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「見せしめと隠蔽」から、「対話」に基づく開かれた聖ヨハネ会へ

 私の務めている社会福祉法人聖ヨハネ会の特別養護老人ホーム・桜町聖ヨハネホーム(東京都小金井市)では職員の大量離職がいままさに進行中で、利用者の命や安全性が脅かされている状態です。

 総合サポートユニオンは、利用者の命を守ることや責任ある運営体制、私に対する不当な懲戒の撤回を求めて、法人に対し団体交渉を要求しています。しかし、この緊急事態にもかかわらず、法人は12月中の交渉を拒否するなど、不誠実な態度に終始しています。

 これまでの経過については、以下のnoteもお読みいただけると幸いです。

1回 社会福祉法人聖ヨハネ会は、介護施設の利用者の命を守ってください
2回 桜町聖ヨハネホームで介護崩壊が目前に迫っています

■隠蔽された退職理由

 すでに私たちのホームの問題は、小金井市議会でも取り上げられるなど、単なる一法人の枠を越えて問題化しつつあります。
 12月11日の小金井市議会の厚生文教委員会で、介護福祉課長は大量離職についてこんなふうに答えています。

「大量退職の状況っていうことなのですが、介護業界は非常に離職率が高いと指摘されております。全国的にでもですね」

 介護職40名弱がいる聖ヨハネホームでは、この1年に22名ほど辞めています(新規入職は10名)。同じようなことが全国的なことなのでしょうかか!?

 また介護福祉課長は、大量離職の理由を個人の事情というふうに聞いていると答弁していましたが、これも事実と異なります。
 私は11月に退職予定者8名に詳細な聞き取り調査をしていますが、誰一人として個人の都合を理由にしている人はいませんでした。 

 その退職理由を大きくまとめると、「過酷な労働」、「施設内の風通しの悪さ」、「介護職の意見を聞いてもらえない」、「多職種の連携がとれないこと」などが主な理由でした。
 つまり離職の要因は、職場の体質とか、ホーム・法人の構造的な問題、だったのです。
 それが個人の都合になってしまうというのは、法人と介護福祉課とがどんなコミュニケーションをとっていたのでしょうか。

 その退職予定者の聞き取りを11月中旬に公表した直後に、突然私は出勤停止の懲戒(ユニオンからの抗議の結果、今は業務都合の自宅待機に変更)となりました。私が集めた退職理由とその分析を元にした提言は、私が出勤停止となると同時に、ホーム側が回収してしまったとのことです。

 回収した理由をユニオンからの要求書でその理由を質問したところ、法人側は「内容に偏り(介護職からだけの意見しかないこと)がありますので共有に適さないと判断しました」といいます。

 「介護職の退職」が問題になっているから、当事者である介護職の意見を調査しているのに不思議な言葉です。
 介護職員の退職理由については、職員のプライバシーに配慮した上で、ほぼご本人の言葉を載せています。退職する職員の意見は、当然その方の主観的な意見であって然るべきで、それを偏っている、だから共有に適さないと判断し回収するということはいったいどういうことなのでしょうか?

■市民や家族に私たちの声を届ける

 小金井市の市民に広く私たちのホーム・法人の状態を知っていただくことと、16日の説明会&対話集会の案内をするために、14、15日の2日間にわたって小金井市内でビラをポスティングしました。

 その数、5000枚。

 ユニオンの人たちが路地という路地を隈なくまわり、道ですれ違う地域の方々に声をかけていきます。
 インターネット全盛の時代に、泥臭いことですが、利用者や職員の命や安全性を守るため、私たちも必死です。
 たいへんな労力でしたが、すべて配布しきりました。

 利用者のケアに差し障りが出るようになってからずいぶん時間が経ちましたが、家族への知らせていないことに対する私たちの意見を知ってか知らずか、法人側もようやく重い腰をあげて、12月16日17日の2回に分けて、ご家族への説明会を開催しました。
 はたして法人が真実を伝えるだろうか、と疑問に思った私たちはご家族に、違う角度から話を伝えたい、ご家族の意見をお聞きしたいと考えました。
 16日に説明会へ向かうご家族へ、私たちの知る情報とこの日の説明会と対話集会のご案内を載せたビラを手渡しで渡しました。
 ご家族はみな熱心に私たちの話を聞いて下さいましたが、初めて聞く話、聞いていた話と違うことに戸惑う方もいらっしゃいました。

■市民やご家族との対話

 同日の午後から小金井市商工会館の3階萌木ホールにて、聖ヨハネ会、聖ヨハネホームについて説明会を開催しました。

 集会にはビラや掲示板を見て駆け付けて下さった方、地域の人の声かけに応じてきてくれた方、この日のビラを見て来て下さったご家族、法人からのプレッシャーにも負けず参加してくれた職員、OBなど30名を超える方たちが集まって下さいました。

 集会の冒頭、私はホームで何が起こっているかを説明しました。これは単に今起きていることだけを伝えても、本来あったホームの良さとか、私たちの抱えている感覚的なことは伝わらない。
 正確で客観的な事実を正確に伝えることを意識しながらも、どんなふうに少しずつホームのケアが過酷な状況になっていったかを、対話の原点に立って私を主語にして伝えました。
 アンケートには複雑で理解しづらかったとの意見もありましたが、おおむねこれまでの経緯を理解していただけた様子です。

 後半の対話集会では、「ご家族からこんなビラをもらって驚いた。怖くなった」という厳しい意見も寄せられました。
 私からは不安を与えてしまったことをお詫びしつつ、ご家族へは正確な事実をお知らせすることが必要だと思っていたこと、皆さんのお気持ちやお考えを聞かせてほしいと願っていたこと、をお伝えしています。その後、活発なご意見や、この日の家族への説明会のお話などお聞きすることが出来ました。
 私たちへ厳しいご意見を伝えつつも、最後まで対話に参加していただけたこと、そして「昔はもっと家族会に横のつながりがあった、今度は他の家族も誘ってみたい」とのお言葉が聞けたことは、私たちにとって何よりもありがたいことでした。 そのご家族の伝えて下さった法人による家族への説明の様子を聞いて、このような趣旨の発言をなさった方がいました。

「法人は、利用者家族に病院に行ってもよい、他施設に行ってもよい、これは一見もっともなように見えて、法人が責任を放棄していることではないか」

 他にもこれまで法人をよくしようとしてきたOBなどからも、私に行われているやり方とよく似たハラスメント行為によって自分たちが排除されてきたということ、こういうことが今なおずっと法人組織において繰り返されていること、そういうことは絶対にやめさせなければいけない、そういう意見もありました。

 その一方で教会や修道会のシスターに対する強い信頼をおっしゃる方も多くいらっしゃいました。こういう(私たちの配った)ビラ以外にも、シスターからの言葉も聞きたい、そういう意見もありました。
 「社会福祉法人聖ヨハネ会」そのものは厳密には、社会福祉のための法人であって、宗教組織ではありません。その混同が「社会福祉法人聖ヨハネ会」の内外にあって、それが今日抱えている課題を生み出している原因の一つだと私は感じていますが、教会や修道会、シスターたちへの敬意が「社会福祉法人聖ヨハネ会」に対する信頼を支えていることも改めて強く感じたのでした。

■地域やご家族とともにある桜町聖ヨハネホームへ

 対話集会がが終わった後、多くの方がアンケートを残して下さいました。

「今日の問題に至る経過がよく分かりました」「現場の職員さんのお話が本当に身を切られるような辛さで、今日来て初めて知りました。介護職の方々が申し訳なく思われる(制限しかないのに)ことなどないはずなのですが…どれだけ力を尽くしてくださっているのかと思います。一地域住民として、せめて何のお手伝いができるのか、またビラやノートでお知らせ願えたら幸いです。」
など温かい励ましの言葉をいただきました。

聖ヨハネ会に対しては
「小金井市の中で早くから高齢福祉にとりくんでこられたのは市民も注目してきたところですが、利用者の方がたいへんな状況に追いこまれないように理事はしっかりと働く人々と話し合い、厳しい意見もチャンスととらえ、働けるようにして下さい。」
「法人と施設職員とのコミュニケーション不足。第三者を交えた話し合いが必要」
「現場の声を無視しても状況は何も改善しません。
法人を守るためにも、対話に応じる必要があるのではないでしょうか。」
と職員との対話を求める意見が非常に多く見られました。
これはまた私たちにも求められているもの、と言えると思います。」

ご家族からも
「小金井初の介護施設、看取りなどもあり、小金井市のみならず評判の良い所でした。どうか職員の方々がプライドをもって長く働けるように改善していただきたいです。
日々おまかせばかりして申し訳なく存じてますが、切に願います。」
・ヨハネホームに母を迎えてくださり、本当に感謝しております。
(中略)介護の現場の話を良く聞いて、すこしでも改善していただきたい。
これまでの良いふんいきを伝統として残していただきつつ、介護職員、入所者が健やかにすごせるよう対応をしていただきたいと思います。」
など、切実な意見が寄せられていました。

他に「小金井市にも、正式にお伝えして、見解が知りたい。」
など小金井市に対する言葉もありました。

どの意見も大切な意見としてお聞きしていた中で、私があっと思ったのは、『「ヨハネ会を支援する会」のような市民の会を作って、対話の場を継続していくのはどうでしょうか。』
というご意見でした。
私たちへのご叱責も含め、市民やご家族、職員が集って対話をする場。
そうした場が継続的に開催できるなら、再びみなに愛され、利用者やご家族のみならず、地域社会に貢献できる、透明で開かれた聖ヨハネ会を築いていけるかもしれない。
こうした開かれた対話の場を続けていきたい、今そんなふうに考えています。

 私たちも法人側との対話を求めています。
 わたし自身これまでダイアローグ(対話)についてずっと深く学んできましたが、対話にとって何より大切なのは、相手に対する敬意と、対話についての安心感です。
 自分にとって苦い意見を言う人物に無実の罪を着せ人権侵害を行ったり、憲法や法律で保障された組合の活動を妨害するなど、職員を恐怖や不安で支配しようとしては本当の対話というものはできません。
 またこうした行為がある限り、職員は自由に発言することができず、強い不安を抱かせる職場から人材流出は止まらないのです。
 なにより、社会福祉法人聖ヨハネ会の理念は、そもそもこのような「力で支配し、恐怖や不安を煽る」ところにあるはずがありません。どうして、以前にはなかったこのような事態がこの10数年間のあいだに急激に生じているのでしょうか。そこに強い疑念を私たちは持っています。
 適切な対話を行っていくためにも、法人側へはこうした職員や組合を敵視するような行為を改め、これまで行ってきたハラスメント行為に対する反省を求めたいと思います。
 また団体交渉でも、みなさまのご意見を生かしてまいりたいと思います。
どうぞ、私たちのホームへのお力添えを、これからもよろしくお願いいたします。

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