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国交委:大臣所信に対する質疑(広田一2019/03/08)

大臣所信に対する質疑(衆議院国土交通委員会) *要旨

被災鉄道の早期復旧のための法整備

○広田一 本日は、鉄道政策、そして時間があれば住宅政策について質問させていただきたい。 まず鉄道政策だが、大規模な自然災害に伴い被災をした鉄道の早期復旧に係る課題について伺いたい。
 昨年7月の西日本豪雨災害の復旧においては、道路分野や河川分野と連携を図ることにより一体的な工事を実施し、これによって復旧時期を前倒しすることができた好事例がある。これは関係者の皆さんの連携や協働の重要性を改めて示した事例だろうと思う。
 一方で課題も出てきた。復旧工事を進める上での課題としては、工事の進め方について、鉄道沿線の地権者の皆さんのご理解を得ることができず、本来であれば重機を使うと短期間でできる復旧作業にもかかわらず、去年の夏のあの酷暑の中、作業員の皆さんが手作業で行った事例も出ている。結果として復旧に時間を要してしまった。さらには、現場の作業員の皆さんに過重な負担を強いることになった。
 このような事態を改善するためには、復旧にかかる地域の全ての皆さんとの連携・協働を積極的に図っていくことはもちろん、道路法に規定されているような、やむを得ない必要がある場合は一時的な土地の使用などが可能となる法整備が必要になると思うが、この点についてのご所見を伺いたい。
○石井啓一国土交通大臣 昨年7月の豪雨災害などでは、鉄道事業者が管理していない隣接斜面から土砂が流入する災害が発生しており、鉄道事業者は必要に応じて隣接斜面の所有者と協議の上、流入土砂の撤去等を行っている。被害を受けた鉄道事業者からは、道路法に規定されているような土地の一時的な使用などが可能な制度が求められており、これを受け、現在、鉄道局において、道路法の規定などを参考に、民間事業である鉄道においてどのような対応が可能か検討を進めている。
 なお、委員からもご紹介いただいたが、平成30年7月豪雨の際には鉄道事業者と国土交通省関係部局からなる連絡調整会議を設置し、道路や河川などの関連事業と連携調整することにより円滑な鉄道の復旧を進める仕組みを構築した。国土交通省としては、このような仕組みも活用し、被災した鉄道が早期に復旧されるよう必要な支援を行っていきたい。
○広田一委員 現在検討中ということだが、西日本豪雨が発生してから早8カ月経過した。実は昨年の11月に津村議員からも関連した質問があったが、それからもう4カ月が経過している。その際にも石井大臣からは、関係者等と検討中であるという旨の、同様の答弁があったと記憶している。
 桜が散れば梅雨が来て、台風シーズンも到来する。鋭意精力的に検討していただいていることは理解するが、いつまでに成案を得るつもりなのか。また、もう少し具体的な検討状況、これは鉄道局長でも構わないのでご答弁いただければと思う。
○蒲生篤実国土交通省鉄道局長 現在、局内において専門の検討チームをつくっている。この案件に関しては、他人の私権との関係の調整という問題もあるので、そういった面も含めて効率的な論点などを深掘りしているところだが、スピード感を持ってやるようにというご指摘だったので、しっかりと部下を督励して検討していきたい。
○広田一委員 若干聞き方を変えるが、道路法68条に準じた規定になるのだろうと思うが、これに準じた規定をつくる際に、現時点では何が課題になっているのか、何が論点になっているのか、もう少し具体的に示していただければと思う。
○蒲生篤実国土交通省鉄道局長 道路と鉄道の比較における大きな差異は、道路はいわゆる公物であり、公物をどう守るか、公物の復旧をどうするかという観点からああいう規定が置かれているのではないかと思っているが、一方で鉄道はあくまでも民間事業によるもので、公益性というのは非常に高いが、そういった意味では道路と同列に論じられるかどうかということに関しての検討を深めているところだ。
○広田一委員 確かにご指摘のところはある意味根本的な論点になるのだろうと思うが、交通政策基本法ができてから、鉄道も含め公共交通をどうするのか、道路や鉄道等々の公共性というものが非常に高まっているのだろうと思う。
 あわせて、これだけ頻繁に災害が発生する、こういう時代になったわけで、それを早期に復旧していくということになった場合、やはり総合的に考えて道路法68条に準じた規定はなるべく早く、台風シーズンが来るまでにはきちっとした方向性を出していかなければいけないのではないか。
 この点、蒲生局長の決意も含めて見解をいただきたい。
○蒲生篤実国土交通省鉄道局長 非常に災害が厳しくなっているので、しっかりした形で検討を進めたいと思っているが、「なるべく早く」というだけの回答になるが、しっかり取り組みたい。
○広田一委員 きょうはこれ以上詰めないが、なるべく早く成案を得るように努力をしていただければと思う。

復旧工事の費用負担のあり方

○広田一委員 次に、災害復旧における負担のあり方について伺いたい。
 現状では、鉄道事業者が管理をしていない隣接している斜面から土砂が流れ込んで災害が発生し、その復旧を行う場合、公共工事にならなければ、被害者でもある鉄道事業者が費用を負担することになっている。
 例えば、JR連合の調査によると、西日本豪雨災害によって山口県の山陽本線の光駅から島田駅間の鉄道用地外、所有は沿線自治体だったらしいが、そこから土砂崩れが発生し、3度にもわたって鉄道用地内に土砂が流入。その都度、鉄道事業者みずからが土砂を撤去し、そして再発防止ではないが、これは鉄道用地外では補修をすることができないので、対策としては鉄道用地内に土砂流入を防ぐようなコンクリート壁を建てる工事を行ったということだ。広島県の呉線の水尻駅であるとか、広島県の瀬野駅から八本松駅間でも同様な事例がある。
 このように鉄道用地以外からの土砂や流木の流入によって被害が拡大をしている、こういったことに鑑みれば、先ほど挙げた事例のように鉄道事業者のみの負担で土砂を撤去したり防護壁をつくったりするは余りにも不合理ではないか。やはり鉄道事業者だけではなく地権者、先ほどであれば地方自治体もそうだが、国も関与した負担のあり方を見直して、この法整備・法改正も含めて改善すべきでないかなと思うが、ご所見を伺いたい。
○石井啓一国土交通大臣 昨年7月豪雨などでは、鉄道事業者が管理する用地外の斜面が被災し、鉄道事業者が当該斜面の地権者に承諾を得た上で、みずからの負担で復旧している事例があった。このように自社で管理する斜面以外が被災した場合にも、JR四国など経営の厳しい鉄道事業者等に対しては、鉄道軌道整備法に基づく支援制度により、鉄道事業者が実施する斜面対策を支援している。
 また、斜面からの土砂流入による鉄道の被害を未然に防止することも必要なことから、昨年秋に重要インフラの緊急点検を実施し、3カ年で緊急に対策を講じる必要のある斜面を抽出した。
 あわせて、これらの未然防止のための斜面対策に対して支援する制度を創設したところだが、この制度でも鉄道事業者が管理する用地であるか否かにかかわらず、鉄道事業者が実施する斜面対策を支援することを可能としている。
 国土交通省としては、こういった支援制度を活用し、他事業との連携も含めて、災害を受けた場合の早期復旧や災害の未然防止を図ってまいりたい。
○広田一委員 確かに経営が厳しい会社と比較的順調にいっているところでは文字どおり違う対応になるのかもしれないが、ことの根本が自分が所有していない敷地外から、しかも地方自治体が管理しているところから土砂が流入して、その撤去や対策についてまで鉄道事業者のみの負担でやるということが本当に適当なのかどうか。これは会社の経営状態云々ではなく、やはり制度のあり方として改善していかなければいけないと思うが、この点についてはいかがか。
○蒲生篤実国土交通省鉄道局長 おっしゃるように、他人の土地からもらい事故なようなものになってしまうケースが最近とみにふえており、他人の土地の部分の管理がうまくいっていないケースがふえているのは承知している。そういった現状に合わせた制度としてどういったものがとり得るのか、鉄道局としてもしっかり検討してみたい。

老朽化対策の予算確保

○広田一委員 次に、鉄道施設の維持更新に関連して伺いたい。
 鉄道を初めとする公共交通の最も大切な使命の一つは、安全な自動輸送を確保することであり、それを担保する体策の一つが老朽化対策だ。特にトンネルや橋梁などの土木構造物の老朽化の実態は厳しく、橋梁年齢は平均51年、トンネル年齢は平均64年と老朽化が進んでおり、劣化が深刻化している。これに対して鉄道事業者は、予防保全の観点から計画的に鉄道施設の老朽化対策を講じているのはご承知のとおりだ。
 しかしながら、地方路線の比率の高い、つまり赤字路線を多く抱える鉄道事業者にとっては設備更新費用が経営に重くのしかかり、安全確保に支障をきたし、路線によっては安全水準に格差が生じているのではないか。こういったことが懸念される。
 これに対して、国交省としては鉄道施設総合安全対策事業費補助、これで将来的な維持管理費を低減し、長寿命化に資する施設の維持について支援している。この制度と取り組み自体は評価をしたいと思うが、しかし問題なのは、その財政的な支援が鉄道事業者の需要に追いついているのかどうかということだ。今年度の予算額は5億4000万円、これについて蒲生局長も非常に額としては厳しいという認識を示されていたが、来年度については、こういったことを受けてどれだけの額を要求し確保しようとしているのか。まずこの点について伺いたい。
○蒲生篤実国土交通省鉄道局長 国土交通省では、鉄道施設総合安全対策事業として、老朽化対策のほか、地震・豪雨対策、浸水対策、踏切保安設備の整備等により、鉄道の安全を総合的に支援している。この鉄道施設総合安全対策事業に係る来年度の予算額は66.1億円を計上している。
 ただ、このうち老朽化対策事業に係る来年度予算額については、予算成立後に策定される実施計画において確定するため、現時点ではお答えを差し控えさせていただきたい。
○広田一委員 答弁できない、予算が成立してからということだが、今年度5億4000万円だったことは既に委員会で答弁をしている。これについて蒲生局長は、非常に厳しいという認識を示されたわけだが、今年度は具体的に何カ所この予算で対応対策を講じたのか。
○蒲生篤実国土交通省鉄道局長 老朽化対策予算に関しては、鉄道事業者からの補助要望積み上げて要求をし必要額を確保しているところだが、今、資料は持っていないので、具体的に何カ所という部分に関してはこの場ではお示しできないが、いずれにしても補助要望を積み上げて要求している。
○広田一委員 今年度の取り組み、5億4000万円の範囲内で一定な何カ所できたのか、これは後でまた資料等をいただきたい。
 局長は、この額について非常に厳しいというご認識をさきの委員会では示されている。来年度はこれ以上確保をしていくということについてはどうなのか。
○蒲生篤実国土交通省鉄道局長 予算額としては大変厳しいということを先般この場でも申し上げたが、そういった問題意識をしっかり反映するような形での予算を確保できるように、今、準備をしているところであり、予算が成立したらその点に関してもご報告したい。
○広田一委員 予算成立後、適切な額が確保されているのかどうか、しっかりと議論をしていきたい。

JR四国に対する支援

○広田一委員 最後に、JR四国に対する支援について若干お聞きしたい。
 四国は、残念ながら新幹線が唯一存在しないエリアであり、また、四国には100万人都市も存在していない。つまり、JR四国はほかの地域と比べても収益の柱が見当たらない非常に厳しい経営環境にある。
 過日、徳島新聞に2013年から2011年度の平均線区別の収支状況が掲載された。それによると、四国の場合は1線区を除いて全て赤字であることが判明した。しかも営業係数を見ると、徳島県の牟岐・海部間が1658。つまり100円稼ぐのにコストが1658円かかるということであり、まことに厳しい状況だ。
 こういったことを踏まえ、「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会2」が発足したが、これに国土交通省のメンバーも入っており、この議論の状況についてどのように評価されているか。また、これらの取り組みは、四国全体でまずは地域が主体的に取り組むべきだと思うが、その上で具体的に何を示せば国として支援のあり方を明確にできるのか伺いたい。
○石井啓一国土交通大臣 四国においては、2017年8月に四国4県とJR四国で「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会2」を立ち上げ、四国における鉄道ネットワークのあり方について、地域の関係者と幅広く議論を行っているものと承知している。
 地域の公共交通については、地域のニーズや課題を踏まえ、地域の関係者が検討を行い、その地域にとって最適な公共交通体系を構築していくことが重要であると考えており、四国において地域の関係者が主体的に検討を行う場を設け議論を行っていることは評価すべきものと考えている。
 この懇談会には国土交通省も参加をしており、地域の関係者とともに四国における鉄道ネットワークのあり方についてしっかりと議論に参画してまいりたい。

(以上)

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