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五島列島の美しい風景に心癒される『ばらかもん』は良質なヒューマンドラマです

杉野遥亮主演の夏ドラマ『ばらかもん』。今後のストーリー展開は初回で何となく読める感じだったように思います。

でも都会育ちの青年書道家が島の人々との心の交流を経て、人間としても書道家としてもどんな風に成長していくのかを見守っていきたくなる良質なヒューマンドラマだと感じました。

杉野くんを初めて認識したのは『ミストレス~女たちの秘密~』というドラマで、長谷川京子と対峙するかなり難しい役どころでした。目のキレイな美少年といった雰囲気でとても印象に残りました。

その後の大活躍ぶりは皆さんもご存知かと思いますが、個人的には『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』のかわいいヤンキーぶりがお気に入りでした。

今回の半田清舟役は書道だけに全てを捧げてきた孤高の青年で、杉野くんにピッタリかと思います。

家元の後継ぎとして恵まれた環境のもと生きてきたけれど、それゆえのプライドの高さが今回の挫折につながってしまったわけですよね。

ある賞を受賞したお祝いの席で、美術館の館長から「まるでお手本を見ているかのような、実につまらない字だ」と言われて激昂。館長につかみかかってしまい、父から「書道家の前に人として欠けている部分がある」と言われ、五島列島へ修行へ出される…という展開でした。

この館長さんの言葉。耳が痛いというか、様々な芸事、スポーツ、手に職をつける仕事…そういった類いのモノ全てに通じるのではないかと思います。

何事も”基本”が大切と言われ、迷ったら”基本”に立ち返ると思うんですよね。でもそこから自分なりの”何か”を見つけて、自分だけの世界観をアウトプットしていくことが必要で。

”基本”はもちろん大切だけれど、それだけでは人の心をつかむような、心を揺さぶるような”何か”を残すことは難しい。でも誰でもそうしたいからこそ、一つの道を追いかけ極めたいと思うもので。

清舟も子供の頃から当たり前のように父に書道を習い、父の背中を追いかけ、ただ脇目もふらずひたすら書道に打ち込むだけの人生を送ってきた。

だからこそ「つまらない」と言われる字しか書けないのだと自分でも薄々気づいていたのかもしれませんね。その行き場のない感情を自分でも持て余してしまい、館長のあの言葉きっかけで爆発させてしまったのではないかと思います。あの怒りは自分自身に対しても…だったかと。

書道の世界も実際オリジナリティ溢れるカラフルな書とか字体とか、昔とは違う世界観に溢れていますからね。

そういったモノを生み出すのも一つのやり方だろうし、あくまでも”基本”に忠実でありながらも、そこを越えた”何か”を表現している書というのも存在するはず。恐らく清舟は後者を目指していくのかなー?と勝手に想像してみています。

第1話のラストに清舟が書いた「楽」の一文字は、ただ無心で書くことを楽しめた気持ちがこちらに伝わってくるような素敵な書でした。

人間あれこれ悩んでいる時ってなかなか上手くアウトプットできないものですよね。迷いがふっ切れて、これが自分だー!と自信を持てた時に初めて自分も周りも納得できる”何か”が生まれるものだと思います。

島の人々はみんな明るくていいキャラクター。自由奔放な彼らとの出逢いで清舟の人としての魅力がどう開花していくのか、彼の書がどう変化していくのか、非常に楽しみです。

今年の夏ドラマ、なんだかんだ面白いの盛りだくさんで睡眠時間が削られてます(笑)。noteにもドラマ感想文増えそうな予感がしています。お付き合いいただければ幸いです!

【2023.8.9 追記】
なんと、清舟の書いた「楽」の字がすごいことに!!

「第40回記念産経国際書展」(産経新聞社ほか主催)が14日から、東京・上野の東京都美術館で開かれ、放送中のドラマ「ばらかもん」(フジテレビ、水曜午後10時)に登場する主人公の書道家、半田清舟(せいしゅう)が書いた「楽」の書が展示される。


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