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2023年1月に読んだ本

深い河 / 遠藤周作

これまでに読んだ小説の中で一番面白かったんじゃないか。誇張なしにそう思えるほど圧倒的な物語だった。誰しもが抱える「業」や「性」、拭うことのできない過去や、過ちと共に生きることの苦味が、ガンジス川という聖河を舞台に、登場人物それぞれの生き様として語られていく。山から湧き出た小さな流れが次第に集まり大河になるように、一人ひとりの小さな日常が集まって「個」を超える大きな物語となっていく構成も素晴らしく、ただただ胸を打たれる読書体験だった。

わたしが・棄てた・女 / 遠藤周作

「沈黙」「深い河」「海と毒薬」などに代表される純文学的作品に対して、軽小説的と呼ばれている遠藤周作作品の一つ。利己心の塊のような男<吉岡>と、利他の心でしか生きることができない女性<ミツ>の物語。主人公の吉岡は棄てたはずのミツのことを何故か忘れられずに、いつも心のどこかで追い求めてしまう。ミツが吉岡を求めた以上に、吉岡は失ったミツを生涯求めることになるだろうことを示唆する終わり方に「軽小説」とは全く呼べないような深さがあった。

海と毒薬 / 遠藤周作

本題への入り方が見事で「悪事と見なされることへの加担」が誰の身にも起こり得るというか、実際に事実として起きたことを突きつけられる。「沈黙」でも描かれた、時代や状況という大きな力の中での、個のあらがい、そして麻痺感覚が、お腹が痛くなるほどのリアリティで書かれてる。

雪国 / 川端康成

今年は日本の近代文学を読もうと思い手に取った。小説冒頭の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」しか知らなかったが、読後の感想としては「駒子かわいい」となった。主人公が妻子を置いて「雪国」という別世界に通い詰めてしまう気持ちも少し分かる。

もの食う人びと / 辺見庸

辺境から戦場、刑務所から修道院まで、世界各地で日常的に行われる「食う」という営みを追い求めた一冊。30年近く前の本だけど「食う」という普遍的な内容だけに、まさに今日も起きている事として読むことができる。現地で実際に共に食べることでしか言葉にできない「米が酸っぱく、水っぽい」といった舌の感覚に重みが宿っている。

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