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『ウェディング・ハイ』は「バカリズム・ワールド」が十二分に堪能できるコメディ映画です

昨年公開されたコメディ映画『ウェディング・ハイ』は脚本があのバカリズム。絶対に面白くないわけがないと劇場に足を運ぶ予定が、結局行けずじまいでした。

『王様のブランチ』の映画コーナーで、コメンテーターのLiLiCoが「いつも二枚目の岩ちゃん(岩田剛典)と向井くん(向井理)がこんな風に使われるのはあり得ない!」というようなことを言っていたので、実はそこに一番興味があった感じでしたかね(笑)。

大好きな中村倫也くんが出演しているのも、もちろん大きかったわけですが!

そろそろケーブルテレビで放送されないかどうか待ちに待っていましたが、先日その願いが叶いました。

注:以下、ネタバレが含まれるのでこれから観る予定の方は読まない方が純粋に楽しめると思われます。それから超長くなってしまったのでご了承願います!


結婚式までの道のり

映画の前半戦は「結婚式あるある」エピソードの連続で、バカリズムにしては珍しく少し退屈な滑り出しでした。

「結婚式は、新郎新婦にとって人生で一度きりの特別なイベント」。実は結婚式に気乗りしていなかった中村倫也演じる彰人と、バリバリ結婚式に命をかけていた関水渚演じる遥のカップルも、“最高の1日“にすべく念入りに準備を進めていました。

結婚式当日までに喧嘩するカップルは7割。その一番の原因は「夫のいい加減な態度」(笑)。一から百まで決めごとだらけなので、徐々に男性が面倒臭くなっていくのは仕方がないことかもしれません。

自分たちの結婚式の時も、なるべくお金をかけないために″席次表″など手作りできるものは手作りをし、主に妻である私が準備に一人奮闘していたことを懐かしく思い出しました。まぁ、結婚式は“妻のためのもの“という世間一般の認識なので、仕方がないと割り切って私はやっていました。

彰人が高校時代の友人たちに余興のお願いをするため、とあるバーに集合しました。その日が初対面のマスターだったのに、お祝いのウィスキーのボトルをプレゼントされ、話の流れで結婚式にまで招待することになってしまった頃から少しずつ「バカリズム・ワールド」にエンジンかかり始めた感じでした。このマスターの「投げ縄」のテクニックが後に重要な役割を担うわけです。

披露宴におけるたくさんの決めごと

披露宴の乾杯の挨拶・主賓の挨拶・スピーチを誰にお願いするか?
余興は誰にどんな内容をお願いするか?

ほぼここら辺で披露宴の雰囲気は決まりますから“重要決定事案“ですよね。この映画もここが大きなポイントになっていきます。

「主賓のスピーチ」は、彰人は会社の上司、高橋克実演じる財津にお願いを。遥は高校時代の恩師、片桐はいり演じる樋口先生にお願いしました。

「乾杯の挨拶」は遥の会社の上司、皆川猿時演じる井上に。映像担当は彰人の後輩の中尾明慶演じる相馬にお願いをしました。

余興についてはそれぞれ高校時代の友人に和太鼓演奏・ダンスをやってもらうことに。さらに、尾美としのり演じる彰人の父・紀夫はマジックを披露したい!六角精児演じる遥の父・大造はマグロの解体ショーを披露したい!この2人はめでたく余興に採用されたものの、池田鉄洋演じる彰人の叔父・充が「縄抜け」を披露したい!という希望は却下され…。まさか、却下されたにも関わらず結婚式当日念のため縄を持参して行くとは。そして、その縄も最後に大活躍することになります。

大混乱の披露宴

ちなみにこの映画「どんな要望にもノーを言わない」をモットーとする敏腕ウェディングプランナー中越を演じる篠原涼子が主演なんですが、脇役の方たちの熱演が光りすぎて残念ながらそれほど目立ちませんでした。

2人の結婚式は滞りなく終わり、いよいよこの映画の本題である披露宴へ。

まずは「新郎新婦の紹介VTR」。相馬は映像制作会社に就職したものの「町ブラロケ」中心のバラエティ番組の撮影担当しか任されず。本当は映画監督になりたかった相馬は、2人の紹介VTRで久しぶりに自分の作りたい世界観の映像を表現できると気合い入りまくり。

2人とはまったく関係のない役者が演じる恋愛映画を作り上げてしまったものの、会場からは感動の拍手喝采。一人喜びを噛み締めました。

彰人の「主賓のスピーチ」を任された財津は、キャバ嬢と遊んでいたことが家族にも会社にもバレてまさに人生のどん底。自分の名誉回復のためにこのスピーチに向けて万全の準備をしてきました。

「人生のターニングポイント」だと意気込んでいた財津の願い通り会場を笑いの渦に巻き込み、本人も大満足の結果に。

「乾杯の挨拶」担当井上は、目の前で大爆笑をかっさらっていった財津へのライバル意識むき出しに、負けじと笑いを誘って本人もご満悦。

この時点でなんと披露宴は1時間押し。次の披露宴も入っているために時間延長は難しい状況。でも、彰人と遥はカットしないですべての余興をやれないかと敏腕ウェディングプランナー中越に懇願します。

そこで中越はこれ以降の各イベントの時間短縮、余興を同時進行で行うという暴挙に出ます。

「ケーキ入刀」は写真撮影タイムもそこそこにほんの数分でさっさと終わらせ、樋口先生のスピーチは「先生からは一点だけ。幸せになってください」で終わり。コース料理はまとめて一つのプレートで提供。お色直し後の「キャンドルサービス」は2人がトーチを振るとすべてのテーブルとメインのキャンドルに一気に火を灯すというマジックのような演出に!

彰人の友人の和太鼓演奏と、遥の友人のダンス、彰人の父・紀夫のマジック、遥の父・大造のマグロの解体ショー…この4つを同時進行で行うという綱渡りの余興タイムに突入!この奇跡のコラボはダイナミックで迫力があり、心躍るかつて見たことのない余興シーンになりました。個人的にはかなり感動しました!

残すは「両親への花束贈呈」のみに。押した時間は無事に取り戻せたものの、マジックで消えた遥の父・大造が行方不明に。その後何とか大造が見つかり、花束贈呈も無事に終了。大盛況のうちに彰人と遥の披露宴は幕を閉じました。

披露宴裏で起きていた事件の全貌

映画はここから披露宴の裏で起きていた事件の怒涛のタネ明かしへと進みます。これ以降はおかしくてずっと私は大爆笑でした。

実は遥の元カレ、岩ちゃん演じる裕也が映画『卒業』のように遥を強奪するため結婚式会場に乗り込んでいました。でもそのタイミングを何度も逃すわ、温泉旅行先で食べたカキにあたってお腹の調子がすこぶる悪く、トイレに何度もかけ込むわでいいとこなし。その途中で怪しげな男を発見。

それが向井くん演じる脱獄犯でご祝儀どろぼう・澤田。澤田は彰人の着る予定だったお色直しのタキシードに着替え、まんまとご祝儀を盗みました。ご祝儀袋をタキシードのポケットに隠したものの、落としたところを裕也に見つかり追いかけられるハメに。

イケメン2人の披露宴裏でのこの攻防が、披露宴をこなしている彰人や遥・スタッフたちの動きと見事にシンクロして、これこそまさに「バカリズム・ワールド」!バカリズムのこういう伏線回収はもはやお約束。しかも、それはそれは相変わらず見事でした。

最後の最後に、余興のメンバーに選ばれなかったのに万が一のため「縄抜け」用の縄を持参していた彰人の叔父・充の持ってきた縄が活きてくるとは!

裕也の「ご祝儀どろぼうだーっ!捕まえてーっ!」という声に応えたのが「縄投げ」名人のバーのマスター。見事な腕前で澤田を縄で捕らえ、裕也は澤田の顔面を自分のお尻で押さえました。

実は澤田を追いかけている間にトイレに行けなかった裕也は大きい方を…お漏らししていて…。

澤田は裕也のお尻の臭いに耐えきれず気絶してしまうというオマケつき。このシーン、岩ちゃんもですが向井くんの三枚目ぶりがとにかく面白すぎました。この時LiLiCoのあの言葉がよみがえりました(笑)。

映画のエンディングと感想など

裕也が温泉旅行に一緒に行った友人の元に帰り、強奪計画は中止だと告げます。「やっぱり人のものは取ったらいけないよね」と、友人たちに言われた言葉。裕也と澤田に向けられたその言葉がオチの一つになりました。

裕也が澤田を捕まえた時にバーのマスターが裕也に引き出物をあげたのですが、その引き出物が「2人の名前入りの男物のパンツ」。普通なら一番“使えない“引き出物が裕也にとっては今何より必要なものだったという大オチでした。

前半戦のスローな展開から、時間押しの披露宴、押した時間を取り戻すべく怒涛の展開にヒートアップしていくそのジワジワ盛り上がっていく様はまさにジェットコースターのようでした。さらにそこから披露宴裏の事件のタネ明かしですべての伏線回収。笑いの要素も少しずつ増えていき、最後には大爆笑。バカリズムならではのコメディ映画としてしっかり楽しめる内容になっていると思います。

映画のタイトル『ウェディング・ハイ』は敏腕ウェディングプランナーの中越が髪を乱しながら時間内に披露宴を終わらせるために奮闘する姿を表現しているわけですが、「ランナーズ・ハイ」ならぬ『ウェディング・ハイ』。そのタイトルもバカリズムのセンスが光っていますね。

結婚式って誰にとってもドラマティックなものであり、改めて人生における大切な1日だと感じました。

こんなに長く書くつもりはなかったのですが、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!

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