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2022年に読んでよかった絵本

下の子が5歳になり、選り好みが強くなってきたので寝る前に読む絵本の傾向も昨年よりもグッと若返りました。10歳になる上の子も今でもときどき一緒に読んでます。あと3〜4年は子ども達と一緒に絵本を読めるかな。

なずず このっぺ? / 作)カーソン・エリス、訳)アーサー・ビナード

昆虫語で書かれた絵本。というと、ただ奇をてらったように聞こえてしまうけど、(人間の)言葉を使わずとも分かるハラハラドキドキするようなストーリー展開の見事さ、四季を通じた生命の輝きを描き出す作者の眼差しは、地上10cm以内に起こる、小さいけれど豊かな世界を確実に届けてくれる。子どもと一緒に昆虫語で読める美しく楽しい一冊。

メチャクサ / 作)ジョナサン・アレン、訳)岩城敏之

めちゃくちゃくさいヘラジカが主人公のメチャクサ。めちゃくちゃくさいので、森に住むスカンクたちの憧れのまとだという。その設定の面白さだけでも一読の価値がありますね。めちゃくちゃくさくたって、周りがいくら騒いでいたって、いつだってご機嫌で自分の好きなことを楽しんでいるメチャクサの生き方いいなあ。

のせのせせーの! / 文)斉藤倫 うきまる、絵)くのまり

絵も装丁もとびきり可愛く、「のせのせせーの!」を掛け声にページをめくる体験は何度読んでも楽しい。なんてかわいい絵本と思って読み進めると、最後に唐突にコズミックな世界に飛ばされる意外性も最高。

まつげの海のひこうせん / 作)山下明生、絵)杉浦範茂

小学生特有のリアリティに溢れた痛快な一冊。運動場で泣いている主人公の僕を尻目に「じゃ、気がすむまで、そこで死んでなさい」と言い放って去っていく担任の先生。けんかした友達に対して「あいつ、おちんちんをさかなにぱくりとたべられちゃうんだ」という妄想。お互いに「ごめんね」なんて必要のない仲直り。描写がリアルだからこそ想像力が羽ばたけることがよく分かる。グラフィックデザイナーでもある作者の大胆な構図と色彩による絵も魅力的。

まよなかのたたかい / 作)ティエリー・デデュー、絵)レミ・クールジョン、訳)おかべりか

夏の夜に誰もが経験があるだろう「まよなかのたたかい」を迫力満点の絵と、ラップのようなリズミカルな文章で描いたスピード感満載の一冊。読み終わると一試合終えたような疲労と爽快感がある。

やっぱり しごとば / 鈴木のりたけ

みんな大好き「しごとば」シリーズの新刊がでましたね。今作も変わらない徹底した取材と描画力。そして各所に散りばめられたユーモアに、何度もリピートすること確実の仕上がりです。

カーニマル / 正木賢一

動物のような不思議な乗り物に乗った人物たちが、不思議な世界をただただ横に進んでいく。という説明をすると実につまらなそうだけど、ぶっ飛んだスーパーマリオを眺めるようなトリップ感があり、ドラッギーな没入体験ができる。それゆえか子どももかなり好きな一冊。

月と少年 / 絵・文)エリック・ピュイバレ、訳)中井珠子

月夜の美しさを見事に具体化している表現主義的な絵が素晴らしい。そして登場する人物の名前がめちゃくちゃ良い。主人公のティモレオン、新聞売りのゴンザグ・ド・ラ・ガゼット、時計屋のロラン・パンデュル…。調べてみると古代ギリシアや、中世ヨーロッパで使われていた名前らしい。日本だと久兵衛とか甚左衛門みたいな感じなのかな。

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