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波音と汽笛と潮風と


私の地元は、九州の北西に浮かぶ小さな離島です。実家の周りの海抜表示は漏れなく全部赤色。走れば10秒で海に着くような場所にあります。盛ってないですよ?
海と言っても、小さな漁船と休暇中の運搬船が停まるだけ。
父もご先祖様もその他親戚の男達もみんな運搬船乗り。
学校は小中高と校舎から、本土へ向かうフェリーの汽笛が聞こえる場所にありました。

今年の春から島を離れ、一人暮らしを始めました。
海はないけど、湖があって自然豊かで素敵な場所です。
でもね、何だか物足りないのです。

海の近くの暮らしは大変なこともありました。
外に鉄製のものを置いてしまえば瞬く間にサビサビになり、台風のたびに車は潮で真っ白になります。
赤潮が発生すると家の中まで磯臭くなることも。
オーシャンビューがなんぼのもんじゃいと思って生活していました。

それでもやっぱり地元の海が好きなのです。
悩みがあれば、ふらーっと外に出て家の前の海を眺めに行っていました。
大海原を前にすると自分の悩みが小さく思える、なんて大それたことは言いません。
そんな小さな悩みじゃないんです。少なくともその時は。
でも、防波堤に腰掛けて、波音や時々聞こえる汽笛に耳を澄ませて潮風にあたっていると、あんなに大きかった悩みも「潮でベタベタになっちゃった」にすり替わるのです。

特段有名な観光地でも無いし、豪華客船が止まる訳でも無い。
それでも地元の海でしか貰えないパワーがありました。
あと何年かして、大学を卒業すると社会人になります。
もしかすると、大都会トーキョーで働いているかもしれません。
それでもきっと、大都会の片隅で、地元の波音と汽笛と潮風を思い出してパワーを貰うと思います。

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