見出し画像

等速が止められない、空を切る手。

誰にも見えない透き通る刃物、
僕の内の"何か"が握った。
不自然に無痛の感覚。
切りつけ傷つく裂け目から、
僕が"僕"から剥がされていく。
乖離、乖離、乖離……
宙に浮いた裂け目、空白、
僕等の間。
"僕"は知らないふりをした。

"僕"はもう僕ではなく……
つまり今は"君"だった。
君を僕は捕まえることができなくて、
空を切る手。
一人の感覚が剥がれていく、
二人になる、
二人のまま離されていく、
僕にしか感じない速さで。

君から僕が失われていく確実性、
君は無情に無表情。
僕は君だ! 僕は君なのに!
不自然な恐怖、狂える"僕"が不在なまま、
その男は歩き出す。
要らない"滓"は道路に置き去り。
崩れ始める概念、
ああ、"僕"は一体誰なんだ。
蒼く霞むコンクリート、
絶叫は反射せず。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?