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愛する人の隠していた過去が発覚したとき、あなたならどうしますか? 〈書評ブログVol.40〉

こんにちは。記念すべき書評ブログ40冊目は、私の大好きな宮本輝さんの新刊小説をご紹介します。

『灯台からの響き』 宮本輝

あらすじ

物語の主人公は、とある商店街に店を構える中華ラーメン店「まきの」の店主、牧野康平。康平は死んだ父親の考案した滋味深いスープの味をただひたすら守り続け、地元の住民から愛されるラーメン店を妻の蘭子と2人で切り盛りしていた。年老いたら店を閉め2人でのんびりと旅行をしようと言っていた矢先に、妻の蘭子が早朝ひとり、店の冷たいコンクリートの上で亡くなっていた。くも膜下出血だった。

蘭子でないと、絶妙のバランスで店をやっていく自信がなくなった康平は、ある日1冊の本の中から1枚の古いハガキを見つけた。蘭子の過去の秘密が隠されているように思えるその文面を読み、康平は自分も知らなかった妻の過去を探す旅にでかけることになる。

架空の人物なのに魅力的な登場人物に会いたくなる

宮本輝さんの作品の何が良いかというと、物語に出てくる登場人物たちが魅力的なところです。主人公を取り巻く人たちは皆、思慮深く人間味があって、発する言葉に重みがあるのです。だから架空の人物と分かっているのですが、「会ってみたい!」と思わずにはいられない。

この「灯台からの響き」においても、主人公である康平はもちろんですが、彼の子どもたち、友人、そしてとあることがきっかけで一緒に旅をすることになる若い青年、新之助たちは、その誰もが目の前に起きた出来事を見たままに判断するのではなく、その奥に隠されていることにまで思いを巡らせることができる人たちなのです。

康平自信も若い頃は高校を中退し、また父親のラーメンを作ることに対する思いについていけずに悶々とした日々を送っていたのですが、友人から言われたある言葉によって心を入れ替えることになるのです。

康平を思慮深くさせたのは『読書』だった!

康平は自宅の2階に八百数十冊の蔵書を持つほどの読書家なのですが、それは幼なじみのカンチャンのお陰なのです。24歳の夏の日、2人で食事をしているときにカンチャンは突然康平に向かってこう言うのです。

『おまえと話してるとおもしろくなくて、腹がたってくるんだ。』

おまけに人間としておもしろくないという何とも辛辣な言葉を浴びせました。そしてその原因は「雑学」が身についていないからだと言い、言われた康平は屈辱で顔が真っ赤になるのですが、カンチャンは怯むことなく大切な言葉を投げかけました。

康平、とにかく本を読むんだ。・・・なんでもいいんだ。雑学を詰め込むんだ。活字だらけの書物を読め。優れた書物を読み続ける以外に人間が成長する方法はないぞ

このセリフを読み、活字loveの私は「そうでしょ、そうでしょう?やっぱり読書って良いよね」と、何だか得も言われぬ喜びの感情が湧いてきてこのページに黄色の付箋を貼ったのでした。

大好きな作家、宮本輝さんが書いたセリフだけに読書の持つ意味を証明してくれたような気持ちにもなったのです。

愛する人の隠していた過去が発覚したとき、あなたならどうしますか?

そして、この問題です。康平は妻、蘭子に自分も知らなかった過去があったことを知り、それを探る旅に出るのですが、その中で愛する妻のことを疑うシーンがありました。その秘密が正義なのか悪なのか、についてはここには書きませんが(ぜひ本を手に取って欲しいから)私だったら、どうするだろうと考えてみました。

答えは「愛する人の過去は探らない」です。それを乗り越えてきての今だったのだから、もういいじゃないかと思ってしまうのです。

あなたならどうしますか?
そして、逆の立場だったら自分の過去も愛する人に知ってもらいたいですか?

『灯台からの響き』読了後に手にしたのはこの本です

「灯台からの響き」で読書の奥深さに改めて気づかされた私は、本屋さんでたまたま目にした、こちらの本を買い求めました。

『探求型読書』  編集工学研究所 (著)

沢山本を読むけれども、読み終えたら、「はい、次の本!」という感じで1冊1冊の本に書かれていることについて深く考えることがないかも・・と思ったので、このタイミングで探求しながら本を読むことを学んでみようかなと。

こちらの本も読み終えたら感想を書きますので、お楽しみに☆

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。
あなたの読書ライフが素敵なものとなりますように!

またお会いしましょう!!

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