見出し画像

待ち合わせ

まだミモザが咲いているか
確かめに行った僕は
十日前、人だかりの中心にあった木々が
今日は素通りされていくのを目撃した

僕は君を探すように
まだ黄色いミモザを探して歩き回った
そして端っこの方に
すみっこの方に
楽し気に揺れている黄色の塊を見つけた

君だ
君が僕を待っていてくれた
君が僕にとっておいてくれた
僕は愛しく眺め
そっと触れた

君の愛らしさに敵うものなどこの世には無い
それでも僕は
この世の全ての黄色いものに
これから君を重ね合わせて生きていくだろう

君のいない世界では
僕は生きていく気が失せるような気がした
君を失う痛みには
耐えられないような気がしていた
けれど
君と過ごした歳月はあまりに甘く

僕は僕の肉と共に
その記憶がこの世から消えてしまうことが
嫌になった
僕はこの頭の中に
この左手に
この目に
この耳に
君の美しさのほんの少しだけでも
写し取って
それを保存したい
君を保ち続けたい

だってあんなにも美しかった君が
消えてしまうなんて
とても罪深いことだから
死よりも僕が今願うことは
君をそばに感じ続けることだけだから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?