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地球危機の未来:2123年の2つの姿

前回の記事から少し間が空いてしまいましたが、近況報告も兼ねてnoteを書いています。夏が終わり、短い秋の間、いかがお過ごしでしょうか?私はこの会議シーズン、今年も裏方に回っており、日々、会議文章の作成や、そもそも作成する前の準備を含めたリサーチ、各国の最新情報の把握等で、なんだか学生時代の研究を思い出す日々です。と言っても、今実際に行っているのは、研究でもなく、コンサル業でもなく、国連加盟国、特に廃棄物問題を抱えている多くの国の根本的な問題や、最新の国際情勢や動向を踏まえた新たな知識開発、と言うのが主な仕事です。

と言いつつも、最新な知識開発とはいうものの、環境問題、つまり人間の問題を解決するためには、そもそも論をいかに現在の最新動向に入れ込んでいくのかであったり、喫緊な問題に対応するために世界の目線が集まる中、長期的な対策や更なる新たな環境問題=人間の問題を引き起こさないようにするためにはどうするべきか、と言う哲学的思考も取り入れなければなりません。

この2カ月の間も、色々な場で、専門分野の廃棄物、それを飛び越えた脱炭素やカーボンポジティブ、ブルーカーボンにブルーオーシャン、環境と経済、環境とジェンダーなど、幅広い課題をつなげて議論する機会もたくさんありました。私も意見を述べさせてもらいますが、多くの先生の多角的な考え方には、いつも学ぶところがあります。また、講義等にも声をかけていただき、最近は、専門分野を中心として地球三大危機、その現時点の課題と長期的な展望、その対策等に関して自分なりの意見を統合させた講義をさせていただいております。こちらの方が僕的にも講義、と言うよりも問題点やその対策を複合的に組み合わせるので、思って以上に話しやすく、参加者の皆さんの興味をより引き付けることができるようになったと思います。

今年もJICA研修に呼んでいただいたのですが、新たな取組をしてみました。いただいた講義時間は2時間30分あったので、100年後の気候変動対策と循環経済社会への転換に成功した未来社会、とそうでない社会を考えてみよう、と言うものでした。未来社会へ負の遺産を残さない、と言うメッセージを込めて、皆さんと考えてみました。私が考えた未来社会は以下の2パターンです。

2123年10月:気候変動対策と循環経済社会への転換に成功した未来社会

この世の中には、環境汚染という単語はもはや存在しません。100年前のSDGsの達成、それを起爆材として主要国でカーボンニュートラルと循環経済社会の実施が2050年までに完了し、21世紀末までにすべての国や地域において線形経済から循環経済に移行も完了しています。また、低所得国に所属する途上国はあるものの、ほぼすべての国で最低限の生計を立てる賃金を得ることができるようになりました。

地球全体が資本主義からサステナブル主義への転換を遂げました。サステナブル主義は、資本主義で外部経済と呼ばれた環境汚染と保護にかかるコストを経済内で適切に確保し、企業の事業展開の中心に位置づけ、民間企業の利益を環境汚染の未然防止対策に投入することで、企業自体の価値を向上させる考え方です。このため、資本家から資金を得るための指標として確立され、経済が発展すればするほど、環境対策も一層強化される社会になっています。

政府は引続き法制度の制定や見直し、管理・実施の役割を果たしていますが、サステナブル主義では、経済の資本という大きな流れがすべてサステナブルと結びついています。100年前に議論されていた、経済発展を続けるか、その速度を落としてでも環境問題対策を実施するか、という問題は既に決着がついており、経済の発展と地球環境がサステナブルな状況、すなわち地球そのものの状態と人間社会が一致した社会構造が実現しました。

サステナブル主義社会では「ごみ」という概念も存在しません。すべての物資は再生資源化され、地球上の人間社会で循環します。例えばプラスチックごみ。約100年前にはプラスチック汚染対策条約が作成されていましたが、現在では世界中のプラスチックがAIによって追跡され、どの種類がどこにあるかが把握されています。以前は「使い捨てプラスチック」という言葉が一般的でしたが、今では使い捨てという概念さえも消え去りました。現在では、わずかな種類の高度プラスチック素材しか使用されておらず、これらの新素材は21世紀末までに開発されました。基本的にはプラスチックに変わりはありませんが、使用後はそれぞれの高度プラスチック素材に分別され、各家庭や組織が備えるプラスチック再生機器に投入され、その場で再資源化が可能です。

それを各家庭や組織の3Dプリンターで別のプラスチック製品に再加工することができます。例えば、昨日の夕食に使用した野菜パッケージに使われていたプラスチック容器を、再生機器と3Dプリンターを使用して、今日の学校のお弁当箱に再利用することも可能です。再資源化は各家庭や組織が自己管理する必要がありますが、再生資源素材を指定の場所に持ち込めば、それを引き取ってくれる場所も存在します。また、サステナブル主義社会では、日常生活でごみを出すこと自体が「ゴミ恥」となっています。

街の景観も変わりました。約100年前、建物の主要な素材は鉄筋コンクリートでした。特に日本のような自然災害が頻繁な地域では、鉄筋コンクリートの使用が建築基準法で義務付けられていました。しかし、現在は、プラスチック再生新素材を使用し、3Dプリンターで建物が建設されています。もはや「建設」という言葉は適さないでしょう。なぜなら、3Dプリンターによって立体的に作成されるからです。建設期間も1/10、コストも1/10となり、人口減少が安定し、日本の人口は約100年前の半分である6000万人まで減少しました。それでも、すべての人々が、サステナブル主義にふさわしい方法で都市部でコンパクトに生活しています。若いうちから自分の家を持ち、引っ越しのたびに3Dプリンターで好きな間取りの家を作ることが普通の時代になりました。

2123年10月の昼間の気温は25℃です。約300年前、産業革命前の気温は約22℃ほどでした。カーボンニュートラルのサステナブル主義社会となったとしても、過去の大きな影響の結果、世界の平均気温上昇を約1.5℃程度に抑えることができました。しかし、1.5℃は上昇。これは、人間が長らく排出し続けた温暖化物質の影響が地球全体に広がったことを示しています。

2123年:気候変動対策、循環型経済社会、プラスチックごみ対策も失敗した社会

東京、2123年10月、午後3時の気温は35℃です。真夏には45℃にも達します。冬の日中の気温も25℃にもなり、雪を見ることは過去の話となりました。ウィンタースポーツはすべて屋内施設で行われ、冬季オリンピックも夏季と合併し、屋内競技の大会として行われています。この状況において真夏の45℃の気温では屋外での活動が危険です。

気候変動対策は失敗しました。かつてカーボンニュートラルを目指しましたが、地球環境問題は他人事のように扱われ、誰かが対策を講じるだろうという錯覚が続いたためです。2050年以降、政府、企業、NGO、国連機関は責任の押し付け合いに明け暮れ、気候変動対策よりも気温上昇への適応策を選ぶ政策が中心となりました。これに伴い、都市部ではビルとビル、建物と建物を接続し、歩道や道路に屋根を付けるなどの既存のインフラを更新する必要が生じました。しかし、建物やインフラは老朽化しており、地球上でのコロニー化計画が進行しております。これは一部の先進国の特権的な事情です。

しかし、これは一握りの人々に過ぎません。世界人口110億人のうち、90億人もの多くの人々はスラム地域での生活を余儀なくされています。つまり、世界的に経済政策も失敗に終わりました。格差是正を掲げていた100年前の政策、環境対策にも、経済政策にも、結果的に中途半端な対策しか取ることができず、ルールを作る側にいるものとそのルールが適応された超資本主義社会の中にいるもの、ルールを守る側にいるもの間には、圧倒的な経済格差が生まれてしまいました。超資本主義社会にいる20億人の平均最低ラインは1000万ドル(約10億円)にも達しますが、超貧困層の平均収入は1万ドル(約100万円)です。スラム街では、家族3人が最低限の食事と最低限の生活を維持し、ギリギリの状況にあります。

スラム地域では気温の上昇による影響がより深刻で、住民たちは過酷な条件下で生活しています。住居はかつての住宅からの廃材から作られ、適切な断熱や冷暖房がないため、炎天下や猛暑の日には蒸し風呂のような暑さが辛く、住民たちはその暑さに耐えねばなりません。窓やドアが不完全であるため、室内の熱気がこもり、夜間でも気温が下がりにくい状況です。この結果、熱中症や熱中症、その他の健康問題のリスクが高まっています。

また、スラム地域の住民たちには適切な飲料水や衛生施設へのアクセスが制限されており、高温のために必要水分摂取量が増えているにもかかわらず、清潔な水へのアクセスが制約されており、水不足の問題が深刻です。これは健康問題や生活衛生に影響を及ぼし、感染症のリスクを高めています。気温上昇に加えて、気候変動による自然災害もスラム地域の住民たちにとって深刻な問題です。洪水や台風が頻繁に発生し、低地に追いやられているスラム地域は特に影響を受けやすく、住民たちは度々避難を余儀なくされます。このような自然災害は住民たちに財産喪失や生計の破壊をもたらし、再建することが難しい状況を生み出しています。

経済的に厳しい状況のため、気温上昇による健康被害や自然災害に対する備えが不足しています。多くのスラム地域では基本的な生活必需品ですら不足しており、持続可能なエネルギーへのアクセスや災害対策の支援が不足しています。多くの住民たちは過酷な条件下で生活を続け、気温上昇の影響を受けています。このような状況は、気候変動の影響が最も深刻な人々の中で不平等を広げています。国際社会と地域の支援が不可欠であり、気温上昇に対する適切な対策や災害リスク軽減策の実施が急務です。これらのスラム地域での生活状況は、気候変動問題の緊急性を改めて浮き彫りにし、包括的な国際的対策の必要性を示しています。

未来がどうなるかは私たちの手の中にある

"地球危機の未来: 2123年の2つの姿" は、私たちに未来を形作る選択肢があることを教えてくれる物語です。文中で描かれた二つの未来は、私たちが今すべき行動に依存しています。2050年以降、地球の環境と経済に対する取組みが決定的な役割を果たし、その結果が2123年の世界を作り上げます。

一方の未来では、持続可能なサステナブル主義が勝ち、地球全体が資本主義からサステナブル主義への転換を遂げました。気候変動に対する果敢な対策が取られ、環境汚染と格差は減少しました。再生可能なリソースの循環が繁栄し、プラスチックごみ問題も解決しました。この未来は、私たちの環境に対する責任を果たし、地球と共存する方法を見つけたことを示しています。

しかし、もう一つの未来では、気候変動対策と環境への無関心が拡大し、気温上昇による厳しい現実が待っています。持続可能な方法を見つける代わりに、適応策を採用しました。これは、私たちが環境問題を他人事と考え、行動しない選択をした結果です。2050年以降の対策の欠如が、2123年の環境に壊滅的な影響を及ぼしました。

これらの二つの未来は、私たちが持つ選択肢を示しています。環境への配慮と行動は、未来の世界を変える力を持っています。持続可能な方法を追求し、地球に優しく生きる方法を模索することは、私たちの責任です。未来がどうなるかは、今日の行動にかかっています。私たちが環境への責任を果たし、持続可能な未来を築くために、今日から行動を起こすことが必要です。

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