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【KYOTO=山鉾建ても中止で神事を除き「祇園祭のない夏」に、バーチャルに楽しめるコンテンツに注目(2020)】

 新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から神事を除いて前祭(7/17)と後祭(7/24)での山鉾の巡行、神輿渡御などほとんどの行事が中止されている今年2020年の京都の祇園祭。かつて疫病退散のために始まったとされる祇園祭の原点となる山鉾建ての行事だけでもできないか協議が続けられてきたが、7月2日、地元の保存会や連合会が中止を決定。毎年、盆地特有のうだるような暑さの中でも夏の間の長い期間をかけて誠実に祭りを執り行って来た京都の人々や、古都に日本の神髄を見て来た人たちにとっては、何ともさびしい夏に。しかし今年は、祇園祭がバーチャルに楽しめるコンテンツが相次いでスタートしており、地元の住民から遠隔地のファンまで、せめてものなぐさめになる強力なツールとして活躍しそうだ。

★続きは阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます(劇評など一部のコンテンツは有料ですが、ニュース記事はいまのところ無料です)

 神事は淡々と行われており、1日には祇園祭の幕開けを告げる「お千度の儀」が京都市東山区の八坂神社で行われ、事実上、今年の祇園祭はスタートした。前祭の巡行で先頭の長刀鉾に乗る稚児と補佐役の禿(かむろ)を選ばなかったため、本殿を3周し疫病退散を祈願するお千度の儀には不在。保存会の代表数人だけが参加したという。
 この後も例年ならば綾傘鉾や長刀鉾の稚児の社参(八坂神社への参拝)などが行われるが、今年は軒並み中止。鴨川から神事用水を汲み上げる「神用水清祓式」や、神輿を洗うための一連の行事「神輿洗奉告祭」「神輿洗式」などが関係者のみで行われる予定だ。
 例年17、24日に行われる神輿渡御も中止になり、神輿の代わりにサカキ(神事に使われる緑の葉っぱ、榊とも表記する)を馬の背に立てて練り歩く「御神霊渡御祭」が行われる。

 祇園祭の起源は最も有力な説では、869(貞観11)年に亀甲占いの権威で唐に渡って学んだ経験もある貴族の卜部日良麿が薬師如来を本地とする牛頭天王を祀って行った御霊会。
 平安期には衛生状況の悪さからさまざまな疫病が流行していたが、864年以降、現在の青木ヶ原樹海を形成するきっかけとなった富士山の大噴火、陸奥の貞観地震と津波などの巨大地殻変動によって深刻な被害が発生。当時は恨みをこの世に残したまま亡くなった人々が怨霊となり、その祟りとして災害や疫病が起きると考えられていたことから、その怒りを鎮め、自らの無病息災を祈念する行事として御霊会が開かれていた。
 特に869年の御霊会では、当時の国の数に合わせて66本の「矛」を建てて、諸国の悪霊を矛に移らせ、封じ込めたとされる特徴的な創意工夫が凝らされたことから、後に山鉾を建てて練り歩く「疫病退散・災厄回避」の祭りとして祇園祭に結実した。

 山鉾建てこそが祇園祭の原点であるとされるこうした経緯から、「疫病の年だからこそ、建てよう」との意見も噴出。山鉾巡行の中止を決めた後も、山鉾建ての可能性をぎりぎりまで探っていた。
 しかし、5月25日に示された国の段階的な解除についての政府方針では、全国から観光客を集める祭りについては7月末まで開催見合わせと規定。7月10~31日の屋外イベントの人数は5000人以下に制限されたため、山鉾建ての断念が決まった。

 こうした「(神事を除いては)祇園祭のない夏」は、季節と共に生き、年間行事が生活と密接に結びついている地元京都人をはじめ、古都のすべてに浪漫を感じる全国の京都ファンにとってはなんともショッキングな日々。そんな人々の不安な思いを少しでも和らげようと、ITを活用したさまざまなデジタルサービスが立ち上がっている。

 文部科学省によって「日本文化資源デジタル・アーカイブ国際共同研究拠点」に採択された立命館大学のアート・リサーチセンターと文学部は合同で、「祇園祭」の期間であるとされる7月1~31日の1カ月間、Webサイト上で「祇園祭デジタル・ミュージアム2020」を公開。京都を代表する大学のひとつとして、これまでに収集してきた祇園祭に関する資料や研究成果を披露している。
 具体的には祇園祭が行われる祭礼空間の2Dマップや、山鉾の建つ街並みの3Dマップ。会所の360度写真、バーチャル山鉾巡行の動画、京都市指定有形文化財「長江家住宅」の資料、1929、1930(昭和4、5)年ごろの山鉾巡行の様子を写した動画なともある。

★祇園祭デジタル・ミュージアム2020

 また、京都新聞と京都のベンチャー企業「ストローリー」、イラストレーターの鴨川ゆかさんが協同で作成した「おうちで楽しむ バーチャル祇園祭マップ」はキャラクターの姿になって地図の中を散策することもできる遊び心にあふれた優れものツール。
 地図の中にある山鉾をクリックすると、それぞれの山鉾が建てられた場所の宵々山の様子や巡行時の写真などが映像で表示される。鴨川さんが描き込んだ祇園祭ならではのグルメ情報や祭りのスケッチが可愛らしい。
 この地図が掲載されている京都新聞「祇園祭」特集ページでは、過去の祇園祭の宵山などでの賑わいを場所を任意で選んで360度映像で観ることができるコーナーもある。

★京都新聞「祇園祭」特集ページ

 なお、わたくし阪清和はエンターテインメントの取材・執筆と並行して、京都に関する取材・研究活動を進めており、当ブログなどで何本かの京都に関する記事を掲載していますが、エンタメ批評家・インタビュアー、ライター、ジャーナリスト、アナウンサー、MC、編集者という肩書きに加えて「京都研究家」という肩書も名乗らせていただいております。恥ずかしながらまだ始めたばかりですが、超難関検定と言われる「京都 観光・文化検定3級」を取得しております。これからも2級、1級への挑戦は続きます。
 京都に関するさまざまな取材、執筆、研究のお仕事をさらに受注できる態勢が整いましたので、今後はより一層よろしくお願いいたします。

 当ブログの京都特集はとてもユニークなもので、観光コースには入らないような場所に毎回違った視点で光を当て、新たな魅力をご紹介するプログラムになっています。美しい写真と精緻な文章でご紹介するそれぞれの場所はきっとあなたの記憶に長く残っていくはずです。今後も少なくとも100カ所以上は紹介していくつもりで、将来的には当ブログから独立させて、「京都」のスペシャルサイトとして事業化していくつもりです。協力してくださる方がいらっしゃれば、お気軽に声をおかけください。

 アクセス数も好調な「京都シリーズ」をご紹介します。

 これまでに採り上げたのは3カ所。圓光寺、養源院、新日吉神社。

 圓光寺はかつて「そうだ 京都、行こう」キャンペーンでも紹介された紅葉の美しい寺院です。黄から赤、ピンクまでさまざまなグラデーションの紅葉と、縁側の赤じゅうたん、その手前の畳敷きの部屋まですべてを入れ込んだ風景はまさに絶景です。禅宗のお寺らしく端正なデザインが施された境内はどこをどう切り取っても絵になる美しさ。この圓光寺を「デザイン」というテーマでご紹介しました。

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」【KYOTO・京都①=デザイン】 圓光寺(2015)記事=2015.11.28投稿

 養源院は、もともとは茶々(淀殿)が織田信長に滅ぼされた父の浅井長政と母を弔うために秀吉に創ってもらった寺院なのですが、その後徳川秀忠、江の方、徳川和子と戦国から江戸初期をにぎわせた著名な人々の運命に少なからず関係し、さらには浅井長政、鳥居元忠の怨念もまた存在する稀有な場所。さらには襖絵の名手として名高い俵屋宗達や狩野山楽の活躍の場となり、名工、左甚五郎の傑作も残っています。そんな寺の歴史の皮肉めいた経緯から、浅井家と豊臣家と徳川家という憎しみ合った一族が同時に祀られている不思議さもあるのです。この養源院を「おんなの情念」というテーマで切り取りました。

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」【KYOTO・京都②=おんなの情念】 養源院(2016)記事=2016.12.15投稿

 新日吉神宮は、豊臣秀吉の死後、徳川家康らに滅ぼされた豊臣家と縁深い社。徳川の徹底した排斥によってすべてが滅したと思われていた秀吉の遺骸(豊国社のご神体)を密かに神官が持ち出し、自宅で保管。こっそりまつっていたのが新日吉神宮です。何百年もたって手から秀吉のもともとの苗字である「木下」をほうふつとさせる「樹下社(このもとのやしろ)」という場所を境内に設けて、秀吉を慕う人々が徳川幕府の権勢下でも守り続けたのです。その後明治天皇の命によって秀吉は名誉回復。豊国社は再興されました。まさに市井の人々が何代にも渡って受け継いでいった命がけの執念の舞台です。

 新日吉神宮には菅原道真が京都の居宅でよく眺めていた梅の木が、主が左遷された太宰府まで京都から一夜にして飛んで行ったという「飛梅」伝説にちなんだ神社もあるんです。「飛梅天満宮」はまさしく道真の執念そのもの。この2つのエピソードを中心に「執念」というテーマで切り取ったのが第3回でした。

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」【KYOTO・京都③=執念】  新日吉神宮(2018)記事=2018.11.03投稿

 その他、番外編も多数…。一例を挙げますと。

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」【News=速報】 京都五山の送り火荘厳に美しく燃ゆる夏(2017)記事=2017.08.16投稿

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」【News】 中秋の名月まれにみる輝き、京都・大覚寺大沢池に降りそそぐ月光(2017)記事=2017.10.05投稿

 当ブログは、映画、演劇、音楽、ドラマ、漫画、現代アート、ウェブカルチャーなどに関するエンターテインメントコンテンツの批評やニュース、リポート、トピックなどで構成され、毎日数回更新しています。

 わたくし阪清和は、エンタメ批評家・ブロガーとして、毎日更新の当ブログなどで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・ウェブカルチャー・現代アートなどに関する作品批評や取材リポート、稽古場便り、オリジナル独占インタビュー、国内・海外のエンタメ情報・ニュース、受賞速報などを多数執筆する一方、一部のエンタメ関連の審査投票などに関わっています。
 さらにインタビュアー、ライター、ジャーナリスト、編集者、アナウンサー、MCとして雑誌や新聞、Web媒体、公演パンフレット、劇場パブリシティ、劇団機関紙、劇団会員情報誌、ニュースリリース、プレイガイド向け宣材、演劇祭公式パンフレット、広告宣伝記事、公式ガイドブック、一般企業ホームページなどで幅広く、インタビュー、取材・執筆、パンフレット編集・進行管理、アナウンス、企画支援、文章・広報コンサルティング、アフタートークの司会進行などを手掛けています。現在、音楽の分野で海外の事業体とも連携の準備を進めています。夏以降は全国の新聞で最新流行現象を追い掛ける連載記事もスタートします。今後も機会を見つけて活動のご報告をさせていただきたいと思います。わたくしの表現活動を理解していただく一助になれば幸いです。お時間のある時で結構ですので、ぜひご覧ください。

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