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リクナビNEXTを売りながら、採用成功までお手伝いするのは難しかった(個人の感想です)

「なぜ、間違えたのか?」という本を拝読しました。いわゆる行動経済学の本ですが、コンパクトにまとまっていて読みやすかったです。

さて、この中で今回取り上げたいのは「報酬という刺激のワナ なぜ、弁護士費用は日当で計算してはいけないのか?」という項。

ベトナムが独立を果たす前の話だ。当時はフランス領だったハノイで、植民地政府によって次のような法律がつくられた。「ネズミの死骸を届けた者には報酬を与える」。こうすればネズミによる作物の被害が減ると思ったのだ。ところが、この法律が施行されると、報酬を少しでも多くもらおうとする人々によってネズミが繁殖され、増えてしまった。(中略)

これらは「報酬という刺激のワナ」の例である。報酬に反応するのは当然のことだ。人間は自分の利益になることをするからだ。(中略)

 弁護士、建築家、経営コンサルタント、公認会計士、あるいは自動車教習所の指導員。こういった人々の報酬を日当で計算するのはばかげている。日当に刺激され、できるだけ多くの報酬を獲得しようとして、仕事にできるだけ時間をかけようとするからだ。

このポイント、商品やサービスの設計にも非常に有用だと思っております。何が言いたいか、というと、課金する箇所を間違えているサービスはいつか出し抜かれる、ということです。なぜなら、提供されるサービスの質に圧倒的な差が出るからです。

最も有名な例が、タクシーとUberでしょう。人々が求めているのは、目的地に着くことなのに、タクシーは距離や時間に対して課金してます。なので、運転手が回り道をする、というトラブルが多発することになります。一方で、Uberは目的地までの金額が最初に固定されているので、そういったトラブルとは無縁に安心して乗っていられます。

私は最初に入った会社でリクナビという名の人材広告を売っていましたが、その時にいつも持っていた違和感は、企業側は採用しようとしまいと広告を出すと決めたときにお金を払わないといけない、ということでした。なので、広告の営業マンは広告を売って、はい!おしまい!となりがちです。

ただ、企業が本当に必要としているのは、応募者が来ることではなく、人が採用できることです。そこに課金をしていたのが、人材紹介というビジネスモデルです。この人たちは、採用を成功させたいので、面接が終わると候補者に電話をしたりと、しっかりとかゆいところをケアしてくれたりします。採用難度が高い中途市場で、人材紹介がどんどん伸びていったのは納得としか言いようがありません。

さらに一歩進んで考えると、企業が本当に達成したいことは、実は採用成功ではなく、その採用した人がちゃんと活躍すること、だったりします。なので、活躍まで面倒を見る活躍課金のようなビジネスモデルが出たら、もしかしたら人材マーケットを席巻するかもしれません(キャッシュの回収がめちゃめちゃ長い、活躍の定義やお手伝いが難しい、などビジネスモデルとしての難しさはもちろんありますが)。

ちなみに余談ですが、当時のリクルートで面白かったのは、社内では「お客様の採用成功が何より大切」と念仏のように何度も何度も唱えられていたことです。それによって、放っておくと、はい!おしまい!となりがちな営業マンの手綱をなんとかして締めていたのだと、今振り返ると思ったりします(それでもなかなかに難しいものがありましたが)。

と、いうわけで。世の中には意外に課金する場所がずれているサービスがたくさんあったりします。医療とかは、人々は完治を目指しているのに、診断や治療に課金がかかっています。結果として、何度も診断に足を運んでもらって病気が長引いた方が儲かるといういびつな仕組みになっていたりします。不動産仲介なんかも、カスタマーは満足のいく住まいに住むことが目的なのに、賃貸の成約に課金されていたりします。

新しいテクノロジーとともに、正しい箇所に課金するサービスがもっともっと出てきて市場を変えていくと面白いですね。

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