きみ

君はあの雨の昼下がり
僕の手の中で永遠になった
もう君を捕まえるものは何も無い
大空へ羽ばたき
太陽に触れても焼けることが無い

出会いの日からずっと
後悔することが怖くて
毎日愛の言葉を囁き続けた
それが自分自身のためだと恥じていたが
君を失って気付く
君が好きだと言ってくれたのは
僕を好きでいてくれたからなのだと

後悔を先に立てようとすると
別の後悔が生まれる仕組みらしい
とにかくそれはやってきて
中には何かが詰まっているらしい

だって完璧な愛なんて
人間の手では作れないから
それでも僕らは確かに
愛し合っていたんだ

恐れていた日を迎えて気付く
君も僕の不幸を恐れていたことに
僕らは互いを映し出しながら
世界の片隅でひっそりと共に生きた
その時間は僕に
生きる意味を丸ごと忘れさせてくれた

死を恐れた時間が
生から僕を解き放った
もはや愛に触れた後では
そのふたつに違いはない

君の死を恐れていた間
君も僕の死を恐れていた
君の幸福を願っていた間
君も僕の幸福を願っていた

君は僕のことも
大空へと解き放ってくれた
僕はもはや自由だ
君からではなく
僕自身から解放された

君のためなら躊躇うことはなかった
僕の全てを与えたかった
愛するということは
生きることに等しい
呼吸し
食べ
触れて
抱き
眠る
君のそれを見守る時
僕と君は愛し合っていた

君が生き返る夢を見た
今日から君はラザロだよ
ぬくもりを取り戻した君に
そう言って抱きしめて目が覚めた
夢で会えるなら
僕はもう眠ることが怖くない
眠っている間に
君がいなくなることが怖かったけど
今日からは
君に会うために眠るよ

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