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新宿性活動

 今日も新宿歌舞伎町では“性活”が行われている。下品なネオンに彩られた箱の中で、男女がぎっしり、性欲の消費を行っている。人間の3大欲求は、様々なエネルギーの源になる。性活を行う二時間4000円の箱の周辺では、金を絡めた性活を行う者、性活を誘うために鼻の下を伸ばす愚かな男、それを手玉に取る見た目だけ美しい女。この街のどこが華やかなのか。皆必死で自らの欲求を曝け出し、普通ではないエネルギーのやりとりが行われている街が東京だ。この街では、人間をつなぐエッジとして、原始的な欲求が最も大きな要素を占める。言い換えれば、この街において、人間関係は原始的な欲求の利害関係で成り立っている。電車の中で睡眠欲を満たし、小さな飲食店にギュウギュウになって、汗をかきながら食欲を満たす。皆規格品のようにまるまる太って同じ体型で、型番なんかついてるんじゃないかってくらいに個性が均されている。僕はそんな街を、心理的に距離を置きながら通り過ぎていく。幾人かに声をかけられても、僕は怯えた目を真っ直ぐに突き刺すのみで、背筋を曲げたまま歩みを止めない。内股で不細工にへしゃげたニューバランスで、薄汚い街に足跡を残していく。“私”はこの街に適応できていないのか。はたまた、私の感性が正しくて、この街が異常なのか。私は奴らを羨みはしないように、奴らも私を羨んだりはしないだろう。私の正義は、新宿の街との対立で追い込まれ、そして際立った。汚れている気がする都会の夜風が吹き、私は息を細めた。新宿駅の入り口をくぐったあと、丸ノ内線のアイコンを確認して、ハンチング帽のつばで視界を覆った。

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