でしたが、この本を読んで少しその不思議な世界に興味が湧きました (^-^)

SELSHAの記事を読んで下さっている方の多くは、何かを製作したり、デザインしていると思います。その中で、収益をあまり気にせず楽しくやっている方や、プロとして事業を大きくしたいと考えている方がいるかもしれません。いずれにしても、関わっている領域の中で専業(プロ)の壁を知っておくことが重要ですよね。

例えば本書では画家のリアルな世界を紹介しています。新人画家が百貨店で展示をする時最初の「号単価」は2~3万円くらいするらしいです。10号の作品(40cm×50cm)は20~30万円になりますが、作家の取り分は3割、つまり6万円が収入になります。(なんでこんなに少ないんでしょうか ?)

そこで考えて頂きたいのは、1人が1ヶ月間で何枚の絵を描けますか?
1ヵ月3枚の絵が描けたとして、1年で36枚。それが全て売れて約200万円の収入になります。都会で暮らしながら製作活動しながら生きていくのはけっこう大変ですよね。この200万円がプロになる画家の一つめのハードルだそうです。

そういう背景があって、著者は「絵描きは食えない」を変えたいというミッションを掲げました。本の中では芸術の世界で生きるためにいくつかの視点を紹介しています。

例えば、絵を売る場所は日本ではギャラリー、百貨店、独自路線の3パターンしかなく、その見極めについて触れています。

これは天然石やアクセサリーを販売する皆さんにも共通していると思います。多くの作家さんは合同のイベントなどに出展するか、商業施設での催事をするか、個展やネット販売などの直販、という3パターンが多いと思います。それぞれの販路にはメリットとデメリットがあり、今いるステージによっても適しているチャネルは異なりますが、大事なのは一度立ち止まって自分にとって本当に必要かどうか少し考えてみた方が良いと著者は主張しています。

20万円の絵が売れても作家の取り分は6万円だと書かれていました。残りの14万円分を取られてでもそのチャネルで売るメリットがあるかどうか?
一点だけでなく売れれば売れるだけ取られるお金も膨大です。そして買う側もその上乗せされたお金を払っていることを自覚した方が良いかもしれませんね。

実は個人的に一番時間をかけて三番目のパート「画家の価値を高める」を読みました。自分の価値も高めたいからです (笑) 色々例を挙げたいのですが、長くなりますのでここでは1つだけ摘まんでみました。

画家の価値を高めるために、「好きを見つける」
「絵がうまくなる」とは、無意識にでも描けるようになることで、そのためには自分で意識的に反復することが重要です。例えば憧れている作品をベースに模写の練習をする。これは料理を作ると同じです。レシピを見て、基礎を学び、それから自分のオリジナル料理を作れるようになる。

絵もオリジナリティーが出せるようになるには基礎を知らないといけない。アブストラクトな印象の強いピカソは天才的にデッサンが上手かったことは有名です。これはピカソが5歳の時に書いた絵です。恐ろしいほどうまいですね。

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守破離という言葉があるように、全ては最初まねることは始まります。まねる対象は当然レベルが高いほど良いのですが、判断軸がまだ曖昧な時はとくにかに「たくさん見ること」が大事です。そうしていくことで段々好きと嫌いが出てくるようになります。

自分の場合に置き換えて考えてみると、SELSHAがこうやって多くの方に支えられているのも、一つは 「SELSHA らしい美意識に基づいたセレクト」にあると思います。 立ち上げ当初は基本的に妻が仕入れをしていましたから、私も妻の真似しながら石を選んでいましたが、それを繰り返していくうちに、今は自分自身のカラーが出てきて、自分自身の判断軸ができました。

そして仕入れに行く時は単に天然石のマーケットへ行くだけではなく、その土地の芸術家の作品やアトリエを訪れ、さまざまなアートを通して自分の好き嫌いを改めて認識した点が、仕事にも大きな影響を与えたと言えます。

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本書の最後にアートで自分の「好き」「幸せ」を見つける。という一文が書かれていましたが、私も暮らしを豊かにしていくために芸術に触れることが必須だと思います。このブログを書いている今日も、近くのアートギャラリーに寄った時、一枚ポストカードを買いました(本当は原画も欲しいと思っています)。
この絵を見た瞬間に星を掴む少年の絵が息子と重なって、大きくなったら自分の夢をつかんで欲しいなという気持ちになりました。息子がリビングに飾っているこの絵と共に成長していき、やがてこの絵の意味を考えるように、そして今の私の気持ちを察することができた時、もっと果敢に困難の壁にぶつかっていくのだろう・・・・なんて妄想しました(笑)

皆さんは絵を買ったりしますか?
どんな絵が好きですか?

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本の紹介で長々と書いてみました、今週オンラインショップに掲載する天然石はピクチャー瑪瑙です。
模様自体は天然ですが、染め分けをすることによって模様が更に際立った、自然と人の共作と言えるようなまさに「アート」と言える石です。切り取る場所によって色々な景色に見えたり、受け取り手によっても見え方が変わるのが面白いですし、ジュエリーにすれば、身につけらる最小サイズの芸術とも言えるかもしれません。

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今回掲載するルースは砂漠を思わせるような風景が多いので、いくつかだけですがレーザーカービングでキャラバンを彫ってみました。ありありと砂漠の景色が目に浮かぶのでではないでしょうか! これはかつて私が30歳を目前に脱サラして中東のアブダビに行った時、初めて砂漠を見て全身で喜びを表現した写真です(笑)

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模様の綺麗なメノウが気になるけど、できればすぐ使えるジュエリーが良いという方はこちらも覗いてみてください。
夏はこんなカラフルなジュエリーが映えますね。

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最後まで読んで頂きありがとうございます。
ご感想ご意見がありましたらぜひ #selsha1114でつぶやくか
直接DMして頂いても構いません。
ではまた来月にお会いしましょう(^^)/





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