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半導体業界はやめとけ・半導体就活のエンジニアはヤバい

半導体業界に就活や転職を考えている人向けの記事になればと思い執筆します。
実際に半導体業界への就職がヤバいかどうかの参考になればと思います。
ただ半導体業界といってもかなり広いですが、ここでは半導体製品メーカーのエンジニアの内容を取り上げます。
例えば日本では、NANDの半導体メモリを生産しているキオクシア(KIOXIA)やマイクロン(Micron)などをイメージしてもらえればと思います。
最近は下記のようにこういったメーカーへの助成などが行われていることから、経済系のニュースなどで見かけることもあるかもしれません。

経済産業省 半導体・デジタル産業戦略 関連資料

1. 半導体エンジニアの求人は増加中

半導体のエンジニアの求人は全体として増加傾向でしょう。半導体不足によって半導体への注目の高まりや工場の建設もこれを後押ししています。
現在は人手不足で業界未経験歓迎という求人もそれなりにあります。
待遇も中小企業と比較すれば、高い水準にあります。
半導体メーカーに入りやすい時期ということができるかもしれません。
では、その半導体業界とはどういうものでしょうか?

2. 半導体業界は種別で好不況が激しい

シリコンサイクルといわれることもありますが、半導体業界は数年おきに好況と不況を繰り返します。
半導体不足の話を聞くことがあるパワー半導体といった自動車用の半導体は、自動車やEVの進歩によって、2023年でも不足気味です。
一方で、スマートフォンやパソコンに使われるロジックやメモリという半導体は過剰生産気味です。特にメモリは在庫が多くなり、減産中です。
在庫が過剰になると、売るために製品の値段を下げることになり。業績が赤字となることもあります。そうなると、人員削減、つまりリストラも起こることも念頭に置く必要があります。
例えば上であげた、マイクロンは2022年~2023年に人員削減を行ったと報じれられています。キオクシアも2023年秋に早期退職を募集すると報じられています。
半導体業界は市場の成長率が高いと注目されることも多く、今後も長期的に見ると市場の成長率は高いでしょう。一方で数年単位で見ると生産調整や縮小も迅速に行われます。今後も素早い期間で落ちる時はドンと落ち、人員も減らされることを覚悟しておくべきです。
また好況、不況の波が入れ替わる頻度が早いわけですが、不況の時は大変です。例えば残業時間の規制で、仕事の量はほとんど減らないけど、残業時間が減らされるということが起こります。そうなると個人の成果を上げにくくなったり、目標を達成しづらくなったりします。また残業時間が減らされることで、残業で稼いでいる人は収入も落ちるでしょう。
また会社の業績が悪いとボーナスも減らされることになります。不況のときはボーナスまで含めると年収が、他の業界の同年代より何十万円も低いかもしれません。

3. 半導体業界は技術サイクルも早い

半導体は食品などと違い、例えば1年倉庫で保管しておいても在庫が腐るというようなイメージはないと思います。つまり減産せずに一定量を生産続ければいいのでは?という疑問を持つ人もいるでしょう。
これの1つの問題が技術世代の問題です。
例えばiPhoneが代表的でニュースでも見かけますが、iPhoneは年に1回程度の頻度で新作が出ています。iPhone15などのようにです。当然、iPhoneの性能は新作が出るたびに向上していますが、そのためには使用される半導体の性能も向上していることでしょう。
つまり、1年前に生産した半導体は性能が低く使い道がないということになってしまい、結局売れ道がなくなるのです。
結局、作れば作る分だけ赤字になるなんてケースも起こりえます。
これは脚色している極端な例ですが、技術サイクルが早いということは、増産や減産の生産調整が行われやすいということにも繋がりやすくなるといえます。

4. 半導体エンジニアは激務になりがち

半導体エンジニアは残業が多い、休日出勤があるなどの激務になりがちな職種といえるでしょう。
もちろん採用後にどういった職種に採用されるかによって、ある程度は左右されるでしょうが、激務になることには理由もあると考えるべきです。
その1つには生産工場が24時間365日稼働するということが影響していることでしょう。
半導体の製造は自動化されており、24時間生産が続けられますが、だからといって無人とはいきません。
例えば機械の異常で製造装置が止まってしまうこともあります。そうすると、生産している半導体に不具合が生じてしまうため、人がマニュアルで対応します。こういう場合は通常は工場のシフト勤務の方が対応します。ただし、事態が深刻な場合などは、通常のシフト交替勤務でない半導体エンジニアに連絡がいくこともあります。そうなると、夜間や休日にも連絡が来て、対応をしなければならないという働き方になってしまうことが想定されます。
当然、ワークライフバランスを維持することが難しくなるという人も出るでしょう。

また、シフト勤務の場合には夜勤があることがあります。夜勤は合う人と合わない人がいるため、一概に激務に繋がるとはいえませんが、夜勤が辛い人からすると、夜勤がある職種も激務と感じるかもしれません。

5. 平均残業時間などが参考にならないかもしれない

多くの会社でも部署ごとに平均残業時間が全然違うため、配属によって平均残業時間があてにならないケースは多くあります。
ただし、半導体工場は24時間稼働のため、さらに違いがあるといえるでしょう。
24時間営業のコンビニバイトなどを想像してもらうといいですが、シフト勤務の場合は交替があるため、引継ぎの必要はありますが、一方で残業はそこまで多くはならないケースも多いです。
つまり、社員全員で平均するといわゆる日勤者の残業時間が多くても、シフト勤務者の残業時間はある程度少ないため、平均としては残業時間が短く計算されるということもあるかもしれません。
就職や転職を考えるならば、実際に働いている社員などに聞かないと、求人サイトや口コミサイトで公開されている情報だけでは、イメージと大きな食い違いがあるかもしれません。

6. 海外企業の技術力とシェアに勝てない

最先端のロジック半導体は、台湾のTSMCや韓国のサムスンが生産しており、日本はこの技術力をもっていないことは頻繁に報じられるので、知っている人もいることでしょう。
実際には、北海道で量産に向けて立ち上げが始まっているRapidus (ラピダス) が、この10nm未満の半導体の量産を行おうと動いていますが、少なくともまだ今の時点では、その技術力には追い付いていないことが現実です。

各半導体を見ても、日本メーカーが一人勝ちしているような業界はないということがわかります。また、台湾、韓国、米国、欧州なども半導体の重要性を認識し、各国や地域が政策として、日本と桁が違う規模の支援をしていることも認識しておく必要があります。
今後も企業シェアが変動することが予測されますが、海外勢に勝ちシェアを高める可能性も、技術力で負け、シェアを失うリスクも予測する必要があります。
またシェアや技術力が低いと、半導体の需要が高い時は業界のトップの方が利益が大きく、半導体の市況が悪化した時は競合他社より赤字が大きくなりやすい傾向があります。社員としては苦しい思いをすることになるかもしれません。

ちなみに、半導体製造装置や半導体素材などは日本がいまだに強いといわれています。まだ世界においても日本の存在感はあるといえるでしょう。

しかしながら、一部の市場では日本がすでに負けている市場もあります。露光装置は有名で、最先端のEUV露光装置などはASMLしか生産できる技術力をもっておらず、ASMLが圧倒的な存在感をもっています。
また生産に必要なCVDやスパッタ、エッチングなどでも、AMATやLamといった海外メーカーが存在感を示しており、日本の企業として有名な東京エレクトロンなども安泰とは言い切れないところがあるかもしれません。

必ずしも悲観的な予測だけをする必要はなく、今後日本のメーカーや日本のエンジニアの技術力が世界で存在感を示す予測も悪くはありません。
しかし、就活や転職をするなら、半導体で今後、数年どころか、十年以上にわたって半導体の技術や経験で生きていけるようになるかも、予測しながら就職先を選ぶべきでしょう。
もちろん断言や明言はできませんが、海外の半導体メーカーは、自国での生産や、より政府支援の多い国へ生産を移し、日本からの生産撤退が起こるということも将来的にはあるかもしれません。

世間一般の認識として日本の半導体製品の生産の技術力はヤバいや、海外勢に勝てないという部分が通説といえそうですが、今後の予測も踏まえながら業界研究に取り組む必要があるでしょう。


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