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【光る君へ】千年絵巻~源氏物語を読んでみた〜

大河ドラマ『光る君へ』を見る前の予習にと思い、昨年末『むかし・あけぼの』という、田辺聖子著の枕草子の小説を読みました。


そのあとで、同じく田辺聖子著の『新源氏物語』という小説を見つけ、そちらを読んでみました。

私の知っている紫式部は〝源氏物語の作者〟ということだけで、その源氏物語も、ずっと前に『あさきゆめみし』というコミックを友達に借りて、途中まで読んだきりでした。

『新源氏物語』は上・中・下の三巻で、光源氏が出家をする(と決める)ところまでのお話でした。実に面白かったです。


中巻の前半までは、ほぼ光源氏の女性遍歴についての話で(私感です)、正直、この男、もういい加減にせいと何度思ったか。ぜっんぜん読書が進まずでした。

そうだった。こいつはただの女たらしの我慢無しの変態男だった。コミックでもそうだった。思い出した。などと思ったり。

(自身の初恋の女性ひとでもある)父帝の寵妃のことが諦めきれずに、遂には手を出し(しかも宮中で)、子供までできてしまうとか(でも皆には極秘)、
兄帝に入内する予定の女性ひとの部屋にも、入内前だけでなく、入内後(兄帝の妻が実家に宿下がりをしている時)にも忍び込み関係を持つとか(そしてバレる)、
私からしたら、これだけでも非常に迷惑な男です。
とにかく呆れるほどの節操のなさに(私感です)、こいつはまたか……と、だんだん気持ちが悪くなり、いつまでこういう話が続くのかと、さすがに飽きてきて、何度か途中で本を閉じそうになりました。

この(平安)時代は一夫一妻制ではなく、複数の妻や愛人を持つことは珍しくもなかったようだし、恋愛も自由奔放な感じでもあり、女性も浮気しているし。でもみんな、自身の相手に嫉妬はしている。疲れそうな時代です。

けれども、中巻を読み進めていくうちにだんだん面白くなってきて、先が気になるように。
私が飽き飽きしていた、こいつはまたか……と思っていた、そこまでの話が伏線になるというか、過去に関係を持った女性達や、その子供達にも、様々に話はおよんでいき、物語は光源氏の女性遍歴だけに留まらず、ものすごく広がっていきます。
良かった。千年読み継がれているという物語は、ただの変態浮気男(私個人の感想)の話で終わらなかった。
私の物語への印象も、最初と随分変わりました。

読んでいて度々感動したのは、紫式部の描写力と知識の深さ、洞察力です。
季節ごとの風景や何かの場面、酒宴や音楽会、楽器、調度、家具、衣装(女性も男性も)、人物、食べ物、本当にありとあらゆることが細かく丁寧に表現されていて、読んでいるとそのイメージが浮かんできます。

紫式部はこういう時代に生きていて、その中でこの物語を書いたのかぁと何度も思い、とても不思議な気持ちになりました。

上流階級のことも下層階級のこともよく知っていて、様々なことに対して観察眼の鋭い人だったのかなと思わせられ、人の心理も、女性だけでなく男性についても、よくわかるものだなぁという感じです。

そして、光源氏が亡くなってからのお話、『薫と匂宮』の物語は、『新源氏物語 霧ふかき宇治の恋』上・下巻に続いています。
『新源氏物語』の続きですが、光源氏編とはまた違うお話でした。

え? 三巻で終わりでなく? まだ続きがあるの!? と驚きましたが。
こちらも面白かったです。
源氏物語、長い……

古語で書かれたものを、読みやすく現代文の小説にした田辺聖子さんの筆力もさすがとしか言いようがありません。
田辺聖子さんの書いたものは読みやすく、好きです。
他にもたくさんの方による、現代語訳の源氏物語があります。


大河ドラマ『光る君へ』の主人公のまひろ(紫式部)が、のちにこの源氏物語を書くのですよねぇ。(ドラマの中で書くかどうかはわからないけれど)

ドラマ現時点でのまひろは、おそらく15歳くらいの設定だと思いますが、既に知識の深さや観察眼、洞察力は、同年代の身分の高い貴族の女性との違いを感じます。自分の意見もはっきり持っていて、それを女性の集まりの場で口に出して言ってしまい、周りがちょっと引いている場面もありました。
まひろの家は貴族とはいっても裕福ではないし、本人も深層の令嬢ではなく、上流貴族の女性との育った環境の違いというのもあるのかもしれません。
まひろは自由に外を出歩いたりしていますからねー。

また、父親の藤原為時は、和歌や漢学に精通していて、まひろは幼少期から、漢詩や漢文を読むことが得意でした。
当時は漢学といえば男性が習うものでしたが、父親から漢学を教わっていた弟より、そばで聞いているだけのまひろの方が覚えが良く、ドラマの中でも父為時は「お前が男だったらなあ」のようなことを言っていました。
15歳くらいで、成人男性の為に代作(目当ての女性に送る和歌を考え、書く)もやったりしています。
センスと才能、頭の良さが窺えるエピソードがちらちらです。

まさか紫式部も、自身の書いた『源氏物語』が千年以上も読み続けられ、外国語にも翻訳されて世界中で読まれるようになるとは思いもしなかったのではないでしょうか。

私も読んで良かったです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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