見出し画像

自分の興味を「環境を守る力」に。文理融合の大学で見つけた「好き」を将来につなげる方法

「なんとなく環境に興味があるけど、大学で何をしたらいいかわからない…」
「生き物が好きだけど、その気持ちを将来にどう活かせるのかわからない…」

そんなお悩み、ありませんか?

今回お話を聞いたのは、川の生き物を守る研究をする、大学院2年生の泉野珠穂いずみのたまほさんです。

幼いころから生き物が好きだったという泉野さん。やりたいことが明確にあったわけではありませんでしたが、大学での学びを通して、将来の夢や目標を見つけたのだそうです。

「何がしたいかはっきり決まっていなくても大丈夫!」と笑顔で語る泉野さんが、充実した大学生活を送ることができた理由とは?卒業を控えた今、大学・大学院で過ごした6年間を振り返ってもらい、その秘密を解き明かします。


環境に結びつけさえすればOK?!興味に合わせて自由自在の研究テーマ

——まず初めに、泉野さんがどうやって大学を選んだか教えてください!

私の進路選択は、兄の影響が大きかったですね。きょうだい揃って生き物が大好きで、兄が楽しそうに大学で研究をしていたので、私も同じ学校に行きたいな、と思ったんです。兄は滋賀県立大学の環境生態学科に通っていましたが、私は同じ大学の「環境政策・計画学科」を選びました。

——なぜお兄さんと同じではなく、この学科に決めたのでしょうか?

生き物の生態そのものを探求するというよりは、「生き物の保全」に興味があったからです。

それに、学科が打ち出す「文理融合」というコンセプトにも惹かれました。私は高校で理系を選択していましたが、文系科目も好きだったんです。この学科は文系でも理系でも受験できるように科目が設定されていたので、まさに私にぴったりだと思いました。

——入学後も、文系科目と理系科目がまんべんなく学べるカリキュラムが特徴的ですよね。

そうなんです。先生の研究分野が多種多様なので、授業が本当に楽しかったです。私は「環境政策・計画学科って何してるの?」と聞かれたら、「いろいろ!」と答えることにしています(笑)。環境という大きなテーマに向き合う上では、理系・文系関係なく広い考え方が重要だと思いますが、いろいろなジャンルの授業を受けることで自分自身の視野も広がりました。

——文理関係なくいろいろな知識が必要というのは、どういうことなのでしょう?

人にとっても生き物にとっても良い環境を作るためには、その土地の歴史や街づくりへの理解も大切なんです。歴史を知れば「なぜここはこんな地形になっているのか」がわかったりしますし、人を守るために行った河川工事が自然にどんな影響を与えるかが予測できたりします。

自然と人の暮らしは密接に結びついているので、いろいろな角度から物事を見ることが必要だと思っています。

▲泉野さんが学部3年生のときに作成した図解「環境政策・計画学科ってこんなところ!」
(クリックで拡大できます)

——所属する研究室を選ぶときはどうやって決めるのでしょうか?

1〜2年生にかけていろんな授業を受け、3年生のときに気になる先生に話を聞きに行って研究室配属が決まります。基本的には卒業までの約1年半かけて先生の専門分野にもとづいた研究をすることになるのですが、この学科は自分の興味と環境を結びつけさえすれば、なんでもやらせてもらえるのがおもしろいところだと思いました。

たとえば、ファッションに関心がある人はアンケート調査をしている先生の研究室を選んで「環境にやさしいグリーンファッション」に関するアンケートを実施していたし、登山が趣味の人は環境法に詳しい先生と「登山者が納める入山料」について研究していました。

——泉野さん自身はどんな風に研究室を決めましたか?

私は川の生き物が好きだったので、河川をフィールドに研究をしている瀧健太郎先生の研究室を選びました。具体的に何の生き物を対象にしたいかまでは決まっていなかったのですが、配属後に先生がいろいろ提案してくださったので、自分の興味にあったテーマを見つけることができました。

現場で見て感じることが大切!充実した研究生活

——今、大学院の2年生ですよね。最初から大学院への進学は考えていましたか?

まったく考えていませんでした!

ですが、研究がとても楽しく瀧先生が勧めてくれたこともあって、4年生で就職せずに大学院へ行くことを考え始めました。さらに、研究を進めるなかで学芸員さんに話を聞く機会が増え、私も博物館や水族館で働きたいと思うようになり…。その夢に一歩近づくためにも、大学院で必要な単位を取って学芸員資格を取得したいと考えました。

——学芸員資格を取るための授業は、基本的に学部生向けだと聞いたのですが。

申請をすれば、大学院で授業を受けられるようになるんです。大学院生でも、学部生と同じようにいくつか授業を受けて単位を取れば、学芸員資格を取得できます。印象に残ったのは「博物館資料論」という授業です。授業の内容をノートにまとめる課題が出たので提出したら、担当の先生がFacebookに載せてくださって。それを知ったときには、嬉しくて泣いてしまいました!(笑)

▲「博物館資料論」泉野さんの授業まとめノート
(クリックで拡大できます)

——わかりやすいノートですね!泉野さんの生き物好きが伝わってきます。大学と大学院で取り組んだ研究内容を教えてもらえますか?

私の研究テーマは、河川の生き物の保全です。学部では、今数が減っている「カワラハハコ」という河原に咲く花が生息しやすい条件を調べるため、水深や流速など川の流れのシミュレーションデータと組み合わせて研究を進めました。

大学院では、さらに川の水温データなどを加えて、河川工事で数が減ってしまった「ハリヨ」という魚がどんな場所に生息するのか、さらに、生息数を増やすためにはどう川を管理すればいいのかの具体策を提案するために研究をしてきました。どちらも「生き物を守り、再生する」という目的は同じで、大学院では研究対象の生き物を変え、解析の内容を少し発展させた形です。

——現地調査もたくさんしましたか?

川の水温を測るために熱赤外カメラを取り付けたドローンを飛ばしたり、川で魚を捕ったりしました。大学のすぐ隣の川が研究対象地だったので、しょっちゅう足を運んで川の様子も観察していました。

研究を始めたころは、先生や専門家の方に「あっちは標高が低そうだ」とか「ここには魚がたくさんいそうだな」と言われてもピンとこなかったんです。でも、今では川を一目見ただけで地形を予測できたり、「この川は魚が好きそう」と考えたりするようになりました。

——観察眼が養われたんですね。ほかにも成長を感じたことはありますか?

研究を進めるには、似たようなことをやっている人の論文を読む必要があります。私は長文読解が少し苦手で、最初はすごく難しく感じていましたが、しばらくするとスムーズに頭に入ってくるようになったんです。研究をして経験を積んだことで、自然と知識が増え理解できるようになったのだと思います。

あとは、学外の人と話すときに、自分の経験にもとづいた話ができること。「あの川に行ったことがあります」とか「その魚、私も捕ったことがあります」と言えると、一気に話が盛り上がったり、信頼を得たりできるんです。机上の空論ではなく、自分の目で見て、実際に触れて感じることの大切さを、身をもって体感しました。

企業との共同研究をきっかけに就職先も決まった

▲ドローン調査風景(中央上に飛んでいる黒い物体がドローン)

——研究室の雰囲気はどんな感じですか?

みんな仲が良くて楽しいです。なかでも、同じ学年の同期は学部のときから苦楽をともにしているので、もはや戦友のような関係です。後輩たちともみんなで旅行へ行ったりもしますし、ソフトやドローンの使い方を教えたり、現地調査に付き添ったりと、いろいろサポートもしています。

▲研究室にて

瀧先生には忙しいなかすごく丁寧に指導してもらっているので、私もなんとか恩返ししたいと常に思っています。先生が現地調査へ行くときには同行したり、論文に載せるイラストや地図を作成したり。私が描いた似顔絵を先生のInstagramアイコンに使っていただいたときは、すごくうれしかったです!

▲泉野さんが瀧先生のために描いたイラスト

——先ほど、学芸員さんに話を聞く機会があったと伺いましたが、共同研究をしていたのでしょうか?

そうです。瀧先生のもとには専門家から「一緒に〇〇を研究しませんか?」といった依頼が舞い込むのですが、在籍している学生の興味と依頼内容が合えば、研究テーマにすることがあるんです。

私のときも、魚の保全研究の依頼が琵琶湖博物館の学芸員さんから来て、卒業論文や修士論文で共同研究をすることになったんです。現地調査を一緒にしたり、必要に応じてアドバイスをいただいたりと、本当にお世話になりました。

——泉野さんは、企業とも一緒に研究をしていたと聞いたのですが…!

修士論文とは別で、環境コンサルタント会社の社員さんと防災に関する共同研究をしていました。私はデータをもらって河川の水流や水圧などの測定をする解析担当でした。大変でしたが、自分のスキルが役立つことはうれしくもありました。さらに、一緒に研究をしたご縁で、この会社に就職も決まったんです。4月からは、開発工事の環境への影響を予測調査する業務に携わる予定です。就職でいったん滋賀県は離れますが、いつか成長した姿で戻ってきたいと思っています!

「環境に興味があるならぜひ!」進路に悩む高校生へメッセージ

——大学・大学院の6年間を振り返って、あらためてこの学科の良さはどんなところにあると思いますか?

先ほどもお話ししたように、文理融合なので、さまざまなジャンルのことを幅広く学べて視野が広がること、そしていろんな興味を持つ人と知り合えることです。

さまざまなことが学べるだけに、この学科にはいろんな分野の学生が集まってきます。生き物専門の学科だと生き物の知識しか得ることができないかもしれませんが、みんな研究テーマも興味関心もバラバラなので、さまざまな視点の話が聞けてすごく学生生活が豊かになったと感じています。

——楽しい大学生活の様子が伝わってきました。最後に、環境に興味がある高校生のみなさんへメッセージをお願いします!

「ざっくりと環境のことを学びたいけど、何をしたいかは決まっていない」そんな人にこそこの学科はおすすめです。「とりあえず生き物が好き」という感じだった私も、楽しく学ぶことができたし、進路や夢も見つけて大学入学前には予想もしていなかったくらい力をつけることができたと思っています。

今は目標が決まっていなくても大丈夫。環境に興味があるというその気持ちを大切に、ぜひ環境政策・計画学科へ飛び込んでみてください。きっと充実した学生生活が待っていると思います!

(取材:2024年2月)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?