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アンドロイド転生240

エリカがリペア室から悠々と去った後、リョウは暫く呆然と立っていた。漸く深い溜息を吐いて崩れるように椅子に腰を下ろした。エリカの提案は取引という名の脅迫だった。

サキの裸の隠し撮りを黙認してもらう代わりにエリカの密告を忘れる…。リョウの顔が強張った。俺が…人間が…アンドロイドに脅されるなんて…!怒りが込み上げデスクを何度も叩いた。

サキの事は昔から好きだった。でも俺みたいな見た目もイマイチなパソコンオタクなんて相手にしてもらえないのは分かっていた。思い余って得意な技術でこっそりサキの入浴を撮影した。

悪い事をしているのは重々承知だ。止めようと思っても止まらなかった。サキは想像以上に綺麗だった。映像を見るたびに興味と好奇と嬉しさと後悔と申し訳なさでいっぱいだった。

リョウの唇が震えた。畜生!エリカにバレるなんて…!いや、そもそもイヴがバラしたんだ。
「イヴ…。なんでエリカに言ったんだ…?」
『隠し撮りは罪です』

そんなの重々分かっている。やはり罪は暴かれるものなのか。ああ…!畜生…!リョウは頭を抱えた。リペア室の扉がスライドしてタカオが入ってきた。リョウがいるのを見て瞳が輝く。

「何か分かったか?」
リョウは顔を上げた。タカオはサツキの救出劇には密告者がいると思っている。エリカだと言うわけにはいかない。自分を守る為だ。

リョウは息を吸い込んだ。
「ランドラボの電話の…通話記録を聞いたんだ。やっぱり外部からラボに密告があった」
「俺にも聞かせろ」

リョウは残念な顔をした。
「ランドラボの通話記録は24時間で消去される。俺が聞いて直ぐに消えたんだよ」
「復元は?」

リョウは頭を横に振った。
「出来なかった。イ…イヴも出来ないってよ」
タカオは舌打ちをする。
「そうか…。どんな奴だった?」

リョウは唇を舐めた。
「中年の男だった。聞いた事もない声で誰か分からない。履歴を探ったんだが…か、海外を何本も経由していてダメだった」
「くそ…!」

リョウは愛想笑いをした。
「と、兎に角よ?ホームの誰かが密告したんじゃないから良かったな」
「ホームの?まさかお前はホームに密告者がいると思ってたのか?」

リョウは慌てて首を振った。
「いるわけないよな。そうだよな」
タカオは笑った。
「当たり前じゃないか」

なんだ。タカオはこれっぽっちもホームの誰も疑っていなかったのか。なんてお気楽なんだ。実はエリカだと知ったらどんな顔をするだろう。あんたが思うほどアンドロイドは純粋じゃないぞ。


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