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プラネタリウムのふたご

『プラネタリウムのふたご』(文庫)

いしい しんじ(著/文) 発行:講談社


ちょうどこの小説を読み返す前に読んだ
「世界は贈与でできている」を体現しような物語です。

読む人によっては悲しい物語かもしれません。
でも、この物語に出てくるすべての登場人物が
誰かの優しさに触れ、とても幸せな人たちに思えます。
目には見えない、誰かを想う優しさが
巡り巡って世界は創られているのだなと
心がじんわりと温かくなりました。

プラネタリウムで見つかったふたごは
解説員の「泣き男」に育てられます。
星のめぐりや夜空に広がる神話、
毎日6回の投影を聴きながら育ったふたりは
とあるきっかけで、別の道を生きることになります。
ひとりは手品師、ひとりはプラネタリウムの解説員。
どちらも、生命を維持していくには
必要な職業ではないかもしれません。
でも、どちらも心を豊かに「幸せな」人生を
おくるには大事な仕事です。

本文中にはこんな言葉が出てきます
《だまされることは、だいたいにおいて間抜けだ。
 ただしかし、だまされる才覚がひとにないと、
 この世はかさっかさの、笑いもなにもない、
 どんづまりの世界になってしまう》

手品は種がある。
種があるとわかっていながら
魔法のような出来事に胸をワクワクさせられますか?
プラネタリウムの星たちは
本物の星のきらめきはないかもしれない。
でも、座席を倒して見え上げた夜空に
物語を見出して、うっとりと見つめられますか?

お客様を楽しませたい!という
手品師や解説員の本気の仕事と心意気。
純粋にそれを楽しもう!という受け手の
心持ちが、人生を豊かにするのだと思います。

そう、誰しも幸せになるには
SENSE OF WONDERを感じる心が
必要なのかもしれません。

人生、悲しいことも、思い通りにならないことも
やりきれないことも起こります。
でも、誰かの目には見えない無償のやさしさが
巡り巡って世界を創っているのです。
大事なことって、目に見えないものの方が
多いのではないでしょうか?
それに、気づくか気づけないか。
『幸せ』ってそういうことじゃないかな。
そんなことを教えてくれる物語です。

サガちゃん


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