乗り換え電車の6分間
朝から自宅で作業をして、少し遅めに会社に向かう11:30。
乗り換えの駅で見たその女の人はかっこよかった。
僕の眼の前を颯爽と歩いていき、ホームのベンチに座った。背は高くない。
短い黒髪を徐ろに後ろで結び、ベージュのジャケットシャツを羽織り、古着っぽい太めのデニム、足元は茶系のアシックスのスニーカー。それに今日は朝から雨が降っていたので、水色の傘を手に持っていた。
電車が来て、同じ車両に乗った。僕は偶然を装い、向かいの席に座る。別になんてことない、ただお互いにイヤホンをつけてスマホを眺めながら電車に乗っているだけ。そんな人たくさんいる。でもなぜか気になった。
どんなふうに笑うんだろう。
何を見てるんだろう。
なんでその明るい色の傘を選んだんだろう。
一緒に手に持ってるボロボロの紙袋は何が入ってるんだろう。
ていうか荷物それしかないけどどこ行ってるんだろう。
彼女は六本木で降りた。
僕はそれを見つめることしかできなかった。
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