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法務委:司法・法務・検察行政等調査 質疑(井出庸生2019/03/26)

司法・法務行政等に関する調査【衆議院法務委員会】※要旨
 裁判所の司法行政に関する件
 法務行政及び検察行政に関する件
 国内治安に関する件
 人権擁護に関する件

裁判記録保存 重要文書のリスト作成/公文書館移管

○井出庸生委員 昨日の毎日新聞に、裁判記録について、「刑事裁判記録保存 プライバシーに配慮し活用策を」という上川陽子前法務大臣のインタビュー記事が載った。
 公開の法廷で審理される刑事裁判の記録は検察庁に保管されるが、法務省は昨年、一定の時間がたった重要な記録のリストをまず公表し、公開を前提に国立公文書館にそうした重要な記録を移していく方針を打ち出した。
 上川前大臣はインタビューの中で、「公文書は将来の国民も含めた共通の知的財産で健全な民主主義を支える基盤だ。刑事裁判の記録にも歴史的価値が非常に高い貴重な文書が含まれる」「重要な記録は100年先の国民がその判断を参考にしたり、検証したりできるようにすべきだ」と。この「100年先」というのは極めて重要な考え方であろうと思う。
 上川さんは、「法相就任後、刑事裁判記録の一部を(検察庁から)国立公文書館に移して活用できないかと考え」て、実際にその重要な記録、刑事参考記録と言われている重要な記録を確認している。「重要な記録は本当によく残している」と。
 こうした記録は、実は現在でも法務大臣・総理大臣の合意で国立公文書館に移管できるが、現状は、谷垣法務大臣のときに軍法会議の記録を移しただけにとどまっている。上川さんが軍法会議以外の重要記録も移すべきだと考えたのはどうしてなのかと問われ、ここも非常に大事なのだが、「個人の名誉・プライバシーと、国立公文書館で保存する公共性とを調和させる知恵があるのではないかと考えた」と。
 これはもうとりあえずとかではなく、本格的に刑事裁判記録の国立公文書館への移管の検討を、第一歩をしたいと、そうお考えなのではないか。昨年の国会答弁でやっていただけたら感動して涙を流したと思うが、大変いいインタビューだと思う。刑事参考記録のリストについても、「将来の国民の利益に奉仕しようとする研究者の要望に応えなければいけない」「法務省には早期に結論を出してほしい」と。これ本当に上川大臣に国会答弁でやっていただきたかったが、後任の山下大臣にこのことを国会答弁に残していただきたいと思う。積極的な答弁をお願いしたい。
○山下貴司法務大臣 昨年4月に法務省内に公文書管理・電子決済推進に関するプロジェクトチームが立ち上がり、刑事参考記録を含む刑事裁判記録の保管のあり方等についてさまざまな検討が行われ、昨年9月、当時の上川法務大臣において、それまでの検討状況を踏まえ、刑事参考記録の国立公文書館への移管を試行すること及び刑事参考記録のリストを作成し開示するなどの方針を示したものだ。
 昨年9月に示された方向性について、私も当時の法務大臣政務官としてプロジェクトにかかわったが、明治期前半の治罪法時代の刑事参考記録を対象として、まずは1件ないし数件の刑事参考記録の移管を試行するなど、移管の実現に向けて一歩進んだものであると考えている。
 もっとも、移管を実現するためには相当古い時期の刑事参考記録の内容を確認した上で、記録の内容を公にした場合の事件関係者の名誉・プライバシー等を害するおそれの有無や程度等といった問題点の洗い出しを行うとともに、移管のプロセスについて関係機関と協議することが必要であり、また事件関係者のプライバシーに配慮した事件の特定のあり方等についての検討を行うことも必要であり、まさに上前大臣指摘の「知恵」が必要になるということで、今、事務方レベルでの作業を努めているところだ。
 私としても、速やかに課題についての検討を進め、刑事参考記録の移管の試行及びリストの作成を実現したいと考えている。今後も上川前大臣の思いをしっかりと受け継いで取り組んでまいりたい。
○井出庸生委員 試行的な移管という話があったが、上川前大臣は最後に、「試行的な移管を通じて課題を洗い出し、コンスタントに移管が進むようガイドラインを示す必要がある」と。これも大変すばらしいご発言だ。ぜひこのガイドラインも進めていただきたいと思うが一言お願いしたい。
○山下貴司法務大臣 今、事務方を中心に検討を、どのような形の移管があるのかということで、事務レベルの作業を進めている。詳細については、必要であれば刑事局長からお願いしたい。
○井出庸生委員 後で詳細を伺いたい。
 刑事裁判は、今こうやって、公文書館への移管と、刑事参考記録という重要文書のリストを公開しようという流れになっている。刑事裁判の刑事参考記録は、例えば昨年の7月末だったら722件と、毎年法務省は把握している。
 こういうことをぜひ民事の分野でも、今一体どれだけ特別保存されている文書があるかリストを各地裁でつくって最高裁で把握する、特別保存記録の全容の把握を進めていただきたいと思うが、いかがか。
○村田斉志最高裁判所事務総局総務局長 民事事件の記録について、事件記録等保存規程9条2項の特別保存に付された場合、各裁判所において事件ごとに特別保存記録等保存表を作成しなければならないことになっている。この保存表は司法行政文書に当たり、情報公開の対象になるので、これとは別に一覧表のようなリストを重ねて作成し公開する必要性は低いと思っている。
 最高裁判所の把握という点では、この特別保存に付した場合には最高裁事務総局総務局に報告することになっており、その報告を受けて把握している。
○井出庸生委員 その報告の文書の保存期限が3年しかないから全容がわからないというのが現状だと思う。一体どこにどれだけの記録があるのか、刑事裁判のほうで今検討してもらっているようなリストをつくっていかなければ、この上川さんのお言葉、「将来の国民の利益に奉仕しようとする研究者の要望」、これは民事にもあると思うので、また引き続き聞いていきたい。

性犯罪の実態把握

○井出庸生委員 性犯罪の問題、質問のたびに1本はするという決意を持って今国会で臨んでいる。
 前回の大臣の答弁で、性犯罪被害を少なくするべきという点においては、大臣も私と同じ思いであると。もうこれは「釈迦に説法」だと思うが、性犯罪というのは、被害届の件数を減らせばいいというものではない。被害届が出せない方もいらっしゃる。
 きょうは一つ数字をご紹介したいが、ことしの1月に日弁連で勉強会があり、「医療の現場からみた『性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの現状と課題』」というタイトルで、性暴力救援センター大阪SACHICO代表の加藤治子さんがお話をされていた。大臣もよくご存じだと思うが、内閣府の「男女間における暴力に関する調査」で、「無理やりに性交等されたことがある」が女性では7.8%。3年ごとの調査だが、この7.8%というのはほぼ一定している。
 5150万人の成人女性に7.8%を当てはめると、401万7000人。この調査は60歳以上が4割おり、401万7000人を60で割ると、おおよそ年間に6万6950人という数字が出てくる。これは1年間に6万人から7万人の女性が、「無理やりに性交等されたことがある」と感じざるを得ない体験をされているのではないか。
 この7.8%というのは、繰り返しになるが、3年ごとに調査をしても同じような数字が出ている。この現実についてもやはり重く受けとめていただきたいと思うが、この数字についての見解を伺いたい。
○山下貴司法務大臣 計算上の数字については法務大臣としてコメントを差し控えさせていただきたいが、先般も申し上げたとおり、実態をしっかり把握した上で検討すべきということについては、いわゆる暗数も含めて性犯罪被害の実態を把握することにより、性犯罪被害で苦しむ方が少なくなるよう努めてまいりたい。
 平成29年に成立した刑法の一部を改正する法律の附帯決議においても、性犯罪被害が潜在化しやすいものであることが指摘されており、また当省の法務総合研究所において計4回実施した犯罪被害実態、これはいわゆる暗数調査だが、性的な被害には暗数が相当数あることがうかがわれている。
 今、「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ」において性犯罪被害者からのヒアリング等を実施し、法総研においても、捜査機関への申告の有無等も含め、第5回の犯罪被害実態調査、暗数調査を行っているところだ。そういったところでしっかりと把握し、適切な対応を考えてまいりたい。
○井出庸生委員 いじめ、体罰、児童虐待、そういったものがいけないということがわかるにつれて、相談件数がふえる。そういう事例がふえるということは、「警察は何やってんだ」「児相は何やってるんだ」「防げていないじゃないか」という話ではなく、暗数が出てきているという一面もあろうかと思う。
 性犯罪も必ず、性犯罪とは何がいけないんだということをきちっと今後の議論で周知できれば、必ずもっと相談も出てくるだろうし、それに対する対応というのも迫られる。特に、その暗数に頭の中心をおいた検討・実態把握をぜひお願いしたいと思う。
○山下貴司法務大臣 委員のご指摘を踏まえ、声を上げられなかった方々の声をできるだけ拾い上げていく、そういった努力をしてまいりたい。

(以上)

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