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【映画】PERFECT DAYS

役所広司さん主演の映画です。
ネタバレ注意です。

昨年、『林修の初耳学』にゲスト出演されていたのをたまたま拝見し、チャーミングで魅力的な方だなと思い、今回この映画を観てみたくなりました。

あらすじ
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山(役所広司)は、変化に乏しいながらも充実した日々を送っていた。同じような日々を繰り返すだけのように見えるものの、彼にとっては毎日が新鮮で小さな喜びに満ちている。古本の文庫を読むことと、フィルムカメラで木々を撮影するのが趣味の平山は、いつも小さなカメラを持ち歩いていた。

出典:シネマトゥデイ

役所さん、ほぼ喋らず。話しかけられてもほぼ発声せず。主人公の台詞(言葉)のとても少ない映画でした。
大きな盛り上がりも、明確なオチのようなものもない。淡々と静かな日常が繰り返されていく。でも心地よく観てしまう。

この映画は、なんていうか〝スペース〟がたっぷりあって、だからこそ観る人がそれぞれに何かを感じ、考え、想像するような、言葉ではないものが語りかけてくる。そんな映画だったように思います。

ストーリー中の「で、どんな事情で?」と思う部分も、特に何も開示はなく、そこも観る方が想像するのです。気になる〜。
主人公の平山は、一体どういう人生を生きてきたひとなのだろう。何か事情が、それこそ色々とありそうだけれど。ということを、今日を淡々と生きる姿だけで表現する役所広司は凄い俳優なのだな。と改めて思いました。

古いアパートの質素な部屋の畳の上に布団をひいて寝ていても違和感がなく、でもきっと、ゴージャスな部屋の天蓋付きのゴージャスなベッドの上で寝ている姿もしっくりくるのだろうな、なんて思ったり。
顔も濃いけど、見えない輪郭の濃い人です。(私の印象)

それで、台詞がない分こちらは無意識にも人の動きをじっと注視しているわけですが、私はあの平山(役所広司)をずっと見ていられる気がします。
というか、平山は私がずっと見てしまうタイプの人かもしれません。つい目が持っていかれる人。

私はモノの扱い方が丁寧な人の動きが好きです。
その人の動き、作業する姿がとても好きです。
その中に、ときめいて目が離せなくなる特別な人がいます。
モノを大切に扱う人が皆そうかというとそこは違って、考えてみると実際にそういう人に会ったことはないかもしれないです。私にとってはかなり稀有な存在な気がします。

それでも、例えば誰かなーと考えてみたら、いました。長く私の心の中に残っている人が。

ずーっと前に、『ごちそうさん』という朝の連続TV小説をやっていました。
そのヒロイン役だった女優の杏さんがその人です。

そのドラマの中で杏さんはよく料理をしていました。両親が洋食屋で、子供の頃から食べることが大好きで、のちに作る方にも目覚めた、という役です。

着物に割烹着姿(大正時代の話)で家の台所に立ち、包丁を持ち、野菜を切ったり、オニギリをにぎったり、火を起こしたり。
私は、その時の杏さんの〝手〟から目が離せませんでした。
なんて綺麗なとか、なんて大切そうにとか、そんなのとは違う、言葉ではちょっと表現できないのですが、目と心を奪われました。途中からは杏さんが料理をしている姿を見たくて、その番組を観るようになりました。今でもその場面はくっきりと思い出すことができます。

オニギリを丁寧に大切そうに包む杏さんの大きな手なのか、その動きなのか、よくわかりませんが、丁寧なだけではない何かがあり、私のどこかのツボにはまったのでした。

そして『PERFECT DAYS 』の平山(役所広司)にも同じ匂いを感じた気がします。
平山は、動作が早くもないけれどゆっくりというほどでもないし、いたって普通の動きですが、何かが心地いい。

自分(平山)が大切にしている日常の一つひとつに心がこもっている感じがするのかな。
それが動きや姿に見えるのかな。
などと考察してみますが、理由はよくわかりません。

平山を見ていると、ずっと胸の辺りに何かが響いてきて、私にとって、とても気持ちのいい映画でした。
 
そう…この余韻を残す感じ。
聴いていた演奏が終わってからも、その音が身体の中で響き続ける、静かな音楽のような映画だったかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今日も幸せな一日でありますように。

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