偶然スクラップ#32: Jennifer Lee’s Timeless Craft

(追記2019年12月31日)
Jennifer Lee。この写真をみたときに「カッコいい!」とおもった。

「陶器が浮いてる!」みたいな感覚。なんだこの宇宙感は。用の美と真逆を行っている。繊細で静けさにまさにタイムレス、瞑想の空間がそこにあるみたいだ。

石庭とは、また違うけど。ガーデンと石庭の間みたいな感じ!?どうしてもインドアがちになってしまう自分にとって親近感が湧く。いやでも本当は外に出て、自然の大宇宙を感じたいのである。

(初投稿2019年9月5日)
欧米のアートメディアの記事(ほぼ『Frieze』)の中から、雄手が気になった今ホットな展覧会情報やアートに関する話題を引用紹介します。
本日はこちら。ロンドンに拠点を置くアート雑誌『Frieze』から引用紹介。

(2019年9月2日付記事)
Jennifer Lee’s Timeless Craft
英ケンブリッジのKettle’s Yardで行われた陶芸のエレガントな展覧会は、機能性という期待に疑問を投げかける。

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「Jennifer Lee: the potter's space (陶芸家の空間)」の中央にあるインスタレーションの回りを歩きましょう。―36個の壺が-ギャラリーを満たす採光-その一つの中央に浮かぶ台座の上に並べられています-そうしないと、身を乗り出して壺を取ってしまいそうです。壺というは、そうさせる力があります。 彼らは手に取られようとするのです。それは特定の共感覚によって同時に、視覚がモノの感情の影あるいは予感のようなものを呼び覚まします。他の壺と比べて、Leeの壺は特にそうです。それは恐らく滑らかに湾曲した底部によるものでしょう。―初期にプレス金型を使い形成されたものです。後期では、粘土を巻き上げるという古来のそして普遍的とも見える技術で形成されています。お椀のように丸めた手の中にあるこれらの壺を想像できます。

ここには機能性を仄めかすようなものは何もありません。では、なぜそうであるべきなのか?器は、機能性に対する期待によって不当にも蔑ろにされてきたのです。器の口は開いているから、何か入れなければと。(私たちは彫刻に対してだったらこんなことは思いません。) Leeの器は、完全に器自身を内包しているのです。実際、40年近い彼女の仕事のこの美しい展示は示唆するように、そこには彼女の造形に共通する顕著な連続性があります。-理想に向けた段階的な洗練していくというのではなく、控えめな設定値の範囲内で継続的に実験をしているようです。素焼きで縞模様の色合いは手作りに由来するものです。(ろくろを回したものとは対照的です) 金属鉱物で「味付け」した粘土を何種類も帯状にしていきます。何十年にも渡って積み上げられた素材のライブラリです。

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長い淵の台座は、Jamie Fobertによって考えられました。彼は最近の最高にエレガントなKettle’s Yardの拡張工事の裏側にいた建築家です。Kettle’s Yardは、コレクターであり、キュレーターであり、自称「アーティストの友人」であるJim Edeと妻のHelenに大変愛された旧宅です。台座の高さは、Leeの南ロンドンのスタジオにあるワークベンチに由来しています。―確かに、いかにそれがあなたを静かに展示に向かわせているかを知る必要はありませんが。( Sarah Griffinがキュレーションをした) この展示は、1983年のLeeのRoyal College of Artの卒業展のために作られた作品で始まります。タイトルは、彼女の独特な散文詩的な説明スタイルで、「Rust stippled, smoky grey band (錆びた点描、煙たいグレイの帯)」、それは展示の中で一番小さい作品の一つです。斑点のある暗褐色で首の部分が細くなっています。―それは、霧掛かった地平線のよう青い灰色が入り混じっています。―そして、縁の部分でまた広くなります。それは、Leeがエジプトに訪れた後に作られたもので、古代中東の陶器と、同様にHans CoperやLucy Rieなどのモダニストが古代のリファレンスから昇華させた造形の影響が有しています。LeeのRCA時代のチューターであるDavid Queensberryは、かつて彼女の壺を「a timeless quality (時間を超越した質)」を持っていると描写しました。これらの後光に取り囲まれ斑点のついた複合物は地質学と宇宙の両面の要素を具えています。この感覚は数十年間の内に作られてきた造形がいかに心を打つかを見れば正しいとわかるでしょう。Fobertの展示デザインは、鑑賞者が中央の台座の回りを歩いて一周することを可能にし、無限の一貫性と作品間の偶発的な会話を誘発します。「Rust stippled, smoky grey band (錆びた点描、煙たいグレイの帯)」の反対側では、最も最近の壺「Pale, speckled traces, speckled olive tilted shelf (おぼろげで、斑点のある痕跡、斑点のあるオリーブ色の傾いた棚) (2019)」が展示されており、へこんだ底部となだらかに膨らんだ側面が繰り返されます。

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さらに5つの壺がKettle’s Yard house自体に置かれています。それらは、Edeのモダニストの作品と蓄積されたオブジェの魔法のコレクションの中にあります。リビングルームの端、Italo Valentiの1960年代半ばの破られた紙のコラージュのトリプティクの下で、Leeの斑点のついたグリーン・グレーの隕石の尾を持って輝くオフホワイトの作品は、Rieの「Conical Bowl (円すいのボウル) (1971)」といとも簡単に釣り合っています。Kettle’s Yardの最も有名なオブジェの一つは、アート作品ではなく、76個の真ん丸な小石の渦で、Jimによって注意深くサイズ順に並べられたものです。それは、アンモナイトの化石と渦巻く銀河の両方を思い浮かばせます。「時代を超越した質」。Leeの展覧会は、Edeが間違いなく認めたと思われる展覧会でしょう。

Jenifer Leeの「the potter’s space (陶芸家の空間)」はCambridgeのkettle’s Yardで2019年9月22日まで開催しています。

Top image: Jennifer Lee, Pale, 1997, Shigaraki Red, 2014, Asymmetric amber lichen, 1986, (f.l.t.r.), installation view. Courtesy: the artist; photograph: Jon Stokes

Middle image: Jennifer Lee, Shigaraki Red, 2014, fractionated red, dark base, 14 × 10 cm. Courtesy: the artist; photograph: Jon Stokes

Bottom image: Jennifer Lee, ‘the potter’s space, 2019, exhibition view, Kettle’s Yard, Cambridge. Courtesy: the artist and Kettle’s Yard, Cambridge; photograph: Stephen White

文:Amy Sherlock
(訳:雄手舟瑞)

シンプルな作品の中に自然の素材と人の手によって織り込まれた歴史、複雑さと不安定。それらは配置される間によって内なる宇宙が表出される。

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