見出し画像

文次の手紙#10

政次様

拝啓 内地も緑したたる初夏の候となった事と思います。その後、皆様にも変わりなく元気でお働きの事と思います。僕も益々元気に軍務に励んでいますので他事ながらご安心の程を。

すでに内地の夏の盛りを思わせる頃にて、毎日焼ける様な日が照ってます。しかし外にいればとても暑くてたまりませんが、木陰に入ればすずしい風が吹いて汗が一度に引いてしまう様です。

当地はすでに田植えも早くから終わって青々しい稲が日増しにずんずんのびています。土民【※1(原文まま)】が田のあぜに立ち、くわをかたげて、悠々とたばこを吹かしている姿はいかにも大陸的なのんびりした眺めです。

分隊に入り、目下○○駅(原文まま)にいますが、教練等はなく、毎日警戒の勤務についていますので、前よりはよほど楽になりました。付近には土匪【※1(原文まま)】も相当いるらしく夜間に立哨すると時々、敵の銃声も聞こえますが、敵襲を受けるようなことはないと思います。大したことはありません。

象ちゃんもすでに家に帰られ、くわしい話は聞かれた事と思います。家にいられるならよろしくお伝えください。

昭人も今年から入学して毎日元気で学校に通っていることでしょう。
豊子が雑誌を送ってやっていました。
今度慰問袋を送ってくださるなら忘れないよう万年筆も入れてください。前の手紙に書いたように、またなくしたのでできるだけ早くお送りくださるようお願いします。

では時節がら健康に注意ください。


下士官志願も候補者の集合教育があるはずですが、いまだ何も達せられていません。いずれ分かったら詳しくお知らせします。

昭和15年5月15日

文次より

【※1(原文まま)】現地の部族

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?