新日本プロレス2023の振り返り

2023年の興行も全て終了し、あとは2024のイッテンヨンに向けて気持ちを高めるだけ・・というところに衝撃のニュースが入った新日本プロレス。なんとコロナ禍の混迷の新日本プロレスを引っ張ってきた大張社長が退任し、新社長にエース棚橋弘至選手が就任しました。
立命館大学法学部卒という高学歴(実は今の立命館は受験で必要な偏差値は下がってるらしいのですが)なだけに、いつかはと思われつつも、今このタイミングというのはファン達も想定外だったのではないでしょうか。

そんな衝撃の新日本プロレス、今年の振り返りを団体内部と団体外部(他団体)という視点から振り返り、お気持ち表明したいと思います。(敬称略)

新日内部の動きは

新日内の私的3大ニュースは外国人エースの離脱、若手の台頭、海外進出の停滞となります。

1、外国人エースの離脱
年間最大興行のレッスルキングダムのメインを務めた2人の若い外国人レスラー、ジェイホワイトとウィルオスプレイ。ジェイホワイトは今年の2月に、ウィルオスプレイは来年1月を最後にAEWに本拠を移します。

日本とアメリカの市場の大きさの違い、円安という事情もあり、2人の離脱にはそこまでファンの恨み言も聞きません。しかし、かつてオカダ内藤ジェイ飯伏で4強と言われた時代から新日本プロレスを見始めたので、間違いなくひとつの時代の終わりを痛感した出来事でした。

2、若手の台頭
出ていく人がいれば、また別の人が活躍するというのが組織の常です。
昨年凱旋した海野、成田に今年いきなりIWGP世界ヘビーに挑戦した辻の3人を令和闘魂三銃士としたのは話題を呼びました。ウィルオスプレイやオカダカズチカら団体の顔の選手と彼らを積極的にぶつけて、経験を積ませました。
外国人では上記ジェイホワイトとウィルオスプレイの2人に加えて、タッグ戦線で存在を見せ始めていたオージーオープンもAEWに合流してしまいましたが、代わりに抜擢されたゲイブキッドとアレックスコグリンが活躍。特にゲイブキッドは令和闘魂三銃士の3名やNOAHから参戦した清宮と同世代バチバチのライバル関係を作り上げた個人的MVPです。一強状態だったTJPとアキラのJr.タッグに比肩するクラークコナーズ&ドリラモロニーの登場も見事でした。

木谷オーナーにスターダムを見習えとブーブー文句を言われたからか、若手の育成過程も変化を感じます。今年ヤングライオンを卒業した藤田と大岩は団体を離れて修行のなかで一時凱旋してタッグリーグにも参戦。2年ほど修行期間のあった従来よりも早く凱旋も考えられます。

遅れて凱旋した上村選手もあわせて、来年かなり動くのではないでしょうか。

3海外進出の停滞
手痛い失敗もありました。かなり前からアメリカ進出を狙っていた新日本プロレスですが、コロナ禍を経て立ち上げていたNJPWstrongが縮小。起爆剤となるはずだった元WWEの女子スーパースター、メルセデスモネ(サーシャバンクス)は試合中の怪我で離脱。
AEWやIMPACTへの選手派遣などを含めた海外興行は黒字ということですが、新日本プロレス単独のさらなるアメリカ進出はいったん停止せざるをえないのではないでしょうか。

他団体の動き

今年の新日本プロレスは歓声が戻ってきたこともあってか非常に国内外問わず他団体との関わりが目立ちました。
国内ではNOAHの武藤敬司引退行、全日本への選手派遣、ドラゴンゲートを含む国内の多くの団体を巻き込んだジュニアの祭典オールスターフェスティバル、NOAH全日とのオールトゥギャザー、新日本プロレスを中心に政府への取り次ぎ先となるのプロレス協会の設立もありました。
国外ではオカダカズチカの海外遠征から不仲と言われたIMPACT(TNA)とも2回合同興行を行い、AEWはニュージャパンワールドで番組を配信するなどつながりをさらに深めています。またメキシコの老舗団体CMLLとも合同興行を行いました。オスプレイの古巣であるイギリスのRPWとも友好を維持しています。

さて、多くの名前をあげましたが「なんかたくさんの団体があるけど、新日本以外の団体はこの1年どうだったの?」ということで新日と関係が深い3つの団体の2023年を新日だけ追いかけている自分が聞く範囲で振り返りたいと思います。
スターダム
まずは新日本プロレスと同じブシロードグループの女子プロレス団体スターダム。昨年は合同興行のヒストリッククロスオーバーを行いました。また近年はイッテンヨン、レッスルキングダムにも提供試合で参戦。昨年は新日管轄のベルトIWGP女子王座が創設され、本戦で試合が行われたほか、アメリカ興行ではSTRONG女子王座が登場。アメリカ大会では地元アメリカの選手、日本から来た新日本とスターダムの選手がセットで動いてるカタチです。
ブシロードグループ入りする前から見て売上を5倍に伸ばしてきたとされるスターダム。木谷オーナーは新日本プロレスにもことあるごとに「スターダムを見習え」というようなメッセージを発信してきました。
そんな急拡大をしてきたパートナー団体ですが、今年はその歪みが出た印象です。

売上を伸ばすための興行数増加が故障者の続出につながり、試合数増加によりテーマの無い試合が増えたことへの選手の不満、そしてスタッフにも恐らく多忙な中でひとつひとつの仕事への集中という点で杜撰さが積もり、ついにはそれらが爆発。ひとつの事件をきっかけにファンが団体からそっぽを向いてしまう事態になりました。
オーナーもこれに反応し、社長が交代となり、来年はこれまでの路線を改めることになっています。
同じく社長が変更した新日本プロレスは、妹団体のこの事態にどうするのか?来年の合同興行はどのような方向性でいくのか?新日本管轄の二つのベルトは?
棚橋社長とスターダムの岡田社長は共に関西の学生プロレス出身。なにかコラボが見られるかもしれませんが立て直しの1年になるのでしょう。

AEW
新日本プロレスでも活躍したケニーオメガ、ヤングバックスが資産家トニーカーンと作ったまだ設立5年目にしてWWEに次ぐ世界2番手のプロレス団体AEW。トニーカーン社長は日本プロレスのファンであることから、新日本プロレスはビジネスパートナーとして多くの興行を共にしてきました。今は新日本プロレスのサブスクでAEWのテレビ番組も見ることが出来るなど、業務提携レベルです。一方で上記のジェイホワイト、オージーオープン、そしてウィルオスプレイなど団体のエース外国人が次々と入団していることから、あまり良くない印象を持っている新日ファンもいるでしょう。
そのAEWの今年の動きとしては、評価は難しいところです。イギリスで七万人規模のスーパーイベントALLINNを成功させたり、新しくテレビ番組を開始し3つの週番組を持つという拡大した一方で、観客者数や視聴者数は前年よりも下がっています。
下がった要因はやはり世界1位の団体WWEが新体制になり絶好調となっている点も大きいでしょう。2位というのは1位の調子によって左右されるものです。
ただそのことで社長のトニーカーンが露骨にWWEへの敵意をSNSでむき出しにしたり、AEW立ち上げから団体を支えてきた基幹スタッフたちの離脱も見られるなど大丈夫かな?という部分が少し目につきやすくなっているかたちです。
特にAEWは赤字が続いており、トニーカーンの莫大な資産でなりたっています。これは恐らく歴史のあるWWEや新日本プロレスらとの大きな違いで、選手を自分達でスカウトし育てるノウハウがまだ確立されていないAEWは外部から取ってくるしかない。そうすると報酬が高くしなくてはならない。
MLBの大谷翔平の年俸で沸いたように、アメリカと日本の賃金格差は大きくなっていますが、年俸調停の権利を得てない若手選手は日本と変わらないかむしろ低い金額に抑えられています。
それはWWEも同じで上の番組に出れるスーパースター以外の給与は日本の団体とさして変わらない(生活費が高い分むしろ下がる)。
AEWはそれが少なく出費がかさむ中で出資者であり団体を1人で動かしているトニーカーンが興を失ったら?不安があります。
新日本プロレスはAEWとの合同興行フォビドゥンドアで利益を得ているのも事実。最大手のWWEと結べない以上、アメリカでのビジネスはAEWとのつながりは避けて通れません。付かず離れず依存しすぎず、棚橋社長時代にどういう関係性となるのか楽しみです。

日本他団体
国内の男子団体では新日本プロレス、全日本プロレスとならんでメジャーという地位のプロレスリングNOAHですが、激動の1年を送りました。東スポの年間ベストバウトを獲得したムタVS中邑、新日のイッテンヨンを超える動員を果たした東京ドームでの引退興業行をはじめとした武藤敬司引退シリーズと、その後の全日本から移籍したジェイクリーをチャンピオンにした興行をおこなってきましたが、今後何を軸にしていくのかは不明です。清宮選手がオカダカズチカとの一騎打ちから始まりG1やタッグリーグなど新日に参戦していますが、その経験をNOAHにどう持ち込むのかに期待がかかります。
全日本プロレスは前半他団体へのベルト流出をはじめとした"土下座外交"と揶揄される展開が続きましたが、その間に若手の育成に努め、年末はファンも明るい期待を抱いた状態で締めくくったようです。
こちらの2団体に加えて、DDT、ドラゴンゲートなどとも選手を派遣など交流。去年まで近かったGLEATとは少し距離が離れたかな。
こうしたつながりが来年の展開にどう影響するのか、あるいはしないのか。

サブスク動画配信サービスの新日本プロレスWORLDがリニューアルに伴う動作不良など心配ごともありますが、おおむねこんな形でしょうか。
自分はこれまでのお気に入り選手だったジェイホワイトの退団、KENTAの試合減などもありましたが、新たにゲイブキッドを応援して行きたいと思った1年でした。来年は生え抜きの日本人選手も新たにお気に入りに出来ないか、注目していきたいですね。

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