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ゆきちと渋沢の最低すぎる3日間

ゼミ生の大山諭吉は、どこか抜けている。
夜逃げした親父が金への執着が半端なくて、福沢諭吉から取って名前を付けられた、ありがたいようなありがたくないような名前を持つ男。
皮肉にもいつも金がないとぼやき、ボロボロのシャツばかり着ている。そのくせバイト先のパチンコ屋で出会ったという彼女はちょっと可愛いから腹が立つ。

そんな俺の名前は渋沢。渋沢英治だ。今度お札になるあの人とは縁もゆかりも、顔もバイタリティも違う。
エスカレーターで大学まで入ったボンクラだ。んで、童貞だけど、そのことは隠している。

諭吉とは話が噛み合わないが一緒にいると、居心地がよい。だけど長くはいたくない。不思議な奴だ。

ある日、諭吉から食堂で声を掛けられた。
「なぁ、今度アレやらない?」
アレって何だよと聞き直すのも馬鹿らしく、めんどくさそうな表情をしていると諭吉は満面の笑みを浮かべる。
「強盗だよ」
「は……?」
「ファミレス。あの国道沿いの」

諭吉と目が合った。

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