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No.23 懐かしい義母との恋バナの思い出

夫の両親は、間違いなく私に大きな影響を与えた人達だ。
あれほど愛情深く、というより、きっと、その深い愛情の伝え方が、
人としての在り方が温かかったのだ。
本当に、もっともっと一緒に過ごしたかった。

夫の両親はとても仲がよかった。
いつ見ても幸せそうで、寄り添い、支え合い、そんなカップルだった。
義父が義母にぞっこんで、義母に告白し、義母はずっと愛されてきたのだろうな、そう思っていた。
ある時までは。

その年も、夫の家族に会うために、私達一家はアメリカを訪ねた。
子供が幼稚園に通い始めたくらいから、
夫の「夏の方が楽しいことがたくさんできる」という考えから、
クリスマスではなくて夏休みに帰省するようになった。
いつも義両親の家に滞在させてもらい、お世話になった。

ある時、なんの話からだろう。義母が義父との馴れ初めを話し始めた。
義父は義母よりも二つ年上で、二人はルイジアナ州で生まれ育ったそうだ。
義母が小学校六年生で、義父が中学校二年生の夏、
子供達は近くにある池で泳いだり、水遊びをして暑さをしのいでいたらしい。
池と言ってもおそらくかなり大きいもので、きっと日本人なら湖と呼ぶサイズのものではないかと勝手に思っている。
アメリカ人と日本人の私とは、色々とサイズ感の認識に違いがあることは、既にいくつかの経験から知っていた。
まあ、そんな話はいいとして、
その池はかなり深い箇所もあり、岸から離れたところには浮島もあったらしい。

少女だった義母も水に入り、泳いだりして楽しんでいた。
そしたら突然深みにはまり、足が届かなくて慌ててしまい溺れてしまった。
「ちょっと危なかったのよ。本当に」
そう言っていた。

それを見た義父が池に飛び込み義母のところまで泳いで行き、義母を水面より上に抱え上げた。
義母の溺れたところの水深は義父の身長より深く、義父自身は全身が水面下に潜っている状態。
その状態で、義母の顔を水面より上に保ち、義父自身の顔が外に出るまで水の中を歩いたということだった。
本当か?! 義父すごい。ヒーローじゃないか。と思いながら聞いていた。

「多分あの時に恋に落ちちゃったのよね、わたし」
義母は確信に満ちた顔でそう言った。
その出来事からどのくらいの年月が経ってからなのかは知らないけれど、
ある時、義母の友人が
「わたし、ダンのことが好きなの。告白してみる」
と言ったそうだ。ダンは義父のニックネームだ。
義母は内心穏やかではなかったみたいだけれど、友人には
「あら、そうなのね」と涼やかに答えたらしい。
「で、彼女がダンに告白して、振られちゃったの」
「その時思ったのよ。よし、次は私の番だわ、って」
そして義母は義父に告白し、二人は付き合うようになったそうだ。
私は、きっと義父も義母のことが好きだったに違いないと思っている。

「それでね、しばらくお付き合いをしていたのだけれど、ダンは大学に通う為に町を出たの。私は会計士になってそのままルイジアナで仕事をしたの。離れ離れの時もあったのよ。それでね、うふふ。
ある時、ダンが帰って来て、突然言ったの。
『ベティ! 結婚するよ!』って。ふふふふふ」

なにそれ! 私は義父の方が義母に、ずーーっとぞっこんだったと思っていた。いや、それは確かだし事実だ。間違いない。
しかし、始まりは義母からだったとは。
義母は積極的ガールだったのか……ちょっと驚いた。

まだ義両親が元気だった頃、義母は私はこう言った。
「私ね、もしダンに何かあったら、多分一週間はもたないわ。
 私も直ぐに逝っちゃうと思う」

義母にとっても義父は大切な存在だった。
それはそばで過ごしていて伝わってきた。
でも、小六の少女だった時から変わらずに、ずっとずっと義父のことが大好きだったのだなぁ。
そんなに長く両想いなのか……
義父はずーっと義母のヒーローだったんだ。

お義母さんともっとたくさん話したかったな。

今日も幸せな一日でありますように。

Love & Peace,

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