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目の前にある世界が色を変えた時

1冊の本との出会いが人の人生を変えることがある。
そんな大げさなものではなくても、大きく色を変え回転し見えていた世界を変える瞬間がある。
世界が姿を変えたのか、自分が新しい世界を見始めたのかはこの際はどちらでもいい。

世界が姿を変えるきっかけという意味では本以外にもたくさんのキーになる物事はあるけれど、本で言うなら忘れもしない小学5年生の時に読んだ村上春樹の『ノルウェイの森』になる。11歳という短い人生でインパクトを受ける経験が少なかったこともあるかもしれない。でも後にも先にもこの本ほど衝撃を受けた本はない。

たまたま家にあったその本を手に取ったのは偶然で、でも読み始めたら止まらなくなって夢中で読んだ。
学校の図書室にある本とは全然違っていて、なんとなく背徳感を感じながらも止めることができなかった。
気が付いたら夕暮れになっていた窓の夕日のあかりも今でもくっきりと覚えてる。

ラストシーンを読み終えた時、自分を取り囲む世界ががっくりと変化する音が聞こえた。
顔を上げた私のほほに当たる夕日は昨日と何も変わらないのに、そのほほを持つ私は明らかに昨日の自分とは違っていた。
もう戻れないこともなぜか明確に分かっていた。周りを見回してもそこにあるのは新しい世界で、心細くて不安になった。
新しい世界に戸惑いながらも新鮮さと好奇心にどきどきしたことも覚えている。

その後、何度も事あるごとに繰り返し読むけれどその度に音を立てて変わっていった世界のことを思う。
今いるこの世界は、あの時とどう変わったのだろう?
昨日までいた世界に今日は戻れないように、あの頃いた世界には今はもう戻れないのだけど。

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