見出し画像

【短編】ベルボトムブルース


 雨…。曇り空。寒い…。街へ出ると雨は雪だったと気付いた。都会の道にはなぜこんなにも人が溢れているのか。知らない人ばかりが忙しそうにしている午後に、誰も立ち止まる人はいない。
 半地下の喫茶店で珈琲を飲みながら、新聞記事に目を通す。待ち合わせの時間は過ぎているが、いつになっても彼女は現れない。またすっぽかされるのであろうか。煙草を吸いながらこれからの予定を立ててみる。1人でレコードショップを覗いて、そのまま書店か。
 1時間経過。家の電話は留守電のまま。
 もう終わりか…。これからは1人で生きていく事になるのだな。他人を頼るのはもう辞めにしなければならない。
 暖かいベルベットのマフラーも時代遅れか…
 灰色の空に不釣り合いな色。ダサダサの人生だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?